「事例一覧」「案件登録」「売上データ管理」「記録入力」…。
私たちが普段何気なく目にしている、アプリケーションやWebサービスのナビゲーションですが、実はこうした「動詞(タスク)」や「表示の形式」が含まれているラベリングが、ユーザーの認知負荷を高めている原因かもしれません。
今回は、オブジェクト指向UIデザイン(以下OOUI)の視点から、導線を劇的にすっきりさせ、使いやすくするためのナビゲーション設計についてご紹介します。
デザイナーの方はもちろん、使いやすい管理画面やシステムを構築するためにエンジニアの方にもぜひ知っておいていただきたいナレッジとなります。
そもそもOOUIとは
OOUIは、「名詞(オブジェクト)」を中心にUIを設計する考え方です。
対象(名詞)を選んでからアクション(動詞)を決める流れが、人間の自然な思考プロセスに合致しているため、直感的に操作できます。これはナビゲーションにおいても同様です。
OOUIの基本については、弊社のDX開発事業部のデザイナーが詳しく解説している記事があり、ぜひこちらも併せてご覧ください。
なぜナビゲーションに「動詞」があると使いにくいのか
例えば「顧客」というメニューがあれば、ユーザーは「そこを押せば顧客リストがあり登録や編集ができそう」と自然に想像ができます。
ナビゲーションに「顧客登録」「マスター管理」といったオブジェクトとアクションを掛け合わせたメニューが存在している場合、余計な項目数が増えたり、不要な導線が増えたりしてしまいます。
もしも「動詞」で分かれた服屋があったら
オブジェクト(名詞)とアクション(動詞)を掛け合わせたメニュー構成がなぜわかりにくいのか、現実世界の「お買い物」で想像してみましょう。
- 商品を「手に取る」ための入り口
- 商品を「試着する」ための入り口
- 商品を「お会計する」ための入り口
これらがすべて別のドアで仕切られていたら、商品選びや試着のたびに一度外へ出て、別のドアから入り直す、そんなお店、二度と行きたくないですよね…。
本来、ユーザーの関心は「商品(オブジェクト)」にあります。一つのお店に入ったら、そこで商品を手に取り、試着し、お会計まで完結したいはずです。

オブジェクト(名詞)とアクション(動詞)を掛け合わせたナビゲーションも同じです。
「登録」するためのドアから入り、「編集」するためにまた別のメニューを探す。
これがオブジェクト(名詞)とアクション(動詞)を掛け合わせたナビゲーションがもたらす使いにくさです。
「〇〇一覧」といった表示形式のラベルも実は不要
動詞を削るのと同様に、実は「〇〇一覧」や「〇〇詳細」といった「表示の形式」も、ナビゲーションには不要な情報です。
OOUIの設計において、ナビゲーションに並ぶ「顧客」という名詞は、それ自体が顧客の集合体(コレクション)を指します。「顧客」を押せばリストが表示されるのは、ユーザーも容易に想像できる流れであり、わざわざ「一覧」と添える必要はありません。
また、「〇〇詳細」も同様です。一覧の中から特定のデータを選択すれば、その詳細が表示されます。この「集合から個へ」という自然な動線が担保されていれば、ナビゲーションに「詳細」という入り口を設ける必要もなくなります。
「動詞」を削るメリット:導線が一本化されユーザーの動きがスムーズになる
「ナビゲーションのラベルから動詞を消したら、分かれていた導線はどこへ置けばいいの?」という疑問が湧くかもしれません。
動詞はナビゲーション項目ではなく、「オブジェクトの画面内に配置する」「アクションボタンとして設置する」のがOOUIの鉄則です。
例)
Before【タスク指向:名詞×動詞】
ナビに「顧客登録」がある。
↓
After【オブジェクト指向】
ナビゲーションは「顧客」のみ。顧客一覧が並ぶ画面の右上に「+新規登録」ボタンを配置する。

これにより、ユーザーは「まず対象(顧客)を選び、次にやりたいこと(登録・編集)を選ぶ」という自然な思考ステップを踏めるようになります。
アクションごとに別画面に遷移して入り口を探し直す必要がなくなり、見た目だけでなくユーザーの立ち回り(思考ステップ)もシンプルになります。
あえて「原則を崩すべき」パターン
理論は重要ですが、実際の制作現場では正論だけでは通じないこともあります。
デザイナーとして知っておきたい、あえて「動詞(タスク)」を残すべき例外を考えてみました。
- メンテナンス性の明示
「ユーザー(閲覧用)」と「ユーザー管理(設定用)」のように明確に分け、誤操作を防ぎたい場合 - データ形式の約束
「売上(ダッシュボード)」と「売上明細(CSV的な一覧)」のように、見せ方が全く異なる場合 - ユーザーの慣習
特定の業界で「在庫管理」のように、慣用句になっている言葉や名詞と動詞セットでよく使われる言葉の場合
上記以外にも例外はあると思うので、プロジェクトやユーザーの特性に応じて、柔軟に考えられるようにしておくとよさそうです。
まとめ:デザインは「正しさ」よりも「優しさ」
OOUIは便利な理論ですが、あくまで目的は「ユーザーを迷わせないこと」です。
ナビゲーションを設計する際には、原則を理解した上で、あえて原則を使わない方が良いパターンもよく検討し、プロジェクトやユーザーに合わせて柔軟に使い分けていきましょう。