生成AIを活用する上で欠かせない存在となりつつある「スキル(Skills)」。定型的な繰り返し作業や、成果物をブレなく作成したい場合に、毎回プロンプトを入力しなくても指示通りに作業を実行してくれる非常に便利な機能です。
今回はGemini Enterpriseでスキル(Skills)が利用可能になったため、実際に試してみた内容を記事としてまとめました。
1. Gemini Enterpriseのスキルが提供開始!
2026年8月13日(日本時間14日)、Gemini Enterpriseにおいて、スキル(Skills)の作成・アップロード・共有が一般提供されました(参照: Gemini Enterprise release notes — August 13, 2026)。利用には Standard / Plus / Pay as you go / Frontline のいずれかのエディションのライセンスが必要です。
また、同じ日にGemini 3.7 Flashもglobal / us / euリージョンで提供開始となっています。こちらについては後半で少し触れようと思います(8月14日時点で、Gemini 3.7 FlashはAgent Designerのワークフローエージェントでも選択可能になっています)。
2. スキルとは?
今回リリースされたスキルとは、Gemini Enterpriseのアシスタントで特定のタスクを実行する際に参照する、再利用可能なカスタム指示のことです。一般的な会社での使用シーンでは、ルールに沿った契約書などの法務確認や、企業内でのドメインやルールに沿った文章の執筆といった用途が想定されています(参照: Create and manage skills)。
各スキルはSKILL.mdというプロンプトファイルを含む「パッケージ」として構成されており、パッケージには、スクリプトや背景となるコンテキストを記述しておくことができます。
3. スキルとエージェントの使い分け
Gemini Enterpriseには、スキルとは別に「エージェント」というものも存在します。生成AIに作業を依頼する場合、スキルとエージェント、どちらを使用すべきか迷ってしまいます。公式ドキュメントなどを参考にしながら、以下のように整理してみました。
スキルが向いている作業
アシスタントの再利用可能な構成要素として使えるタスクや、ドメイン固有の繰り返しタスクが向いています。具体的な例として、最新の指標の取得、企業のガイドラインに沿ったドキュメントの更新、顧客向け提案資料の作成などがあげられています。
エージェントワークフローが向いている作業
一方のワークフローエージェントは、設定したトリガーに基づいて一連のステップを実行するもので、AIによる自動化と人の介在を組み合わせられる点が特徴となっています。利用シーンとしては、承認プロセスを含む商談レビューのワークフローや、従業員オンボーディング用のエージェントなどがあげられます。
つまり、「毎回同じ品質で繰り返したい作業の型」はスキル、「承認や複数ステップの進行管理を伴う業務プロセス」はエージェントという切り分けとなります。
(※なお、現時点ではひとつのプロンプトの中でエージェントとスキルを同時に呼び出すことはできない点は、留意が必要です)
4. スキルを有効化するための設定
スキル機能はデフォルトでオフになっているため、利用するにはGoogle Cloudコンソール上で有効化する必要があります。
手順は、Google CloudコンソールのGemini Enterpriseページから対象アプリを選択し、構成 → 機能管理タブを開いて、スキルを有効にするトグルをオンにします。

スキルに関連するトグルは3つあります。
「スキルを有効にする」でスキルの作成と利用が行えるようになり、「スキルの共有を有効にする」で他ユーザーへの共有を許可することができます。
なお、共有を許可しただけの状態では、管理者が保留中の共有リクエストをレビューして承認する運用となります。レビューを挟まず即座に共有・利用させたい場合は「管理者の承認のないスキル共有を有効にする」も合わせてオンにする必要があります。
有効化されると、Gemini Enterpriseウェブアプリのナビゲーションメニューにスキルが追加され、スキルの作成・アップロード・オンオフの切り替えが行えるようになります。
5. スキルの作成方法は3通り
ナビゲーションメニューのスキルから追加アイコンをクリックすると、3つの選択肢が表示されます。

