はじめに

こんにちは!
DX開発事業部の川上この実です。

2026年10月13日(米国時間)、「Gemini 4 Argon」の一般公開が始まりました!
Gemini 4 Argon では、思考の深さを「Thinking Level(思考レベル)」の Low / Medium / High の3段階で指定できます。

そこで本記事では、ライブラリ(Three.js等)を一切使わず、3D回転行列や透視投影の数学のみで動く「ライブラリなしの3D太陽系」というお題を設定し、次の4パターンで比較を行いました!

  • Gemini 3.8 Flash / 思考レベル:High(比較用)

  • Gemini 4 Argon / 思考レベル:Low

  • Gemini 4 Argon / 思考レベル:Medium

  • Gemini 4 Argon / 思考レベル:High

思考レベルによって、生成コードの精度や見た目の演出、プロンプトで指示していない使い勝手の工夫がどう変わるのか、実際の画面を交えて紹介していきます!

Gemini 4 Argon の概要

Gemini 4 Argon は、Google が10月13日に一般公開したフロンティアモデルです。公式ガイドでは、複数ファイルにまたがるソフトウェア開発や形式的な証明、脆弱性の発見といった、深い推論が必要なタスクで High の思考レベルが勧められています。また、公式ブログでは、使い道のひとつとして「3D 表示やインタラクティブなアプリの試作」が挙げられています。

これまでのモデル(Gemini 3.8 Flash や Gemini 3.1 Pro など)も、コード生成やロジック構築は得意でした。ただ、筆者の経験において、3D 描画のように数学的な正確さが求められるタスクでは、計算が崩れたり平面的な表現になってしまうことがありました。
今回の検証では、こうしたタスクで Argon がどこまで違いを見せるかをまとめていきます。

Gemini 4 Argon の特徴

1. 100万トークンの枠と long decode

コンテキストウィンドウは入力と出力の合計で 1,048,576 トークンです。出力は通常 65,536 トークンまでですが、long decode を有効にすると、入力分を除いた残りの枠(最大で約100万トークン)まで使えます。ただし、公式ガイドによると、これは回答を長くするためではなく、モデルが考える余地を広げるための機能です(出力の枠には思考トークンも含まれます)。

2. 思考レベルは Low / Medium / High の3段階

思考の深さは思考レベルで指定します(初期値は Medium)。Argon では思考バジェット(thinking budget)の指定や Minimal は使えません。

3. 料金と使える場所

料金は100万トークンあたり入力 $2、出力 $10(2026年11月30日までの公開記念価格、以降は $4 / $20)で、思考トークンも課金の対象になります。Gemini API(有料プラン)や Gemini Enterprise Agent Platform(旧 Vertex AI)から、モデルID gemini-4-argon で使えます。Google Antigravity では Google AI Ultra の契約者が利用できます。

4. コーディング性能

Google が公開した評価資料では、長い開発作業を集めたテスト DeepSWE v1.1 で 77.9% を記録しています。一方で、すべての評価項目で1位というわけではないようです。

検証:3D 太陽系を作ってみる

Agent Platform で、4パターンに同じプロンプトを送りました。生成された HTML / JavaScript は手を加えずにそのままブラウザで開き、表示や動きを比べています。

なお、各パターン1回ずつ生成した結果です。同じプロンプトでも生成のたびに結果は変わるので、参考程度に見てください。

検証条件

  • 外部ライブラリは使わない
    Three.js や WebGL ラッパーなどは一切使用せず、HTML5 の Canvas API と JavaScript だけで作る

  • 3D の計算を自分で実装する
    透視投影(3D 座標を 2D 画面に変換する計算)と Z ソート(奥の天体が手前の天体に隠れる処理)を自分で書く

  • マウスで視点を動かせる
    ドラッグでカメラの角度(Yaw / Pitch)を変えられる

使用した検証プロンプト

あなたはフロントエンドエンジニアであり、数学者です。
外部ライブラリ(Three.jsやWebGLラッパーなど)は一切使わず、HTML5のCanvas APIと純粋なJavaScriptの数学計算(三角関数や透視投影など)のみを使って、ブラウザ上で動く「インタラクティブな3D太陽系シミュレーション」を作成してください。

以下の要件を完全に満たし、1つのHTMLファイル(コピペしてブラウザで開くだけで完動する状態)として出力してください。
コードの省略は一切しないでください。

【要件】
1. 太陽を中心に、複数の惑星が3D空間の軌道を公転していること。
2. 透視投影(3D座標を2D画面に変換する計算)を自力で実装すること。
3. マウスのドラッグ操作で、視点(カメラの角度:Pitch/Yaw)を自由に動かせること。
4. Zソート(奥にある天体が、手前の天体に自然に隠れる処理)を正しく実装すること。
5. 宇宙らしい背景色と、各惑星の色や大きさを視覚的にわかりやすくすること。

検証結果

① Gemini 3.8 Flash / 思考レベル:High(既存モデル)

特徴: 要件はひと通り満たしていますが、見た目やパラメータの表示は最低限でした。また、公転がかなりゆっくりで、惑星の動きが分かりにくかったです。

② Gemini 4 Argon / 思考レベル:Low

特徴: Low でも、土星の環や球体の陰影まで描かれていて、立体感のある画面になりました。公転が速いので、カメラを引いた状態でも惑星の動きがよく分かります!

③ Gemini 4 Argon / 思考レベル:Medium【初期値】

特徴: 指示をしていないのに、画面左上に「黄道面グリッドを表示」の切り替えが付いていました。さらに、各天体の下には「Z:1710」のように奥行きの座標がリアルタイムで表示され、Z ソートが正しく動いているかをひと目で確認できます。

④ Gemini 4 Argon / 思考レベル:High

特徴: 小惑星帯や衛星の描画に加え、プロンプトで指示していない「天体フォーカスボタン」が画面下に並んでいました。ボタンで惑星を選んでみると…

カメラがその惑星を追いかけて、近くから動きを見られるようになりました!

比較表

項目 3.8 Flash(High) Argon(Low) Argon(Medium) Argon(High)
公転と視点操作 ◯ ◯ ◯ ◯
ズーム(指示なし) ◯ ◯ ◯ ◯
立体的な描画
(球体の陰影・土星の環など)
△(簡易的) ◯ ◯ ◯
パラメータの表示
(Pitch / Yaw など)
△(最低限) ◯ ◯ ◯
確認用の表示
(黄道面グリッド・Z 座標)
✕ ✕ ◯ ◯
天体の追加(小惑星帯・衛星など) ✕ ✕ ✕ ◯
天体へのフォーカス ✕ ✕ ✕ ◯
思考時間(およそ) 63秒 1秒未満 3秒 25秒
トークン数
14,707 9,948 12,432 16,202

※ 思考時間とトークン数は、Agent Platform の画面に表示された値です。トークン数は各チャットのメッセージの合計で、思考トークンは含みません。
※ いずれも2026年10月14日(日本時間)に1回ずつ測りました。

実際に使ってみて

1. 指定していない機能まで作ってくれる

一番驚いたのは High の出力です。プロンプトで天体を選ぶ機能は指示していないのに、画面下に惑星ごとのボタンが並び、押すとその惑星をカメラが追いかけます。

Medium でもグリッドの切り替えや Z 座標の表示など、指示していない機能が付いていました。思考レベルを上げるほど、言われたものを作るだけでなく「どうすれば使いやすいか」まで作る傾向が見えました。

 2. 普段使いは Medium が良さそう?

思考時間とは別に、回答が終わるまでの時間も見ていました。結果として、Medium が約140秒、High が約195秒でした。
思考時間の差は20秒ほどなので、残りの差はコードを書き出す時間です。実際、回答のトークン数も High は Medium の約1.3倍でした。思考トークンと回答のトークンがどちらも増える分、料金も上がります。

公式ガイドでも、Medium は gemini-4-argon の初期値で、一般的なコーディング向けとして勧められています。 細かい修正を何度も頼むような作業では、待ち時間が積み重なります。普段は Medium を使い、設計が複雑なときだけ High に切り替えるのが、時間と料金のバランスが良さそうです。

最後に

今回は Gemini 4 Argon の思考レベルを変えて、ライブラリなしの 3D 太陽系を作らせてみました。

Low でも 3D の描画はしっかりできていて、Medium、High と上げるにつれて、指示していない機能が増えていきました。一方で、思考レベルを上げるほど応答時間と料金も増えます。作業の内容に合わせて、思考レベルやモデルを使い分けていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

参考資料