はじめに

2026 年 7 月 30 日(木)に行われた「Google Cloud Next Tokyo 2026」に参加してきました!
そのイベント内の「ソフトウェアの先へ: Anthropic が示す次世代エンタープライズ AI」のセッションのレポートとなります。

セッション概要

タイトル:ソフトウェアの先へ: Anthropic が示す次世代エンタープライズ AI

登壇者:Anthropic Japan シーブ ベンジャミン 敏 氏

公式より

エンタープライズ ソフトウェアは、今後 2 年で過去 20 年よりも大きく変わります。組織が構築すべきものを定義、優先順位付けするトップダウン型から、AI エージェントがチームとともに課題をその場で解決していくボトムアップ型へと、モデルが反転しつつあります。本セッションでは、Anthropic が見ている最前線の動向をご紹介します。すでに多く導入されている、Gemini Enterprise Agent Platform 上で自律的に定義・構築・改善を行うエージェントの事例と実践的なフレームワークを通じて、将来像と準備の方法をお伝えします。

 

セッション内容

1. Anthropicの原点:「研究と安全性」へのこだわり

Anthropic がもっとも力を入れているのは「 AI の安全性の研究」です。
また、この高い安全性が最も求められる領域として、「法人(エンタープライズ)向け」のソリューション開発に力を入れています。

2. 「Claude Opus 5」登場

Opus 5 は、最高峰のモデル「Fable 5」とほぼ同等の知能を備えながら、運用コストを大幅に抑えた非常に効率の良いモデルとなっています。

「Opus 5」の3つの大きな進化
1. コーディング
従来のモデルは「新卒社員」のような状態で、人間がプロンプトで細かく指示をする必要がありました。
Opus 5 はゴールだけ伝えれば最適解になるように進んでいきます。
例えば、「データを分かりやすくグラフ化して」と頼むと、スプレッドシートを使うのではなく、独自にデータを吸い上げて HTML によるインタラクティブな WEB ページを生成・提示するといった判断を自力で行います。
目標(ゴール)だけを与えれば、壁にぶつかっても思考を修正し、少しずつゴールへ登り詰めます。
2. エージェント
人間に代わって各種アクションを実行可能となっています。
MCPなどを通じて社内システムや他ツールと連携し、業務プロセスの自動化を推進します。
3. ナレッジワーク
膨大なドキュメントやファイルを分析・理解し、業務を代わりに実行します。

Opus 5 は、あまり細かい指示をせずに、ゴールを決めるようにすると効果的に使用できるとのことです。

Introducing Claude Opus 5
Opus 5 is a step change improvement for the Opus tier powering long-running agents while delivering improvements in coding and professional work.

3.「Chat」から「Cowork」へ

AI の使い方自体も、ここ数年で大きな変化があります。
対話画面で AI に質問し、回答を得る Chat 時代。
次に、Claude Code(コーディングエージェント)時代。
これは、AI 自体がソフトウェアを書けることに着目し、ファイル操作やコード記述の権限を AI に与えて自律動作させる環境(ハーネス)へ進化していきました。
そして、Claude Cowork 時代。
Claude Code の能力を非エンジニアにも使えるよう、最適化された UI で提供しています。

体験談として、アジア全域の膨大な顧客リストから戦略スライドを作成する際、通常なら1ヶ月以上かかる調査・集計・データ連携・スライド化の工程を、Claude に頼むことでわずか45分で完了させたという体験談を語っていました。

4. ソフトウェア開発における「ボトルネック」の移動

Claude Code のようなツールの登場により、Anthropic 社内でも開発スタイルに根本的な変化が起きています。
従来のボトルネックは、ソフトウェアの「開発コスト」でした。
これまでは「コードを書くコスト」が高かったため、上流工程(企画・計画)に膨大な時間をかけ、「失敗しない設計」にする必要がありました。

新しいボトルネックは、レビュー・デザイン・法務・判断力となりました。
AI によって「コードを書くコスト」が激減した結果、ボトルネックは以下に移りました。

  • コードレビューの負担増
    • 爆発的に増えたコードを検証・レビューする体制が必要。
  • 周辺チームの負荷
    • デザイン、セキュリティ、法務など判断するチームに負荷が集中。
  • 人間側の「判断力・創造力」
    • コーディング技術よりも、「何を作るべきか」「どのアイデアを採用すべきか」を判断するアイデアと創造力がエンジニアの価値に。

Anthropic 開発チームが変えた5つのルールがあります。

  • 計画
    • 細かく計画するより、安く早くプロトタイプを作って試して、良いものを採用する。
  • コードレビュー
    • 開発が高速化した分、レビュー体制とエンドツーエンドのワークフローに投資する。
  • 採用
    • コーディング能力ではなく「問題定義力・判断力・創造力」を見る。
  • 組織構造
    • マネージャーもまずは自分で AI を使った開発を体験してから着任する。
  • オンボーディング
    • 最新のコードベースを AI に読み込ませ、新人が AI に自由に質問・学習できる環境を作ることで、育成コストをほぼゼロに。

5. Google Cloud基盤の上で動くメリット

Claude の全モデル(Fable, Opus, Sonnet, Haiku)は、Google Cloud のインフラ上で動作します。
本番環境に必要な周辺機能が完備(認証、監査ログ、ガバナンス、コスト制御など)されています。

各業界をリードする企業から Google Cloud 上での Claude が選ばれています。

事例として Quora では、Google Cloud のインフラにより、他クラウドと比較してパフォーマンスが4割向上した成果もありました。

おわりに

開発者として、「コードを書くこと自体の価値」が大きく変わりつつあると感じるセッションでした。
特に Anthropic が社内で実践している「5つのルール」は、今すぐ取り入れたいことばかりだと思いました。
AI によって高速に生成されるコードをどうレビューし品質を担保するか、オンボーディングのコストをどう下げていくかなど。
これからのエンジニアに求められるのは、AI に的確なゴールを示し、出てきたアウトプットを迅速に判断・コントロールする能力だと感じました。