本記事のゴール
この記事では、以下の内容について理解を深めることを目標とします。
- Astroとは何かを理解し、その特徴を把握する
- Astroの設計思想と主要機能について学ぶ
目次
概要
Astroとは
Astroは、高速なWebサイトを構築するためのオールインワンWebフレームワークです。主に静的サイトジェネレーター(SSG)として動作しますが、
サーバーサイドレンダリング(SSR)やハイブリッドレンダリングもサポートしています。デフォルトでJavaScriptを排除する設計により、
パフォーマンスに優れたWebサイトを構築できます。
エンジニア間での評価
Astroは静的サイトジェネレーターとして急速に注目を集めており、以下の指標で成長を見せています。
GitHub
50,000以上の星を獲得し、npmダウンロード数も増加傾向
開発者調査
State of JSやState of Frontendなどの調査で高い満足度を獲得
採用事例
企業サイトやブログ、ドキュメントサイトなど幅広い用途で採用
人気の理由として、主に以下の点が推測できます。
- ゼロJS: デフォルトでJavaScriptを送信しない設計
- フレームワーク非依存: React、Vue、Svelte等を同一プロジェクトで使用可能
- 優れたパフォーマンス: 軽量で高速なサイトを構築(ゼロJSやレンダリングとも関係)
- 開発者体験: 直感的なAPIと豊富なエコシステム
ゼロJSやフレームワーク非依存など、基本的にAstroの設計自体に深く結びついていると思います。いくつかの点に関しては、次の章以降で後述します。
基本的な設計思想
レンダリング戦略の柔軟性
Astroは以下の複数のレンダリング戦略をサポートしています。
- SSG(Static Site Generation): デフォルトのモード。ビルド時にあらかじめHTMLを生成しておくことで、レンダリング速度を高速化。
- SSR(Server-Side Rendering):
output: 'server'
で有効化。リクエスト時にサーバーでオンデマンドにHTMLを生成。クライアントで生成するよりも速度が速くなりやすい。 - ハイブリッドレンダリング:
output: 'hybrid'
でページごとにSSGとSSRを選択可能
// astro.config.mjs export default defineConfig({ output: 'hybrid', // または 'server' ...
SSGが特に有名ですが、意外に他レンダリングも可能です。AstroのAPI Route機能やSSR前提のプラグインを使用する場合など、状況によりプロジェクト/コンポーネント単位でレンダリング方法をカスタムすることが可能です。
アイランドアーキテクチャ
Astroの核心となる設計思想です。ページ全体を静的HTMLとして扱い、必要な部分のみをインタラクティブな「アイランド」として動的に機能させます。
JavaScript排除の思想
デフォルトでJavaScriptをクライアントに送信しない設計により、初期ページロードのパフォーマンスを最大化します。デフォルトではJavaScript排除ですが、もちろんDOM操作などでJavaScript自体を書くことやAstroプロジェクト内でReactコンポーネントを作成し使用することも可能です。その場合、astro.config.js
の設定によって、build時に.jsファイルが分割生成されます。
テンプレートエンジン
Astroの独自テンプレート記法により、HTMLライクな記述でコンポーネントを作成できます。この特徴によって、HTML・CSSに慣れている人は特に使いやすい印象です。
TypeScriptサポート
TypeScriptとの相性が優れており、型安全性を保ちながら開発を進めることができます。
主要機能と開発時に役立つ情報
コンポーネント設計
Astroのコンポーネントは以下の3つの主要セクションで構成されます。
- フロントマター: JavaScriptのロジックを記述
- テンプレート: HTMLを記述(scriptタグでJavaScriptも記述可能)
- スタイル: スコープ付きCSSを記述
豊富な機能セット
コンテンツ管理
- Markdown・MDXサポート
ブログやドキュメントの作成が容易 - Content Collections
TypeScript型安全なコンテンツ管理とスキーマ検証 - シンタックスハイライト
コードブロックの美しい表示
Content Collectionsに関しては、標準でZodによる型定義を使用できます。
// src/content/config.ts import { defineCollection, z } from 'astro:content'; const blogCollection = defineCollection({ type: 'content', schema: z.object({ title: z.string(), pubDate: z.date(), tags: z.array(z.string()), }), });
画像最適化
- 統合画像処理
astro:assets
による自動最適化 - レスポンシブ画像