①Geminiでスキルを作成(自然言語で作成する方法)
ナビゲーションメニューのスキルから+ Geminiでスキルを作成を選び、スキル名と説明を入力した上で、チャットボックスに自然言語で手順を指示して作成する方法です。
ここで重要になるのが説明の入力部分となります。Gemini Enterpriseはこの説明文を見て「そのスキルがユーザーのプロンプトに使えるか」を判断するため、どういう場面で発動させたいかというトリガーの指示も説明に含めておくとよいでしょう。
②スキルを参照(Googleであらかじめ用意されているスキルから選ぶ方法)
Googleでプリセットスキルが用意されており、2026年8月14日時点では以下の5つが確認できました。
| スキル | 内容 |
/brand-voice |
自社のトーン・スタイル・ブランドガイドラインに沿った内容にする |
/contract-creation |
提示された条件に基づき、契約書の初稿を生成する |
/contract-review |
法務文書を分析し、重要条項・リスク・標準テンプレートとの差異を洗い出す |
/customer-briefing |
顧客情報や直近のやり取り、主要な論点を要約し、商談前の準備を行う |
/project-updates |
プロジェクトのデータやステータスを集約し、関係者向けの簡潔な更新情報にまとめる |
※なお、私の環境ではスキルの編集メニューなどは表示されませんでした。どうしてもカスタマイズしたい場合は、同じ内容のスキルを自分で作り直す形になりそうです。
③スキルをアップロード(自作の.mdファイルをアップロードする)
既存のスキルをMarkdownファイルまたはZIPファイルとしてインポートできる機能です。スキル → スキルをアップロードからファイルを指定します。ちなみに、名前・説明・指示内容は自動的に抽出されました。
ZIPの場合はSKILL.mdに加えて、PythonやBashのコードを格納したscripts/ディレクトリを含めることもできます。なお、ZIPでまとめる場合はSKILL.mdをルートディレクトリに置く必要があります。
6. 実際に.mdファイルをアップロードしてみた
今回はテストとして、「スキルをアップロード」を試してみました。

今回使用したのは、もともと別のAIツールで運用していた議事録作成用の.mdファイルです。中身に手を加えずそのままアップロードしましたが、Gemini Enterprise側できちんとスキルとして認識され、テスト用に用意したダミーの打ち合わせメモから、指定したフォーマットどおりの議事録が出力されることが確認できました。

なお、スキルはオープン仕様に準拠しているため、他のツール向けに作り込んだプロンプト資産を持ち込むことができます。ツールを変えるたびに指示文を書き直す必要がなく、これまで整備してきた「業務の型」をそのまま資産として使い回せる点は、実務上のメリットが大きいと感じています。
おまけ:同日公開のGemini 3.7 Flashでも試してみた
同じ日にリリースとなったGemini 3.7 Flashでも、同じスキルを使って議事録を出力してみました。

どちらのモデルでも、スキルで指定した見出し構成と項目立てはそのまま反映されています。違いが出たのは要約の粒度や語尾の整え方といった文章表現の部分で、どちらが適しているかは用途や好みによって変わると思います。定型フォーマットの議事録という用途であれば、Gemini 3.7 Flashでも十分に実用に足るという印象を持ちました。
ちなみにモデル自体の料金としては、Gemini APIは2026年8月14日現在、期間限定価格として入力100万トークンあたり0.75ドル、出力3.75ドルで、Gemini 3.6 Flash の半額、2027年1月1日以降は入力1.50ドル/出力7.50ドルとなっています。
出典:Gemini 3.7 Flash を発表(2026年 8月 14日)
https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/gemini-37-flash/
7. 現時点での注意点・制限事項
公式ドキュメントの記載と、実際に触ってみて気づいた点をまとめました。
スキルはエージェントでは利用できない
影響が最も大きい制限が、こちらではないでしょうか。現時点では作成したスキルを、エージェントに取り込んで使うことはできません。これができるようになると、使える幅はかなり広がるため、今後のアップデートに期待したいです。
実行できるのはPythonとBashのみ
スキル内で実行できるコードはPythonとBashに限られます。また、ウェブアプリのエディタで作成できるのはSKILL.mdひとつで完結するスキルまでで、追加のスクリプトやファイルを必要とする複雑なスキルはZIPファイルとしてアップロードする必要があります。
スキルの自動選択が期待どおりに発動しないことがある
私が試した中では、関連するスキルであっても自動で呼び出されないケースがありました。確実に使わせたい場合は@メンションや直接的な指示で明示してあげると良いかもしれません。
8. まとめ
今回のアップデートにより、Gemini Enterpriseでスキルの作成・アップロード・共有が正式に利用できるようになりました。スキルのフォーマットはオープン仕様に準拠しているため、他のツール向けに作り込んだ.mdファイルを持ち込みやすい点は、既存のプロンプト資産を活かしてGemini Enterpriseを活用する際に大きなメリットとなります。
一方で、現時点ではスキルをエージェントで利用できないなどの制限も残っています。
まずは、Gemini Enterpriseを使用する中で発生する定型業務をスキルとして整備し、その効果を検証しながら、エージェントとの連携が可能になった段階で業務プロセス全体への組み込みを検討する、という進め方がいいのではないかと感じました。