現代の法務部門に求められる役割と、生成 AI を活用した業務効率化の先に目指す「有事への備え」について語り合いました。
アイレット株式会社
取締役副社長 平野 弘紀
法務・コンプライアンスグループ
グループリーダー 山内 雅典
契約書レビューが前年上期比で約1.7倍に増加。AI 導入は「必須」の選択だった
生成 AI の活用を全社的に推進する中で、間接部門での活用はまだまだ進んでいないのが現実です。そんな中、アイレットの法務部門では NotebookLM を活用し、契約書レビューの大幅な時間短縮を実現しました。今回は NotebookLM の活用を中心に生成 AI による業務効率化、DXを推進した山内さんと、生成 AI の活用から考える法務業務のあり方について話したいと思います。
ビジネスの成長は止められませんからね。その負荷を現場の努力だけで回そうとするのは、経営として適切ではない。これが、アイレットが全社的に生成 AI の活用を推進している理由の一つです。会社として元々 Google Workspace を導入していたため、Google の生成 AI である Gemini や NotebookLM をあらゆる業務で活用できるよう推進してきました。
会社として推進してくれたおかげで、特にハードルを感じることなく生成 AI の導入に取り組めました。僕自身も人力での契約書レビューに危機感を感じていたので、まず自分自身で NotebookLM で契約書レビューを実施できるノートブックを作成しました。準備と言っても、既存のチェックリストを PDF 化して NotebookLM に投入しただけです。
土台ができたので、あとは契約書を PDF 化して NotebookLM にアップロードすると、自動的に修正すべきピンポイントの条項を検知してくれるようになりました。結果として、人間は AI が示した修正案の妥当性だけを確認すれば良いため、大幅に時間が短縮されました。さらに、担当者によってスピードが違うといった問題もある程度標準化されました。
ただし、短縮される時間は法務レビューの経験の長さに左右され、個人差が生じます。アイレットでは、経験年数の違いによる時間のバラつきを解消するため、AI の出力形式を工夫しました。具体的には、上部に修正すべき条番号と内容の要約を提示し、その後に詳細な修正案を配置しています。
経験豊富なユーザーは要約だけを確認して自ら修正案を検討する方が早いケースがあるため、このようなチームや利用者の習熟度に応じた出力形式を検討し、それを AI への指示書に反映させています。
グループ全体で活用するために工夫した点はありますか?
チェックリスト付きのマニュアルを作成しました。マニュアルに関しても Gemini に「この業務分掌を基に全ての業務で AI を活用したいです。マニュアルの骨子を作ってください」と指示をして、提案された骨組みを人が修正するという形で作成しました。マニュアルは、Gemini と相談しながら「考えなくても進められる」ように改善していったため、グループメンバーがしっかり活用できるようになるまでに時間はかかりませんでした。
私が考えるに、リスクの分散だけでなく、労力稼働の集中も解消されるのではないでしょうか。誰が休みになってもボトルネックになることがない。仮にリソース拡充が必要になり、新しく入社した社員にも即戦力になってもらえる環境が用意でき、将来的には、契約社員などの一時的なリソースでも、同等の品質で契約書レビューを提供できるようになると考えています。これが AI がもたらす最大のメリットだと感じています。