この記事は2025 Japan AWS Ambassadorであるクラウドインテグレーション事業部 MSP開発セクション高橋 修一さんの監修の下、執筆をしています。
こんにちは!DX開発事業部のモダンエンジニアリングセクションビジネスソリューショングループ配属の戸塚晴菜です。
はじめに
Amazon Web Services (AWS) は、多くのサービスを提供しており、その知識量は多岐に渡ります。
特にこれからAWSを学ぶ方や、新しいサービスを活用したい開発者にとって、「どこから手をつけていいかわからない」「調べるのに時間がかかる」という課題は常に存在すると思います。
この課題を解決してくれるのが、AWSの専門知識を凝縮した生成AIアシスタント 「Amazon Q Developer」 です。
今回は、AWSの学習や開発の効率を高めてくれるAmazon Q Developerについて、基本的な機能から、私たちが具体的にどう活用できるのかをわかりやすくまとめてご紹介します。
Amazon Q Developerとは?
Amazon Q Developerは、AWSが提供する生成AIを搭載した開発者向けのアシスタントサービスです。
自然言語で質問や指示をすると、AWSのベストプラクティスに基づいた回答をくれたり、コードを書いてくれたり、エラーの解決策を提案してくれたりします。
Amazon Qには、大きく分けて2つ存在し、開発者向けの「Amazon Q Developer」と、ビジネスユーザー向けの「Amazon Q Business」があります。今回は、特に開発者にフォーカスした「Amazon Q Developer」について深掘りしていきます。

Amazon Q Developerの主なメリット
Amazon Q Developerを導入することで、開発者は以下のようなメリットがあります。
開発スピードの向上
「〇〇機能のPythonコードを書いて」といった指示でコードを生成してくれるため、開発時間を大幅に短縮できます。
迅速なトラブルシューティング
エラーメッセージを貼り付けて「このエラーの原因と解決策を教えて」と聞けば、具体的な解決策を提示してくれます。もう一人でエラーと格闘する必要はありません。
AWS知識の効率的な習得
「VPCとサブネットの違いは?」といった基本的な質問から、「EC2インスタンスを最もコスト効率よく運用する方法は?」といった専門的な質問まで、対話形式で学べます。
セキュリティの強化
AWSのセキュリティベストプラクティスに基づいて、IAMポリシーの作成や設定の脆弱性チェックなどをサポートしてくれます。
料金体系
Amazon Q Developerには、気軽に試せる無料利用枠と、より高度な機能が使えるProプランの2つが用意されています。
| プラン | 料金 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 無料利用枠 | 無料 | IDEでのチャット、コード生成、デバッグ支援など、個人で利用するには十分な機能が揃っています。 |
| Proプラン | $19/ユーザー/月 | 無料枠の機能に加えて、より高度なコードスキャン、チームでの利用に便利な管理機能、Javaのバージョンアップグレード支援などが利用できます。 |
※2025年10月時点での情報です。最新の情報はAWS公式の料金ページをご確認ください。
導入事例・ユースケース
Amazon Q Developerは、開発のあらゆる場面で活躍します。
コーディング支援
VS Codeなどの使い慣れたIDEに拡張機能として導入し、チャットで対話しながらリアルタイムでコードの提案を受けられます。
AWSコンソールの操作補助
AWSマネジメントコンソール上でもAmazon Q Developerが利用でき、「S3バケットを作成したい」と話しかけるだけで、必要な手順をガイドしてくれます。
インフラ構成の相談
「冗長性のあるウェブサイトの構成案を教えて」といった質問に対して、CloudFormationテンプレートなどの具体的なコードと共に構成案を提案してくれます。
ドキュメント作成
既存のコードを読み込ませて、その仕様や機能に関するドキュメントの草案を自動生成させることも可能です。
ハンズオンでAmazon Q Developerを体験
今回はAWSマネジメントコンソール上のチャット機能を使ってAmazon Q Developerを体験します。
このハンズオンでは、AWS初心者の方でも安心して進められるように、作業環境の準備から、実際にAmazon Q Developerに質問し、片付けまでを解説します。
ステップ1:IAMユーザーの作成
このハンズオンを始める前に、まず専用の新しいユーザーを作成します。AWSでは、セキュリティ上の理由から、最も強い権限を持つ最初のユーザー(ルートユーザー)で普段の作業を行うことは危険なため非推奨とされています。そのため、安全に作業するためのユーザーを作る必要があります。
(ルートユーザーではなく)管理者用IAMユーザーでAWSコンソールにサインインしてください。
画面上部の検索バーにIAMと入力し、「IAM」サービスをクリックします。

左メニューから「ユーザー」を選び、「ユーザーを作成」をクリックします。
ステップ2:ユーザー詳細の指定
ユーザー名: q-handson-user など、分かりやすい名前を入力します。
「AWS マネジメントコンソールへのユーザーアクセスを提供する」にチェックを入れます。
「IAM ユーザーを作成します」を選択し、カスタムパスワードを設定します(忘れないようにメモしてください)。
「次へ」をクリックします。
「ポリシーを直接アタッチする」を選択します。
検索ボックスに AmazonQDeveloperAccess と入力し、表示されたポリシーにチェックを入れます。これがAmazon Q Developerを利用するための権限です。
「次へ」をクリックします。

