本記事は Google Cloud Next Tokyo 2025 で行われたセッション「Gemini による動画検索革命とバンダイナムコ『ClipSearch』事例紹介」のレポートです。

セッション情報

Gemini による動画検索革命とバンダイナムコ「ClipSearch」事例紹介

スピーカー:
Google Cloud カスタマー エンジニア 吉田 望 様
株式会社バンダイナムコエンターテインメント CE事業部 スペシャリスト 玉置 絢 様

Gemini がもたらす動画検索の革命的な変化と、その最前線事例を本セッションで明らかにします。
前半の技術解説パートでは、Gemini によるマルチモーダルな動画理解が、いかに検索のあり方を変革するかを解説。
続くバンダイナムコエンターテインメント様の後半パートでは、大量の映像資産から目的のカットを瞬時に見つけ出す独自検索システム「ClipSearch」を紹介し、生成 AI がクリエイターを力強く支援する未来を示します。

Gemini が動画データから目当てのシーンを見つけ出す!

皆さんは大量の動画データから、もしくは長尺の動画データ内から特定のシーンをピンポイントで探したい時、どうしますか?
ゆっくりシークバーを動かしながら確認したり、虱潰しに動画を確認していないでしょうか?

本セッションでは、そんな億劫な作業を Gemini と Vertex AI Search が行う革命的な動画検索システムをご紹介します。

どのように Gemini は動画内の特定のシーンを見つけ出すのか?

大前提、動画データには字幕・セリフ・BGM・登場人物・シーン…と多種多様な情報が混在しています。
これらの情報を Gemini が解析することでユーザーの要望に合ったシーンを検索することが可能となります。

動画データを Gemini に解析させてメタデータテキストに変換する。

シーン検索を行うためには、メタデータテキスト化が推奨されます。
もちろん動画データそのものを Gemini に与えても解析を行うことはできますが、実運用を考えると大量の動画データを一気に Gemini に渡して全ての動画の解析を待つことは速度や拡張性の観点から推奨されていません。
実際のユースケースでは、検索対象の動画データ全てに対してバッチ処理でメタデータテキストを作成するのが良いでしょう。

動画データを Gemini に渡す → 動画データがメタデータ化される → メタデータを Vertex AI Search の検索対象に保存する。
という流れになります。

バンダイナムコエンターテインメント様の導入事例

上記の Gemini による動画検索をバンダイナムコエンターテインメント様が実際に導入した事例のご紹介です。
セッション内ではゲーム「テイルズ オブ アライズ」内のシーンを検索できる様子が映し出されていました。

デモ内で検索できるのは単純なシーンだけではなく「キャラクターの構図」・「キャラクターのセリフ」・「画面に映っているテキスト」といった多種多様なニーズに答えることが可能でした。

Gemini は情報の種類別でメタデータテキストを作成することも可能なので、ニーズに合わせた動画検索を実現することができます。

なぜ動画検索なのか?

玉置様は、そもそも AI を活用すると考えた時になぜ動画検索にしたのか?というお話もされています。

回答としては、「生成 AI って便利なんだ!」を伝えるフェーズだから。

実務者が生成 AI を活用してくれて、業務に溶け込むには「使えるな、便利だな」と思ってもらうことが理論上のメリットより重要だと玉置様は語ります。

AI 利用が進まないケースを分析する

AI 活用が社内に浸透されないケースとして、以下の画像のようなケースを玉置様は挙げています。

実務者のモチベーションを理解する

人はスキルアップにつながる作業や、自分のスキルを発揮できる作業は自分でやりたい。やっていても苦じゃない。
対して、「時間はかかるし苦痛、しかも成長できない。」そんな作業こそが AI に任せるべき作業だということです。

ユーザーのモチベーションを下げる単調な作業を AI に任せ、成長できる作業をどんどん実務者に回すといった好循環を生み出すことがAI浸透の大事なポイントとなりそうですね。

最後に

本セッションでは、Gemini が動画を分析してユーザーの要望に合ったシーンをピンポイントで見つけ出す革新的な動画検索を拝見することができました。
何を AI に任せるか、どのような作業なら AI が社内に浸透しやすいかという観点でも非常に勉強になりました。

また今回、本プロジェクトには私も携わらせていただきました。
非常に先進的であり、今後も大きく発展しそうな Gemini による動画解析という分野に身を投じることができて大変光栄でした。
今後もより高い精度を出すための検証を行っていきたいですね。