はじめに

2026年10月15日 (木) に開催された、Sysdig Japan合同会社主催のイベント「Sysdig Accelerate 26」に参加してきました。テーマは「エージェントが動かす時代へ – 推測で動く AI か、カーネルまで見て動く AI か -」です。

AI エージェントが当たり前に使われるようになった今、セキュリティをどう考えればよいのか。Sysdig 社の経営陣、ユーザー企業、クラウドベンダーと、それぞれの立場から話を聞ける1日でした。

この記事では、イベントのポイントごとに紹介したあと、参加して感じたことをまとめます。

イベント概要

  • 開催日 : 2026年10月15日 (木)
  • 主催 : Sysdig Japan合同会社
  • 協力 : アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社、レッドハット株式会社
  • 時間セッション登壇者
    14:00 〜 14:05ご挨拶Sysdig Japan合同会社 代表執行役員社長 安田 智有 氏
    14:05 〜 15:05基調講演 – クラウドからAIへ — リアルタイム・セキュリティの次の一手Sysdig, Inc. CEO, Hatem Naguib 氏 / CTO, Loris Degioanni 氏 / SVP, Shantanu Gattani 氏
    15:05 〜 15:35UI の限界に気づいた先へ — セキュア・バイ・デザインと Headless 運用の実践知株式会社ログラス 開発部エンジニアリングマネージャー 勝丸 真 氏
    15:50 〜 16:30AI 活用の光と影、その先にある防御線 – AI DefenseSysdig, Inc. CTO Loris Degioanni 氏
    16:30 〜 17:00Roblox に聞く、ゲーム基盤セキュリティの本音 — 優先順位・AI 攻撃・スケールの壁Roblox Corporation Senior Engineering Manager, Infrastructure Security Mr. Stephen Whelan
    17:10 〜 17:55パネルディスカッション:AI に、本番環境を触らせる日 — アラート疲れと自律性のあいだでアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パートナー技術統括本部 テクノロジーソリューション本部 本部長 河原 哲也 氏 / レッドハット株式会社 技術営業本部 エンタープライズソリューション営業部 部長 土田 隆文 氏 / モデレーター : Think IT ライター 松下 康之 氏

    イベントのポイント

    新たな発表 : SaaS 版の日本リージョンと AI Defense

    登壇する Sysdig, Inc. CTO Loris Degioanni 氏

    冒頭のあいさつでは、SaaS 版の日本リージョン開設と、AI の挙動を検知する「AI Defense」が発表されました。AI Defense は、個人の ID で使われている AI エージェントのような「シャドー AI」も含めて AI の利用状況をモニタリングし、AI を正しく使える状態にするためのものです(現時点ではベータ版)。CTO の Loris Degioanni 氏のセッションではデモもあり、どのコーディングエージェントが使われ、どんなセッションで何をしているのか、コストはいくらかまで確認できる様子が紹介されました。

    AI で攻撃対象・スピード・守る範囲が変わる

    基調講演では、AI がここ数年で急速に進化したことが強調されていました。AI が、まだ知られていない脆弱性(ゼロデイ脆弱性)まで見つけられるようになったこと、脆弱性が見つかってから悪用されるまでの期間がどんどん短くなっていることも紹介されました。

    さらに、AI エージェントは1つのセッションの中でエンドポイントとクラウドワークロードを行き来するため、攻撃対象、スピード、守る範囲のすべてが変わる、というのが講演全体を通したメッセージでした。

    そのうえで Sysdig 社の立場は、実行中の振る舞いを捉え、それを嘘をつかない真の情報源として、クラウドから AI エージェントまでを一体で守るというものです。製品も AI を使いやすいように作り替えられており、人が見る UI に加えて、AI エージェントから機能を使える「Headless」の考え方や、用途ごとのエージェントスキルが紹介されました。Headless については、2026年5月に「Headless Cloud Security Platform」として発表されています。

    人の仕事は「見る」から「判断する」へ

    株式会社ログラスの勝丸氏からは、少人数のクラウド基盤チームで Sysdig を運用してきた事例が紹介されました。

    AWS アカウントが増え続ける一方で、運用の入力はまだ「人が画面を開くこと」だったため、限界が来ていたそうです。検知のあとの「見る・翻訳する・運ぶ・判断する」がすべて人の仕事になっていたところを AI を使って作り直し、人の仕事を「見る」から「判断する」へ移しています。判断の軸をチームでそろえるために、当番制も取り入れているとのことでした。