WebP/AVIF変換とサイズ最適化
--- import { Image, Picture } from 'astro:assets'; import heroImage from '../assets/hero.jpg'; ---
ユーザー体験
- View Transitions
SPAライクなスムーズなページ遷移 - 国際化(i18n)
URLベースの多言語対応
View Transitionsに関しては、Web標準のViewtransition APIを使用し、Astro仕様にカスタムされたものを使用できます。ブラウザサポート状況も標準の仕様に依存します。
<!-- View Transitions --> <ViewTransitions /> <div transition:name="hero" transition:animate="slide"></div>
開発基盤
- プラグインエコシステム: 豊富な公式・サードパーティプラグイン
- Vite統合: 高速なビルドと開発体験
- 柔軟なデプロイ: 様々なホスティングサービスに対応
基本的に、Netlify・Cloudflare・Vercelなど多数のホスティングサービスにホスティングすることが可能です。コンテンツにもよりますが、個人利用であればCloudflare Workers・Pagsesが無料運用しやすくでおすすめです。
パフォーマンス特性
Astroのパフォーマンス面での特徴は以下の通りです。
- 軽量: SSGによりサーバー負荷が軽減
- 高速: 静的ファイルの配信によるレスポンス速度向上
- SEO対応: 事前にHTMLが生成されるため、検索エンジンに最適化
ハイドレーション
ハイドレーションとは、サーバー側で生成した静的HTMLに、後からブラウザ側のJavaScriptを接続し、インタラクティブな状態にする処理のことです。
基本的にAstroではデフォルトでハイドレーションはしない設定になっています=ただの速いHTML
以下のような設定で、コンポーネントのハイドレーションタイミングを細かく制御できます。
- client:load: ページロード時
- client:idle: ブラウザがアイドル時
- client:visible: 要素が表示された時
- client:media: メディアクエリが一致した時
ただ読むだけの内容で、インタラクティブなサイトでない場合では、デフォルトのままでいいと思います。
※SSR前提のライブラリなどの場合は、適切にハイドレーション必要な場合などがあります。
使用上の注意点
Astroを使用する際、いくつか考慮する点があるかとは思いますが、個人的に以下を注意して使用しています。
- ビルド時間
- コンテンツ量に応じてビルド時間が増加する場合があります
- 画像最適化
- リモート画像の最適化にはアダプター依存の制限があります
- SSRライブラリ
- 一部のSSR前提のライブラリは正常に動作しない場合があります
- フレームワーク混在
- React等の外部コンポーネントを使用する際は、各フレームワークの記法に従う必要があります
- JavaScript記述
- 宣言的なフレームワークから手続型のJavaScript記述への移行が必要な場合があります
- 実験的機能
- Astro Actionsなど一部機能は実験段階のため、本番使用には注意が必要です
Next.jsとの比較
同じWebフレームワークとして、Next.jsと比較すると以下のような違いがあると思います。Next.js側でも静的書き出しモードに設定できるので、将来サービスが拡大・複雑になる場合は、最初からNext.jsを選択するのも手かなと思います。
ただし、AstroはNext.jsと異なりReact使用前提のフレームワークではないため、状態変化の少ないサービスを作成する場合は、特に選択の余地がありそうだなと思います。
項目 | Astro | Next.js |
---|---|---|
SSR | オプトイン型(output: 'server' ) |
デフォルト(App Router) |
ハイドレーション | 選択的(アイランド) | 全体的 |
JavaScript | ゼロJS(デフォルト) | フル送信 |
フレームワーク | 複数対応(React/Vue/Svelte) | React専用 |
設計思想 | 静的優先、動的をオプション | 動的優先、静的を最適化 |
※Next.jsに関しては、v15以降のPPRなど様々な機能もあるので、あくまで一例です。
まとめ
Astroは現代のWeb開発において、パフォーマンスと開発者体験を両立する優れたフレームワークです。静的サイトジェネレーターの強みを基盤としながら、
SSRやハイブリッドレンダリングによる柔軟性、アイランドアーキテクチャによる効率的な設計が可能です。
特に、コンテンツ中心のWebサイトやブログ、ドキュメントサイト、そして軽量なWebアプリケーションの構築において、その真価を発揮します。
適切な理解と活用により、高速で保守性の高いWebサイトを効率的に構築できると思います。
Astro DBやActionといった新機能も続々追加されている最中なので、私としても理解を深めていきたいと思います。