概要
本セッションでは、データ基盤のモダナイゼーション、特にBigQueryへのマイグレーション戦略と、それを支援するAI活用ツール群について解説が行われた。
なぜモダナイゼーションが必要か
冒頭では、既存のトランザクションシステム(Cloud Spanner等)やデータシステムを抱えながらAIエージェントを構築する時代になっている現状が語られた。
VS Codeと連携したAgentやGeminiを活用した開発体験が紹介され、モダンなデータ基盤の必要性が強調された。
既存システムからの移行を検討する際の主な課題として、以下が挙げられた。
- ベンダーロックイン問題:「オープン」を謳いながら実際にはベンダー依存になりがちなシステムの存在
- コストと価値実現のバランス:移行にかかるコストに対して、タイムリーに事業価値を得られるかどうか
- 新しいスキルの習得コスト:組織が必要とする新技術へのROI
- AIコストの管理:適切なガバナンスなしにAIを活用するとコストが膨大になるリスク
- SLAおよびコンプライアンスへの対応:モダナイゼーション中もSLAやコンプライアンスを維持する必要性
Google CloudのマイグレーションサービスのAI対応強化
Google Cloudは2021年に初期のマイグレーションサービス(BigQuery Migration Service)を立ち上げ、その後段階的に機能を拡充してきた。2024年にはGeminiをマイグレーション支援に統合し、ユーザーがGeminiと対話しながらマイグレーション計画を立てられるようになった。
そして本セッションでは、マイグレーションサービスを「Data Analytics Migration Services」として刷新し、完全なAI駆動型にリニューアルすることが発表された。

新サービスの3つの柱:
- 確定的かつ高速なマイグレーション結果の提供:AIエージェントはまだ完全には信頼できないため、エージェントと確定的な処理を組み合わせたアプローチを採用
- 幅広いソース・ターゲットへの対応:多様なデータソースとターゲット環境をサポート
- アクセス手段の柔軟性:API・CLIからコンソールUI、Terraform連携まで複数の手段でサービスにアクセス可能
これらのサービスを通じて、これまでに100万件以上のユニーククエリの変換実績があるとのことだった。
マイグレーションの3ステップとデモ
マイグレーションサービスは以下の3フェーズで構成される。
1. Assess & Discover(評価・発見)
オンプレミスまたは任意クラウド上にある既存環境の自動アセスメント機能が発表された。Databricks環境向けの自動アセスメントも新たに追加され、既存のワークロードをインベントリするだけでなく、Google Cloud移行後のコスト見積もりも自動生成できる。
デモ動画では、アセスメントレポートの内容が紹介された。
- 現在のデータベース数・総データ量・CPU/メモリ使用率のスナップショット
- BigQuery・Cloud Storage・Managed Service for Apache Airflowなど、Google Cloud相当サービスへのマッピング
- 移行戦略の提案(Icebergフォーマットへのオープンデータレイクハウス化、またはBigQueryへの全面移行)
- SQLの自動変換機能(既存のSQLダイアレクトをBigQuery SQLへ変換し、変換前後を並べて表示)
2. Plan & Prepare(計画・準備)
移行計画の自動生成と、段階的な移行ロードマップの作成を支援する。
新機能として、Hive MetastoreやIceberg REST Catalogからのテーブル移行機能が発表された。
オンプレミスおよびマルチクラウド環境のIcebergテーブルをBigQuery Lakehouseカタログに登録・移行できる。
デモでは以下の手順が示された。
- BigQueryのサービスページからマイグレーションプロジェクトを作成
- カタログタイプ(Hive MetastoreまたはIceberg REST Catalog)を選択
- Discoveryプロセスが完了後、ネームスペースおよびテーブルを選択して移行プランに追加
- 移行完了後、BigQueryのクエリエンジンで直接テーブルをクエリ可能になる
別のデモでは、AWS上のCloud環境に存在する100テーブル(各テーブル約2億件のレコード)をIceberg REST Catalogへ移行するシナリオが紹介された。全テーブルの移行が7.5分で完了し、その後の増分更新(スキーマ変更を含む)は4分で処理されたことが示された。
3. Migrate & Optimize(移行・最適化)
SparkおよびSQLの自動変換に加え、新機能としてインライン自動検証サービス(Automated Inline Validation Service) のローンチが発表された。
デモでは、バリデーションダッシュボードの機能が紹介された。
- 移行対象テーブルのバリデーション状況を一覧表示
- テーブルごとの行数・カラム数・スキーマ互換性の詳細確認
- バリデーション履歴の表示とフィルタリング
- パーティション単位でのデータ検証設定

顧客事例:金融機関によるGoogle Cloud活用
Keenan Moukarzel氏が、自身が勤務する銀行のGoogle Cloud活用事例を紹介。
同行は2020年代初頭にDatabricks・Tableau・DBTなど複数のツールを比較検討した結果、Google Cloudへの全面移行を決断。その理由は個々のツールで最優秀を狙うのではなく、Google Cloudが持つエコシステム全体の将来的な成長性への信頼とのこと。
4年後の現在、以下の成果が得られているとのことだった。
- Speed to Market:特定の顧客に関するインサイトを、以前は数日かかっていたものが数時間で得られるようになった。データが一か所に集約されてストリーミング処理されている恩恵が大きい
- Innovation:大手銀行と技術力で競争できる環境を、クラウドを通じて実現
- Cost:従来のオンプレミス環境と比較して大幅なコスト削減を達成
現在の注力テーマは、AIを活用して銀行員が顧客と向き合う時間を最大化すること、社内業務プロセスの効率化、データ品質の向上であると語られた。また、AIへの投資により技術面での不安はなく、いかにビジネス価値に変換するかという「人とプロセスの課題」に集中していると強調した。
まとめ
このセッションでは、Google Cloudがマイグレーションサービスを単なるツールからAIドリブンなエンドツーエンドのサービス群へと進化させてきた軌跡と、2026年4月時点での最新機能が紹介された。Hive/IcebergからBigQueryへの移行、自動アセスメント、インライン検証など、実際のデモを通じてその実用性が示された。金融機関の事例が示すように、Google Cloudへの移行は技術的な投資であるとともに、データを活用したビジネス変革への基盤づくりでもある。
お知らせ
本セッションで紹介された最新のAI駆動型移行を含め
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