神戸を舞台に行われた、IT、音楽、映画などさまざまなジャンルを組み合わせたクロスメディアイベント「078」。2019年4月27日から29日までの3日間行われたこの大規模イベントで「LINE BOT」が活用され、「078」の実行委員会、事務局、さらには甲南女子大学の学生さんとも協働しながら、アイレットがシステム開発、運用を担当しました。今回は、そもそもなぜ「LINE BOT」を活用することになったのか?どのような用途で使われたのか?など気になるアレコレを、今回協働させていただいた皆さまへのインタビューを通して羽鳥が紐解いていきます!

■参加メンバー

(写真左側から)
・アイレット株式会社 クラウドインテグレーション事業部 田中潤
・078実行委員会 運営委員(神戸市企画調整局つなぐ課特命係長) 長井伸晃氏
・甲南女子大学文学部 教員 行成美和氏
・078実行委員会事務局(株式会社神戸新聞事業社) 内田勇士氏

「LINE BOT」の導入背景

まずは、今回の舞台「078」がどんなイベントなのか簡単に教えていただけますか?

未来に向けて魅力と活力あふれる都市として発展する、神戸を発信するためのクロスメディアイベントです。「078」は神戸市の市外局番の番号で、神戸を代表するイベントに成長させていきたいという想いからこう名付けられ、今年で3回目を迎えました。

なぜ「078」で「LINE BOT」を活用することになったのでしょうか?また、アイレットへの依頼の決め手を教えてください。

「078」は、神戸の街中がステージになっていて、今年は三宮やハーバーランド、フラワーロード周辺など6エリアでイベントを開催しました。3日間それぞれの場所でさまざまなイベントを行っているので、過去の開催した時からスケジュールや開催情報を分かりやすく正確に届けるということは大きな課題でした。しかし「LINE BOT」を活用することで、その課題を解決できるのではないかと考えていました。

「LINE」という一般に広く普及しているアプリを利用できることが大きかったですね。利用者に新しくサービスを利用してもらう場合、「アプリを新たにダウンロードしてもらう」というハードルが非常に高いですが、「LINE」は既に多くの人がスマートフォンにインストール済みです。そのような懸念を簡単にクリアできるので、多くの人に利用してもらえるのではないかと考えました。また「LINE BOT」の実装に関しても分からないことだらけで不安でしたが、アイレットさんは過去にもさまざまな企業とタッグを組んで実装された実績があったので、安心して任せられると判断しました。

学生視点のアイデアを盛り込んだスタンプラリー機能を実装

「LINE BOT」を活用してスタンプラリーを行ったそうですね。経緯を聞かせてください。

田中さんから、「LINE BOTを活用してスタンプラリーのようなことができるよ」とお話をいただいた際に、「078」のインカインド・パートナーである甲南女子大学さんが進行している取り組みと結びつけられるなと感じて、両者にコラボレーションしてもらいました。

甲南女子大学さんは、どのような取り組みをされていたのでしょうか?

私が担当する2年生の必修授業では「078」が開催された年から“神戸の今と未来をデザインする”をテーマに、「078」アイデアソンを授業内で実施しています。アイデアソンでは神戸大学や神戸市、地域・民間の協力を得て、神戸や「078」のことをインプットした後に、実際の会場でフィールドワークを行い、翌年の「078」で行うイベントを学生が企画していく取り組みを行っています。今回、その取り組みから生まれたアイデア・企画のひとつに “「078」の回遊性に問題がある” とした学生たちが、それらを解決するために「スタンプラリー」を提案しました。


授業の様子


打ち合わせ風景

なぜ、学生さんはなぜスタンプラリーを企画されたのでしょうか?

学生たちがフィールドワークを行って気づいたことは、「078が思った以上に知られていないこと」、「数多くある会場を回ることへのハードルの高さ」の2つでした。そこで学生たちが考えたのは、どうにかして来場者を増やして回遊性を高めたいと各会場を指定ポイント地として行う「スタンプラリー」でした。

例えば、あるチームは最寄り駅である三宮駅から会場までの行き方を調べていくと、必ず通る道の名前が「花と彫刻の道」ということが分かりました。そこで、設置されている彫刻そのものにQRコードをつけてポイント地とした上で、来場者にQRコードを読み込みでもらって会場まで誘導するといったことを提案していました。

また別のチームでは神戸の歴史を丹念に調べて、神戸に縁があると言われている蘆屋道満(あしやどうまん)に結果的にたどり着きました。「蘆屋道満がここにいる…」と仮定して話題性を持たせ、参加する方にその人物を探してもらうことで回遊性を持たせるような企画を考えていました。