設定内容を確認し、「ユーザーを作成」ボタンをクリックします。
成功画面が表示されたら、「コンソールサインイン URL」をコピーしてメモ帳などに必ず保存してください。このURLから新しいユーザーでサインインします。
ステップ3:作成したユーザーでAmazon Q Developerに質問する
一度現在のユーザーからサインアウトします。
先ほどコピーした「コンソールサインイン URL」にアクセスし、作成したIAMユーザー名とパスワードでサインインします。
サインイン後、画面の右側にある「Q」のアイコンをクリックします。

右側にチャットパネルが開いたら準備完了です。早速、AWSのサービスについて質問してみましょう。
質問例:サービスの選び方を聞きます。
会社のウェブサイトを新しく作りたいです。どのAWSサービスを使うのが一般的ですか?
【備考】他にもこんな質問ができます!
今回のハンズオンでは基本的な質問を試しましたが、Amazon Q Developerは、さらに幅広い質問に対応できます。慣れてきたら、ぜひ以下のような質問も試してみてください。
具体的な操作方法について
「静的ウェブサイトホスティングを有効にしたS3バケットを作成する手順を教えて」
やりたいことが決まっている時に、具体的な手順をステップバイステップで教えてくれます。
エラーの解決策について
「EC2からS3にアクセスしようとすると Access Denied エラーが出ます。原因として考えられることは何ですか?」
エラーメッセージを貼り付けたり、状況を説明したりすることで、解決策のヒントを得られます。
ベストプラクティスについて
「EC2インスタンスの料金を節約するための、基本的な方法を3つ教えて」
コスト削減やセキュリティ強化など、ベストプラクティスを学ぶのに最適です。
AWSアカウント上のリソースを調査させる
| 質問例 | Amazon Q Developerからの返答例 |
|---|---|
| S3バケットの一覧を表示してください。 | 現在、リージョンap-northeast-1には以下のS3バケットがあります: my-website-bucket-2025 (作成日: YYYY/MM/DD)、log-storage-bucket (作成日: YYYY/MM/DD) など。 |
| このアカウントで今月の請求額が高いサービスは何ですか? | 現時点での今月の請求額が高い上位3サービスは以下の通りです: 1. Amazon EC2: XX.XX、2. Amazon RDS: YY.YY、3. AWS Lambda: ZZ.ZZ。 |
| よく利用されているIAMユーザー、利用されていないIAMユーザーを教えてください。 | 過去90日間で最も利用頻度が高いユーザーは test-dev (最終アクセス: 2025/10/20) です。利用されていないユーザーとしては、最終アクセスが180日以上前の legacy-admin がいます。 |
| 使用されていないEBSボリュームはありますか? | はい、現在in-use状態ではないEBSボリュームが2つあります: vol-xxxxxxxxxxxxxxxxx (サイズ: 50 GiB)、vol-yyyyyyyyyyyyyyyyy (サイズ: 100 GiB) です。これらは料金が発生し続けているため、不要であれば削除を検討してください。 |
このように、自分が今知りたいこと、困っていることをどんどん質問してみてください!
ステップ4:リソースの削除
ハンズオンが終わったら、作成した専用ユーザーを削除してクリーンな状態に戻します。これを習慣化することで、意図しない料金の発生を防げます。
IAMユーザーを削除するために、再度管理者用IAMユーザーでサインインします。
IAMのサービス画面を開き、左メニューの「ユーザー」をクリックします。
削除したいユーザー(例: q-handson-user)にチェックを入れます。
画面右上の「削除」ボタンをクリックします。
確認画面でユーザー名を入力し、再度「削除」をクリックすれば完了です。
Amazon Q DeveloperとGitHub Copilotの違いは?
AIコーディング支援ツールとして有名なものに「GitHub Copilot」があります。では、Amazon Q Developerとの違いは何でしょうか?
一番の大きな違いは、AWSへの特化度です。
GitHub Copilot
幅広いプログラミング言語や開発環境に対応する汎用的なAIアシスタントです。純粋なコード補完や生成能力に優れています。
Amazon Q Developer
AWSのサービス、API、ベストプラクティスに関する膨大な知識を学習しており、AWS環境での開発に特化しています。IAMポリシーの生成やAWSリソースに関する質問への回答など、AWSならではのタスクを得意とします。
どちらが良いというわけではなく、プロジェクトの特性によって使い分けるのが良さそうです。AWSをメインで利用する開発であれば、Amazon Q Developerは非常に強力な味方になってくれると思います。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました。 Amazon Q Developerは、より本質的な課題解決に集中できるようサポートしてくれる、優秀なアシスタントだと実感しました。
特にAWSを学び始めたばかりの私にとって、非常に頼れる存在です。 ぜひ、Amazon Q Developerを試してみてください!