はじめに

今回は Google の「Gemini Enterprise」 を使用して、日々の業務改善の強力な味方となる「AIエージェント」を自作した事例をご紹介します。

弊社では、お客様からのお問い合わせ対応について「満足」「不満」のアンケートを実施しており、その結果をサービス品質の向上に役立てています。
そこで今回、Gemini Enterpriseを活用して、アンケート結果から対応チケットを抽出・分析し、改善案の提案からレポート作成までを自動で行ってくれるAIエージェントを構築してみました!

本記事では、開発に至った背景や実際の構成、そして具体的な出力結果について詳しくお伝えします。

 

Gemini Enterprise とは?

Gemini Enterpriseとは、社内のあらゆるデータを安全に繋ぎ、検索から業務の自動化までを強力にサポートする『企業向けAIプラットフォーム』です。
Gemini Enterprise を使用すると、チームは単一の安全な環境で AI エージェントを発見、作成、共有、実行できます。

主な特徴として以下4点を記載いたします。

一元的な情報検索(SaaS連携):
▪️外部ツールと連携し、社員それぞれのアクセス権限に配慮しながら、あらゆる企業情報を一つの画面(マルチモーダル検索)で安全に探せます。

▪️よく使われるコネクタには次のものがあります
・Google Workspace: ドライブ、カレンダー、Gmail、グループ(リアルタイム同期)
・Microsoft: OneDrive、Outlook、SharePoint、Entra ID
・ServiceNow
・Jira
・Confluence

高度な対話と問題解決:
▪️生成AIによる対話形式でのサポートや、複雑な質問への回答が可能です。

▪️NotebookLM、Deep Researchを使用することも可能です。

カスタムAIエージェントの運用
▪️業務の文脈に合わせて独自の自動化エージェントを構築・運用し、知識労働者のワークフローを強力に支援します。

▪️ノーコードでマルチエージェントを作成することができます。

強固なセキュリティ
▪️プロンプト、出力、トレーニングなどのデータが、Google のモデルや他のお客様のモデルのトレーニングに使用されることはありません。

▪️記録の保持、アクセシビリティ、完全性の維持など、クラウド コンプライアンスに関する厳格な要件を満たしています。

以下添付画像のように、ボタンひとつで簡単に「コネクタ」接続することが可能で、とても簡単に使うことができます。

実現した構成

1. システム概要

本システムは、Zendeskのチケット評価(満足・不満)を毎週自動で収集・分析し、改善提案を含むレポートを作成するものである。
特徴として、AIによりデータを抽出・分析し、改善提案をレポート化するものとなる。

2. 業務フロー(プロセス・シーケンス)

自動起動
・毎週水曜日 09:00 に実行。
データ抽出
・過去1週間分の「満足」「不満」チケットを抽出。
AI分析・提案
・理由分析、改善策立案、レポート成形までを連続実行。

3. エージェント設計(マルチエージェント構成)

▪️司令塔(メインエージェント / オーケストレーター)
役割
・システム全体の進行管理、データリレーの統括、およびユーザー(人間)との対話窓口。
処理内容
・定期実行のトリガーを受け取り、ワークフローを開始する。
・エージェント1〜4を順番に呼び出し、出力されたJSONデータを次のエージェントへ確実に受け渡す。
・エージェント4が作成したレポート(Markdown)をユーザーに提示し、フィードバック(修正指示)を受け付ける。
・フィードバックにて改善されたレポートを最後に再作成し、提供する。

▪️エージェント1:データ抽出(Zendesk Connector)
役割
・Zendesk APIを用いて対象期間の全情報を取得。
抽出対象
・「満足」「不満」の各ビュー。
出力
・ チケット内容(件名、本文、評価コメント、担当者等)のJSONデータ。

▪️エージェント2:理由分析(Reason Analyzer)
役割
・ 評価の「真因」を深掘りする。
分析ロジック
・満足理由:成功パターンの抽出、感謝のポイント特定。
・不満理由:ボトルネック、説明不足、システム不備、期待値との乖離。
出力
・分析結果(JSON形式)。

▪️エージェント3:改善提案(Action Planner)
役割
・分析結果から具体的アクションを導き出す。
提案内容
・横展開すべき「Good Practice」の共有事項。
・不満解消のための「改善策」と具体的なネクストステップ。
出力
・提案内容(JSON形式)。

▪️エージェント4:レポート成形(Reporter)
役割
・分析と提案を人間が読みやすいドキュメント(Markdown)に変換。
フォーマット
・集計期間・件数概要
・満足チケットの分析と共有事項
・不満チケットの分析と改善提案
・出力: ユーザー確認用テキスト

4. 機能要件

機能ID | 機能名 | 詳細
F-01 | 定期実行スケジュール | 毎週水曜日 09:00 (JST) に全プロセスを開始。
F-02 | データ抽出期間 | 実行日の前週水曜日から当日までの過去7日間を対象とする。
F-03 | 対話型修正機能 | ユーザーがチャットUIでレポート内容の加筆・修正を指示できること。

<フロー>

<スケジュール>

出力結果(作成されたレポート)

直近1週間分の「満足」・「不満」のついた問い合わせ対応を出力させた結果は、以下添付画像のように出力されます。

※本来であれば、担当者名・お客様・チケットID、チケット内容、AI分析内容などの詳細情報も出力されますが、個人情報であるためマスキングしております。

精度を向上させるための工夫

1. エージェント毎に役割を明確に分ける

複数の自律的なAIエージェントが協調・分業することで、シングルエージェント(単一のAI)では困難な複雑なタスクを効率的かつ柔軟に処理ができるようになります。
今回作成したエージェントも、レポート作成までに様々なミッションを与えているため、マルチエージェント構成となっています。
役割分担を明確化することで、各サブエージェントにタスクが絞られて正確性を向上させることができます。

2. 具体的な範囲の指定

エージェントに指示を与えるプロンプトが曖昧だとAIは膨大なデータから必要情報を探しにいくため、正確なデータを抽出することが困難になります。
検索範囲を明確に絞ることでAIが探しにいく箇所を指定すれば、正確性・速度が増すことがわかりました。
AIが正確な情報を見つけて来れない場合は、ソースとなるデータのどこを見にいくのかをより具体的に指定してみると良いかもしれません。


# 検索条件
## 検索対象のビュー
* ビューID:××××××××××××××××××××××××

3. 出力形式を使い分ける

AIのプロンプトを設定するにあたり、出力形式を指定することは非常に重要です。
理由としては、人間が理解しやすい構造とAIが解釈しやすい構造にはギャップがあるからです。
今回であれば、「データの抽出・分析」にはJSON形式、「改善提案・レポート生成」には、Markdown形式を使用するように使い分けました。
形式を指定しないでエージェントに指示した時は、正確なデータの抽出ができずにハルシネーションが発生しやすい傾向であったのに対して、形式を役割に応じて指定することで正確性を向上させることができました。

まとめ

本記事では、Googleの「Gemini Enterprise」を活用し、Zendeskの顧客アンケート結果から業務改善レポートを自動生成する「カスタムAIエージェント」の構築事例をご紹介しました。

Gemini Enterpriseを用いたマルチエージェントの構築は、日々の定型業務やデータ分析の負担を大幅に軽減し、私たちがより付加価値の高い改善活動に注力するための強力なサポートとなります。
また、今回のエージェント構築についても、全てノーコードで自然言語のみで実装することができました。

お客様のサービス品質向上や様々な用途に応じたAI開発のヒントとして、ぜひ本事例を参考にしてみてください!