これらのアイデアを本格的に社会実装させるために、学生起点のアイデアを試行錯誤しながら形にしていくことになったのです。具体的には、上述した蘆屋道満をイメージした巫女さんをモチーフとして「スタンプラリー」の企画に内在させ、背中にQRコードを身に着けた学生自らが巫女さんとなり、各会場に浮遊するというもの。来場者は各会場で巫女さんを探し出し、その背中にあるQRコードを読み込むことで、スタンプを集めることができるという仕組みです。

「LINE BOT」と融合することで、どのようなコンテンツになったのでしょうか?

「LINE BOT」内に用意した「スタンプラリー」メニューを選択して、各会場でQRコードを読み込んでスタンプを集めていくと、スマートフォン内で絵が完成していくというコンテンツにしました。6会場中4会場をまわるとコンプリートになり、さらに参加賞や抽選での特典のインセンティブも付けました。また少しでも神戸を理解してもらうために、各会場ごとにまつわる「神戸豆知識」もスマートフォン内に表示されるようにしました。実際にコンプリートしてくれる参加者もいたので、当初の狙いはある程度達成できたのではないかと思っています。

さまざまな用途で活用可能な「LINE BOT」

スタンプラリー企画の他に、参加者の方にどのように「LINE BOT」を使われていたのでしょうか?

各会場へのアクセス方法やスケジュール確認に、役立ててもらえたのではないかと思います。過去の開催中に電話での問い合わせが非常に多かったのですが、今年は目に見えて減ったと実感しています。それとプッシュ通知を活用しました。開催当日の朝に、その日の情報をまとめて通知していたのですが、3日目の朝は小雨だったのこともあり、会場ごとに雨天中止か実施かをプッシュ通知を使ってLINE BOTの利用者にお知らせしました。雨天中止かどうかは、参加される方にとって何よりも重要な情報だと思うので、タイムリーに届けることができてよかったです。

プッシュ通知を使う上で懸念していたのは、「078」のLINEにお友達登録してくれた人が離脱(お友達登録の解除)してしまうことです。イベント当日までに離脱されてしまうと意味がなくなってしまうので、本当に有用な情報に絞ってプッシュ通知で届けることにしました。その甲斐もあってか、離脱の割合はこれまでに運用してきたアカウントと比べて抑えることができ、現時点でも多くの方が登録を維持しています。イベントが終了すると3~5割は離脱するケースが多いのですが、非常に高い割合です。

「078」のLINEを登録し続けてくれている方々に来年度の情報をお届けするなど、今後も活用していけたらいいなと思っています。こういった取り組みをイベントが終わったら終了ということではなく、より意味のあるものにしていければと考えています。

最後に、「LINE BOT」を使用することによって感じた可能性や、今後に向けて行っていきたいことを教えてください。

実は、学生の多くが公式アカウントとお友達になってくれて、ユーザビリティに関して色々意見をもらいました。彼女たちは普段からLINEを使い慣れているからこそ、機能が増えたことによる分かりにくさを率直に伝えてくれました。もっと直感的に、シンプルにした方がいいと。

そうですね。そういったユーザー目線の意見を取り入れて、より使いやすくブラッシュアップしていきたいですね。そして「LINE BOT」ならではの対話機能もより強化していきたいなと思います。年に1度のイベントであっても「LINE BOT」の仕組みがあれば、開催期間以外であっても継続してユーザーと双方向のコミュニケーションをとれるのではないかと可能性も感じています。

事前の告知にもさらに力を入れて、より多くの人に使用してもらいたいですね。シンプルだからこそ、できることがもっとある気がしています。

アイレットさんの技術によって「LINE BOT」活用したことで、できることの幅の広がったと感じました。「LINE BOT」を活用した面白い展開を今後も見つけていけるのではないかと私も思います。LINEだからこそ、幅広い世代、人に発信していけることを武器に、活用方法を追求していきたいと思います。

取材後記

笑いの絶えないインタビューで、イベント当日に向けて一緒に汗を流し濃い時間をともに過ごした皆さんの「チームワーク」を感じた時間でした。その中でも皆さんが「LINE BOT」の可能性に言及される場面も多く、活発なコミュニケーションの中から、次の展開が生まれてきそうな予感も!今後の「078」や「LINE BOT」活用の展開に、ぜひご注目ください。

「078公式LINE BOT」のアーキテクチャは開発事例にてご覧ください。