こんにちは。デザイン事業部デザイナーの武井です。社内ワークショップの運営をきっかけに、初めて「アンケート設計」にチャレンジしました。
一見シンプルに見えるアンケート設計の中にも、「入力のUX」「集計のUX」「抽出のUX」と様々なUXの考え方が潜んでいることに気づきました。
今回は、UX(ユーザー体験)の視点を取り入れたアンケート設計のポイントと、実際にやってみて気づいた失敗談を共有します。
リサーチをこれから始める方の参考になれば幸いです。
目次
1. 回答者が入力しやすい工夫(入力のUX)
回答者にとってアンケートは「手間(面倒な作業)」です。適当に答えられたり、離脱されたりするのを防ぐには、回答者の心理的ハードルを下げるUX設計が必要です。
1-1. 目的と所要時間を明記する
最初に「これは何のためのアンケートで、どれくらい時間がかかるか」を伝えて警戒心を解きます。

1-2. 自由記述には「回答例」を添える
真っ白な自由記述欄は、ユーザーに「何を書けばいいの?」とユーザーを迷わせます。例を載せることで、書き出しのアシストをしましょう。

💡Point:「推し活休暇」のような少し極端でユニークな例を混ぜておくと、「こんなことを書いてもいいんだ」という安心感に繋がり、率直な意見が集まりやすくなります。
1-3. 心理的安全性:「何を書いても大丈夫」な空気を作る
人は基本的に「いい人」であろうとするため、ネガティブな意見は書きにくいものです。
改善のための課題を抽出したい場合は、「ぜひ辛口なご意見をお願いします」と明記し、些細な不満でも書きやすい空気を作りましょう。

1-4.「選択式」+「自由記述」のハイブリッド設問
全ての質問を自由記述にすると、ユーザーの入力コストが高すぎて離脱を招きます。逆に選択式だけでは、定性的な「想い」がこぼれ落ちてしまいます。
- 選択式:クリックだけで済むようにし、回答負荷を下げる
- 自由記述式:具体的なエピソードを書きたい人だけが書けるようにする
「答えやすさ」と「情報の深さ」を両立させるために、この2つをセットで配置するのが効果的です。

2. 集計結果から逆算して考える(集計のUX)
今回のアンケート作成で学んだのは、集計結果から逆算してアンケートを設計することの大切さです。
2-1.名寄せの手間を省くため、基本は「選択式」にする
「なんでもいいので書いてください」と自由記述にするのは簡単ですが、集計時のコストは甚大です。
例:「業務で困っていること」を自由記述で聞いた場合
- Aさん:「パソコンが重い」
- Bさん:「PCの起動が遅い」
- Cさん:「エクセルが固まる」
これらは全て同じ意味合いですが、データ上はバラバラの文字列です。これらを「PC環境の不満」として集計するには、手作業での読み込みと分類(名寄せ)が必要になります。
最初から「PC環境」という選択肢を用意しておけば、この分類コストはゼロになります。
2-2. 【失敗例】選択肢の数のバラつきが「誘導バイアス」を生む
「1年目を振り返って、しんどいと感じた場面」を聞く設問で、以下のような選択肢を用意してしまいました。
– 【💰金銭面】 4項目
– 【🏃生活・健康面】 6項目
– 【💻業務・環境面】 8項目

▼なぜこれが問題なのか?
「選択肢が多いカテゴリほど、回答が集まりやすい(=問題が大きいように見える)」という誘導バイアスがかかるためです。
今回はあくまで回答時の認知負荷を下げる目的でカテゴリ名をつけただけで、意図的な誘導ではありませんでした。結果的にも【🏃生活・健康面】が最も票を集めたため大きな歪みにはなりませんでした。
しかし、回答者によっては「運営側が意図して特定の回答を集めるために、選択肢の数を変えているのでは?」と捉えたかもしれません。あるいは、【💻業務・環境面】への票が多く集まっていた場合、実情よりも重大な問題に見えていた可能性もあります。
このような歪みを解消するためには、各カテゴリの項目数をある程度揃える必要があると学びました。
3. 「捨て質問」でスクリーニングする(抽出のUX)
正しいユーザー理解のためには、「全ユーザーの声を同じ重さで受け止める」ことが正解とは限りません。文脈に合わせてデータをフィルタリングするための設計も必要です。
「捨て質問(スクリーニング設問)」とは?
これは回答者を切り捨てるためではなく、「データの純度を高める」ための作業です。特定の条件下にある人の回答を除外したり、重み付けを変えることで、一般的な傾向を掴むためにあえて混ぜる質問のことです。
今回行った具体例
具体例1:Q. 現在の居住形態を教えてください。
【どう使う?】
「実家暮らし」の人と「一人暮らし」の人では、金銭的な切実さが異なります。
「実家暮らし」層からの「金銭的な不満」は、参考情報として優先度を下げる、といった判断材料にします。

具体例2:Q. 自宅からオフィスまでの通勤時間はどのくらいですか?
【どう使う?】
「満員電車がつらい」「朝起きられない」と回答している人の中で、「通勤時間:90分以上」の人のデータを除外して集計します。
これは「極端な環境にいる人の特殊な不満」を、全体の課題として一般化しないための工夫です。

実際にやってみた感想
今回はGoogleフォームを利用したため、結果が自動集計されてとても楽でした。しかし、「捨て質問」を使ったスクリーニングを行うには、手動でデータを調整する「ひと手間」が発生します。
今回はN数(回答者数)が少なかったため手作業ですぐに対応できましたが、対象が大人数になった場合は、あらかじめ集計ロジックを組んでおくなどの対策が必要になりそうです。
おわりに:まずは「やってみる」ことから
今回、社内ワークショップを作り上げるための第一歩として、メンバーと試行錯誤しながらアンケートを実施しました。
アンケートの構成案や設問作りは、AI(Gemini)に目的と大まかに聞きたいことを伝えれば、構成のベースを提案してくれます。更にGoogleフォームを使ったため、スムーズに実査を行うことができました。
そしてやってみることで「アンケート設計の奥深さ」に気づくことができました。ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました!