こんにちは。デザイン事業部でデザイナーをしている野田です。
UX/UIを学習している際に、よく使われているヒューリスティックというキーワードが、
何度調べても、意味が理解できたようで、よく分からなかったので、改めてどういうものか、と、その活用方法をまとめてみました。
一般的にヒューリスティックとは?
ヒューリスティックとは、問題解決や意思決定の際に用いる「経験則」や「直感的なルール」です。これにより、私たちは素早く判断を下せますが、必ずしも正しい結果を得られるわけではありません。ヒューリスティックを使うことで思考を効率化することができますが、それが偏見や誤った結論を導く原因になることもあります。
具体的には、ヒューリスティックは複雑な問題を簡略化し、判断を迅速に行うための方法です。しかし、状況によっては誤った決定を下すリスクが伴います。
ヒューリスティックの種類は非常に多く、さまざまな状況に応じて異なるパターンが作用します。
ざっと数えても、11種類くらいあり(文末の「補足2」を参照)、それらをカテゴリごとに分けると、次の3つになります。
- 判断の効率化を目的としたもの
- バイアスを引き起こすもの
- 社会的判断を支えるもの
に大きく分けられます。
ここでは、その中でも最も代表的と言われている、判断の効率化を目的としたヒューリスティックについて(3種類)取り上げたいと思います。
判断の効率化を目的とした代表的なヒューリスティック3種
1. 代表制ヒューリスティック(Representativeness Heuristic)
説明:
代表制ヒューリスティックは、ある物事が他の物事とどれだけ「似ているか」に基づいて判断する方法です。つまり、「見た目や特徴が似ていれば、それが正しい」と直感的に思い込んでしまう現象です。この思考法は直感的には効率的ですが、必ずしも正しいとは限りません。
例題:
次の質問を考えてみてください。
質問: 「Aさんは本を読むのが好きで、知識を深めるのが得意な人物です。彼は大学教授か、それとも営業職の社員か、どちらだと思いますか?」
多くの人が「大学教授だ」と答えるでしょう。なぜなら、大学教授の典型的なイメージとAさんの特徴(本を読む、知識を深める)が一致しているからです。しかし、実際には営業職の社員でも同じように本を読み、知識を深める人がいるかもしれません。このように、特徴に基づいて過剰に類似性を重視することで、判断を誤ることがあります。
実生活での活用シーン:
- パターン認識: 過去の経験や知識を基に、類似の問題や状況に素早く対応する時に役立ちます。
- 直感的な判断が必要な場面: 特に複雑な選択肢が多いときや、時間が限られている場合、直感的に最も適していると思われる選択をするのに役立ちます。
活用例:
- 仕事での問題解決: 例えば、営業職で似たようなクライアントに対して過去に成功したアプローチがあれば、そのアプローチを使って新しいクライアントにも同様の方法を試すことができます。過去の成功体験に基づく判断で効率的に結果を出せることが多いです。
- 製品選び: 新しい製品やサービスを選ぶ際、類似の製品やブランドに基づいて選択するのも代表制ヒューリスティックです。例えば、初めて行くレストランで、メニューに似た料理があると、それが美味しい可能性が高いと思って選んでしまうことがあります。
注意点:
ただし、「似ているから=同じ」という直感に頼りすぎると、実際の確率や状況を無視してしまう危険があるので、慎重に使うべきです。
2. 利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)
説明:
利用可能性ヒューリスティックは、過去の経験や記憶に基づいて判断を下す方法です。「頭に浮かびやすい情報」に基づいて、物事の発生頻度や確率を過大評価してしまう傾向があります。
例題:
次の質問を考えてみてください。
質問: 「最近、あなたはテレビや新聞で飛行機事故のニュースを多く見ました。これから飛行機に乗ることに対して、あなたの不安はどうですか?」
多くの人が「飛行機事故が増えている」と感じ、飛行機に乗ることを避けたくなるかもしれません。しかし、飛行機事故は実際には非常に稀な出来事であり、ニュースで多く取り上げられるからといって、飛行機事故の確率が増えているわけではありません。記憶に残りやすい事故や事件を基に不安が高まってしまうのが、利用可能性ヒューリスティックの影響です。
実生活での活用シーン:
- 迅速な意思決定: 過去の経験や思い出しやすい事例に基づいて、短期間で決定を下したいときに役立ちます。
- リスク評価や問題解決: 何かを選ぶ際に、過去の成功体験や記憶に基づいて、リスクが低い選択を取ることができます。
例:
- 旅行先の選択: 例えば、過去に特に楽しかった旅行の思い出があると、その行き先を選ぶ際に他の場所に比べて選びやすくなります。たとえその場所が実際には他の場所よりも高額だったり、混雑していたりしても、記憶に残っているポジティブな体験が強く影響します。
- 健康管理: もし過去に、特定のダイエット法や運動法が成功した経験があると、その方法を選び続ける傾向があります。このように記憶の中で特に印象に残った成功体験が、今後の意思決定に大きく影響します。
注意点:
利用可能性ヒューリスティックを使うときは、直近で記憶に残っている出来事を過剰に重視しすぎることがあるため、特に自分の感覚に偏りがないかをチェックすることが大切です。
3. 係留性ヒューリスティック(Anchoring Heuristic)
説明:
係留性ヒューリスティックは、最初に与えられた情報(アンカー)に引きずられて、その後の判断が影響を受けるという現象です。この「最初に提示された情報」がその後の決定に強く影響を与えるため、判断が歪むことがあります。
例題:
次の質問を考えてみてください。
質問: 「あるオークションで、最初の価格として100,000円が提示されました。その後、価格が上がり続け、最終的に150,000円で落札されました。このオークションが高いか安いか、どのように感じますか?」
最初に100,000円という価格が提示されたため、150,000円という最終価格が「高くない」と感じるかもしれません。しかし、もし最初の価格が50,000円だった場合、150,000円は「高い」と感じるでしょう。このように、最初の提示価格(アンカー)がその後の評価に大きな影響を与えます。
実生活での活用シーン:
- 価格交渉: 最初に提示された価格や条件がアンカーとなり、その後の交渉を有利に進めることができます。
- 選択肢が複数ある場合: 最初に与えられた基準を基に、他の選択肢の比較を行うことで、判断を下す際に役立ちます。
例:
- 買い物や交渉: 例えば、買い物をしているとき、セールの「元値30,000円、セール価格15,000円」の商品を見たとき、最初の「元値30,000円」がアンカーとなり、15,000円が非常にお得に感じられることがあります。この場合、最初の「元値」が実際にどれだけ妥当かに関わらず、割引価格を有利に感じることになります。
- 就職活動や契約交渉: 最初に提示された給与額や契約条件がその後の交渉に影響を与えることもあります。例えば、最初に提示された給与額が高ければ、その後の交渉でも他の条件を有利に感じることができます。
注意点:
係留性ヒューリスティックを使う際には、最初に与えられた情報(アンカー)が必ずしも適切なものとは限らないため、その情報がどれほど妥当であるかを再評価することが重要です。最初の条件に過剰に引きずられず、実際の状況を見極めることが必要です。
まとめ
- 代表制ヒューリスティック: 物事が似ていると、その物事が他のものと同じであると判断する。
- 利用可能性ヒューリスティック: 記憶に残っている情報や経験を基に、物事の発生確率を過大評価する。
- 係留性ヒューリスティック: 最初に与えられた情報(アンカー)が、その後の判断に強く影響する。
ヒューリスティックを実生活で活用するためのポイント
- 時間が限られているときに活用: ヒューリスティックは迅速な意思決定を促進します。例えば、忙しいときや時間がないときに、過去の経験や直感を頼りに素早く決めることができます。
- バイアスを意識する: ヒューリスティックは便利ですが、バイアスがかかることもあります。判断を下す前に、自分が使っているヒューリスティックが適切かどうか、冷静に確認してみましょう。
- ヒューリスティックを組み合わせる: 複数のヒューリスティックを組み合わせることで、より正確な判断を下すことができます。例えば、利用可能性ヒューリスティックで記憶に残った事例を基にしつつ、代表制ヒューリスティックで似たような過去の状況を照らし合わせることで、リスクを最小限に抑えることができます。
- 反省と修正: ヒューリスティックを使った結果がうまくいかなかったときには、どこで誤った判断をしたのかを振り返り、次回はより適切な判断を下せるように学習が必要です。
結論
ヒューリスティックは、日常生活の中で効率的な意思決定を行うために非常に有効ですが、その一方でバイアス(偏り)を引き起こす可能性もあります。自分の判断がどのようなヒューリスティックに基づいているかを意識し、適切に活用することで、より賢い意思決定ができるようになるそうです。
補足1:参考になった動画
