はじめに
MSPセクションの中村です。
普段はAWSやGoogle Cloudなどのパブリッククラウド上で
構築されたシステムの運用保守・構築に携わっています。
先日、ITIL 4 Foundationを受験し、無事合格しました。
実は、ITILの試験を受けるのはなんと15年ぶりです。
今回はその受験体験と、今学び直す意味についてお伝えします。
なぜ今、ITIL 4 Foundationを受験したのか
私のITIL受験履歴
- 2011年6月:
新卒入社3ヶ月で「ITIL v3 Foundation」合格。
当時は客先常駐という形態の中で、目の前のプロセスを確実に回すことに注力していました。 - 2026年3月:
現職のアイレットにて「ITIL 4 Foundation」合格。クラウドネイティブなMSP業務に携わる中での再挑戦。
受験の動機
15年前に学んだ ITIL v3は、インシデント管理や変更管理といった
「プロセスの標準化」が主目的でした。決められた手順をミスなく回す、
いわば「守りの運用」のバイブルだったと言えます。
しかし、現在アイレットのMSPが目指しているのは、単なる運用代行を超えた「次世代MSP」です。
この「次世代MSP」へと進化し続ける日々の業務を「 ITIL の理論で裏付けたい」と考えたのが今回の受験の大きな動機です。
ITIL v3→ITIL 4で変わったこと
15年前、新卒3ヶ月で手に取ったITIL v3の記憶は、「正しい手順(プロセス)を守れば安定した運用ができる」というものでした。
しかし、今回ITIL 4を学び直して、そのパラダイムシフトに大きな衝撃を受けました。
特に印象的だった違いを、以下の図に沿って紐解きます。

1. 「プロセス」から「プラクティス」への進化
一番の驚きは、v3で馴染み深かった「インシデント管理」や「変更管理」といったプロセスという言葉が、
ITIL 4ではプラクティスへと進化したことです。
- v3のプロセス:
「決められた手順通りに動くこと」がゴールになりがち。 - ITIL 4のプラクティス:
手順だけでなく、「組織・人」「情報・技術」「パートナー」「バリューストリーム」という4つの側面を統合して考える。
単に「ツールを使ってチケットを回す」のではなく、クラウドネイティブな環境でチームがどう動き、
自動化ツールをどう使いこなすかという「総合力」が問われる設計に変わっていました。
2. 「一方通行のライフサイクル」から「循環するバリューチェーン」へ
v3は「戦略→設計→移行→運用」という滝を流れ落ちるようなライフサイクルモデルでした。
一方、ITIL 4では中央にあるサービスバリューシステム(SVS)へと姿を変えています。
MSPの現場では、運用の最中に構築(Build)や改善(Improve)が並行して発生し、各フェーズが複雑に絡み合います。
「状況に応じて必要な活動を組み合わせる」というITIL 4の柔軟な考え方は、
アジリティの高い現場に非常にフィットするものだと確信しました。
3. 「サービス提供」から「価値の共創(Co-creation)」へ
これが最大の衝撃でした。v3では「IT側がサービスを提供し、顧客がそれを受け取る」という、やや一方通行な関係性でした。
しかし、ITIL 4の根底にあるのは「価値の共創」です。
お客様は単なる受け取り手ではなく、共に価値を作るパートナーであるという考え方。
「お客様のビジネスの成功を支えるMSP」という私たちの役割は、
まさにこのITIL 4の思想そのものだと気づかされました。
私のITIL 4 Foundation学習方法
王道の「黄色本」を活用
今回は書籍を中心に、以下のサイクルで学習しました。
- 使用教材:
翔泳社『ITIL 4 ファンデーション』(通称:黄色本) - 学習メソッド:
1. まず模擬試験を解き、今の実力を把握。
2. 間違えた箇所を本編で熟読。特に「4つの側面」や「従うべき原則」は実務と照らし合わせながら理解。
3. 再度問題を解き、正答率90%以上をキープ。
キーワードの理解には生成AIも活用
ITILのキーワードは独特な定義が多く、正直覚えにくいものです。
そこで私は重要キーワードをまとめ、生成AI(Gemini)に噛み砕いて説明してもらうことで理解を深めました。
今後の抱負
2026年1月に ITIL 5がリリースされました。
公式発表によると、ITIL 5のキーワードは「AI-Native(AIネイティブ)」と「デジタル製品管理」です。
私たちが日々向き合っているパブリッククラウド上の運用にも、AIによる自動化や分析は欠かせません。
ITIL 5で、サービス管理の知恵にAIガバナンスがどう組み込まれていくのか、今から非常にワクワクしています。
ITIL 4 Foundationに合格したばかりで気が早いですが、ITIL 5についても情報が出揃い次第、挑戦したいと考えています。
まとめ
15年ぶりにITILを学び直して気づいたのは、「技術は変わっても、本質はより人間味のある方向へ進化している」ということです。
v3の頃は「いかにミスなくプロセスを回すか」という、機械的な管理を目指していた気がします。
しかしITIL 4で強調されているのは、お客様との対話や変化への柔軟性、
そして「何のためにこの作業をするのか」という価値(Value)への視点でした。
長年現場で試行錯誤してきた経験が、ITIL 4の理論とカチッと噛み合った瞬間は、まさに「点と線がつながる」ような快感でした。
若手だけでなく、ぜひ中堅・ベテランエンジニアの方々にも、
この「答え合わせ」の感覚を味わってほしいと思います。