    印象に残ったのは、AI 時代でも最小権限や権限の棚卸し、記録を残すといった基本は変わらず、AI はその基本を広い範囲に徹底するための道具だ、という話です。

    パネルディスカッションでも、アラートの初動対応はすでに AI に任せられる段階に来ている、という話がありました。一方で、リリースなど変更を伴う作業は人が判断する(Human-in-the-loop)という線引きです。

    現時点では「調査は AI、判断は人間」。AI に任せられるかどうかの境目は、AI が元に戻せる(ロールバックできる)かどうかだ、という整理が分かりやすかったです。

    AI のコスト管理

    パネルディスカッションでは、コストの話もありました。昨年まではあまり意識されていなかったものの、全社展開を始めるとトークンをすぐ使い切ってしまい、AI ゲートウェイを入れて見える化・最適化しているとのことでした。

    所感

    AI は、クラウドがたどった道を歩いている

    クラウドが広まり始めたころを振り返ると、まず「使ってみる」段階がありました。本格的に運用に乗ってから、設定ミスや権限管理、利用部門が独自に使い始めるシャドー IT、想定外の請求といった、セキュリティとコストの課題が表に出てきました。そこから設定や権限をチェックする仕組みやコスト管理の仕組みが整い、今の「クラウドを安全に、無駄なく使う」形ができあがっています。

    今回のイベントを通して、AI も同じ道筋をたどっていると感じました。全社展開が進んだ結果、個人の ID で使われるシャドー AI、エージェントにどこまで権限を渡すかという問題、トークンコストの膨張といった課題が一気に表に出てきています。AI Defense による利用状況の可視化や、パネルで話題になった AI ゲートウェイは、クラウドが通ってきた道でいえば、設定チェックやコスト管理の仕組みに近い役割だと思います。AI はまさに、試す段階から運用する段階への過渡期にあるのではないでしょうか。

    変化の速さには、製品の進化に乗る

    もう一つ感じたのは、情報のアップデートの速さです。基調講演でも、数ヶ月単位で先が読めない、脆弱性が見つかってから悪用されるまでの期間も縮んでいる、という話がありました。新しい攻撃手法や使い方が出るたびに自分たちで仕組みを作り込んでいては、とても追いつけません。

    その点、AI を前提に作られた製品を使えば、製品側のアップデートで新しい脅威や使い方に追随しやすくなります。製品自体が AI を使いやすい形に作り替えられているという今回の話を聞いて、なおさらそう感じました。すべてを自分たちで抱えるのではなく、製品の進化に乗れる部分は乗る、という選び方がこれからは大事になると思います。

    一方で、ログラス社の事例にあったように、何に対応して何を受容するかという判断基準や、最小権限・記録を残すといった基本は、製品任せにはできません。製品の進化に乗る部分と、自分たちで持ち続ける部分を分けて考えることが、AI の過渡期を乗り切るポイントだと感じました。

    運用の現場から見ても、ツールに頼る部分は増える

    運用周りでは、アラート対応などでいろいろとタスクが増えていきます。そのたびに人の手が入ると、他のことに手を付けられなくなります。そのため、アラートの検知や状況の把握といった部分は、ツールに頼る必要があります。そこに AI が出てきたことで、状況はさらに人の手に負えなくなっていきます。最終的に直すのは人の手になる場合もありますが、だからこそ、何が起きているかをツールで素早く把握し、人は判断に集中できる体制がますます重要になると感じています。

    AI の台頭によって、攻撃者と守る側の攻防はますます活発になっていくと思います。

    おわりに

    終了後の懇親会

    AI エージェントの活用は、「使うかどうか」ではなく「どう安全に、無駄なく運用するか」の段階に入ってきたと感じた1日でした。

    KDDIアイレットでは、Sysdig Secure を活用したマネージドセキュリティサービス(Sysdig 運用サービス)を提供しています。導入から監視・運用保守まで、伴走してご支援します。AI エージェントを活用した運用についてもご相談いただけます。興味のある方は、ぜひお気軽にお声がけください。