一部有料コンテンツですが、YouTubeのアリストテレス大学【思考力を高める】 さんの【ヒューリスティクス】再生リストがとてもわかりやすかったです。
補足2:代表的なヒューリスティック一覧
ヒューリスティックの種類は非常に多く、心理学や行動経済学、認知科学などの分野でさまざまに分類されています。基本的には、私たちが迅速に意思決定を下すために使う直感的な「ルール」や「経験則」として多くのパターンがあります。以下は、代表的なヒューリスティックとそれらがどのように分類されているかの簡単な説明です。
代表的なヒューリスティック
- 代表制ヒューリスティック(Representativeness Heuristic)
物事が他のものと似ているかどうかに基づいて、確率や結果を判断する方法です。例えば、ある人が典型的な大学教授の特徴を持っていると、その人が大学教授である確率が高いと直感的に判断する場合などです。 - 利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)
頭に浮かびやすい情報や記憶を基に判断する方法です。最近見聞きした事例や記憶に残っている出来事が、その後の判断に強く影響を与えます。例えば、飛行機事故が頻繁に報道されると、「飛行機は危険だ」と感じてしまうことです。 - 係留性ヒューリスティック(Anchoring Heuristic)
最初に提示された情報(アンカー)を基に、後続の判断を行う方法です。例えば、商品が「定価10,000円が、セールで5,000円」と表示されていると、その「定価」が基準となり、5,000円が非常に安く感じることです。 - 確証バイアス(Confirmation Bias)
自分の信念や仮説を支持する情報だけを重視し、それに反する情報を無視または過小評価する方法です。自分の考えに都合の良い証拠だけを探し、反対の証拠を軽視します。 - 過信バイアス(Overconfidence Bias)
自分の知識や能力を過大評価して、過信してしまう傾向です。例えば、自分が市場の動向を正確に予測できると思い込んで、大きなリスクを取ってしまうことです。 - 選択的注意(Selective Attention)
目の前の情報の中で、自分にとって重要だと思われるものにだけ注目し、その他の情報を無視してしまうことです。これにより、判断が偏ってしまいます。 - フレーミング効果(Framing Effect)
情報がどのように提示されるかによって、意思決定が異なることです。例えば、「成功率90%」と「失敗率10%」は同じ意味ですが、前者のほうがポジティブに感じることが多いです。 - 損失回避(Loss Aversion)
損失の感覚が利益の感覚よりも強く影響を与える傾向です。つまり、利益を得ることよりも、損失を避けることに強く反応してしまう現象です。例えば、100円を失うことが、100円を得ることよりも精神的に痛いと感じることです。 - メンタルショートカット(Mental Shortcuts)
効率的に意思決定を下すために、直感や簡単なルールを使う方法です。例えば、非常に複雑な情報をわかりやすく簡略化して判断することがこれに該当します。 - ハロー効果(Halo Effect)
ある人物の一部分の特徴に基づいて、その人物全体を良いまたは悪いと判断することです。例えば、ある人が非常に魅力的だと、その人のその他の特徴(知識や性格など)も良いと判断しやすくなることです。 - 復元力(Recency Effect)と初頭効果(Primacy Effect)
特に記憶に残りやすい情報(最近の情報や最初に得た情報)に影響される傾向です。新しい情報や最初の情報に基づいて、その後の判断が大きく変わることがあります。
ヒューリスティックの分類方法
ヒューリスティックの種類は、大まかに以下のように分類できます:
1.判断の効率化を目的としたヒューリスティック
これらは、効率的に情報を処理するための直感的な方法です。代表的なものとして「代表制ヒューリスティック」や「利用可能性ヒューリスティック」があります。私たちの脳が素早く判断を下せるように助けてくれますが、偏った結論に至ることもあります。
2.バイアスを引き起こすヒューリスティック
これらは、意思決定における偏りを引き起こすヒューリスティックで、私たちが誤った結論を出しやすくなる原因となります。例えば、「過信バイアス」や「確証バイアス」などがこれに該当します。
3.社会的判断を支えるヒューリスティック
私たちが社会的状況や他者の行動を判断するために使うヒューリスティックです。例えば、「ハロー効果」や「選択的注意」がこれに当たります。