この記事でわかること
- NerdGraph APIを使ったPublic Dashboard機能の有効化手順
- パスワードや有効期限を設定してダッシュボードを安全に外部公開する方法
- Public Dashboardをリロードした時に、実際にどれくらいのaCCUが消費されるか
- コストを最適化するヒント
New Relicのダッシュボードを、New Relicのアカウントを持っていない社外のパートナーや顧客と共有したいと思ったことはありませんか?
そんな時に便利なのが「Public Dashboard(パブリックダッシュボード)」機能です。
しかし「便利だから」と無計画に公開すると、思わぬコスト(aCCU)が発生する可能性もあります。
この記事では、New RelicのPublic Dashboardを安全かつ効率的に公開するまでの手順と、コスト最適化のヒントを、実際のスクリーンショットを交えて解説します。
New RelicのPublic Dashboardとは?
Public Dashboardは、New Relicのダッシュボードを、ログイン不要で閲覧できる公開URL(https://share.newrelic.com/…)を発行する機能です。
公開されたNew Relicダッシュボードの例 ↓

主な特徴は以下の通りです。
- ログイン不要: New Relicアカウントがない人でも閲覧できます。
- パスワード保護: 公開リンクにパスワードを設定できるため、意図しない相手からのアクセスを防げます。
- 有効期限: リンクの有効期限を設定できるため、イベント期間中だけの限定公開なども可能です。
(参考:New Relic公式ドキュメント – ダッシュボードとグラフを公開する)
Public Dashboard公開までの3ステップ
公開までの大まかな流れは以下の3ステップです。
- User Keyの発行: APIを操作するための「User Key」を取得します。
- NerdGraph APIでの有効化: API経由で、アカウントのPublic Dashboard機能を有効化します。
- ダッシュボードの公開設定: 共有したいダッシュボードで公開設定を行います。
順番に見ていきましょう。
ステップ1:User Keyの発行
まず、NerdGraph APIを操作するための「User Key」を発行します。
- New Relic画面右上のユーザーアイコンから
Administrationを選択します。 - 左メニューの
API keysをクリックします。 Create an API keyボタンを押します。New Relic APIキー作成画面↓

- 以下の項目を設定します。
- Account: キーを発行するアカウントを選択します。
- Key type:
Userを選択します。 - Name: わかりやすい名前(例:
my-user-key)を付けます。
Create a keyをクリックします。
重要:
2024年9月以降、作成されたAPIキー(
NRAK-で始まる文字列)は一度しか表示されません。必ずコピーして、安全な場所に(パスワードマネージャーなどに)保管してください。
補足:UIでは作成時以外は値を再表示できない仕様。NerdGraphなら既存/新規キーの取得が可能
(参考:UI から API Key をコピーができなくなります)
ステップ2:NerdGraph APIでのPublic Dashboard有効化
次に、発行したUser Keyを使って、NerdGraph API経由でPublic Dashboard機能を有効化します。
All capabilities > Apps > NerdGraph API explorer(one.newrelic.com/nerdgraph) を開いてください。
(参考:NerdGraphの紹介)
現状の確認 (liveUrlCreationAllowedのチェック)
まず、現在の設定がどうなっているかを確認します。以下のGraphQLクエリを入力し、Submit ボタン(再生ボタン)を押します。
YOUR_ACCOUNT_ID の部分は、ご自身のNew RelicアカウントIDに置き換えてください。
{ actor { dashboard { liveUrlCreationPolicies(filter: {accountIds: [YOUR_ACCOUNT_ID]}) { liveUrlCreationPolicies { accountId liveUrlCreationAllowed } } } } }実行結果 ↓

デフォルトでは”liveUrlCreationAllowed”: false(許可されていない)という結果が返ってきます。
有効化の実行
次に、設定を true に変更(有効化)します。
以下のMutation(更新クエリ)を入力して実行します。
YOUR_ACCOUNT_ID の部分は、先ほどと同じくご自身のアカウントIDに置き換えてください。
mutation { dashboardUpdateLiveUrlCreationPolicies( policies: {accountIds: [YOUR_ACCOUNT_ID], liveUrlCreationAllowed: true} ) { liveUrlCreationPolicies { accountId liveUrlCreationAllowed } } }実行結果 ↓

実行後、右側のレスポンスで ”liveUrlCreationAllowed”: true に変わっていれば成功です。
ステップ3:ダッシュボードの公開設定
APIでの有効化が完了したら、あとはダッシュボード画面から簡単に公開設定ができます。
- 公開したいダッシュボードを開きます。
- 画面右上の「Share」ボタンをクリックし、「Share dashboard」を選択します。

- 「Share dashboard」ダイアログが表示されます。

- Protect with a password: オン(推奨)にします。
- Link expiration: リンクの有効期限を選択します(デフォルトは30日)。
Save changesをクリックします。- 公開リンク(Public Link)とパスワードが生成されます。
生成された公開リンクとパスワード↓

最重要:
ここで表示されるパスワードは再表示できません。忘れたらResetで再発行可。「Copy password」ボタンを押して、必ず公開リンクと一緒にメモしてください。
これで、https://share.newrelic.com/… から始まるURLにアクセスし、パスワードを入力すれば、誰でもダッシュボードを閲覧できるようになります。
Public DashboardのコストとaCCU消費
Public Dashboardは非常に便利ですが、コスト面で大きな注意点があります。
この機能を利用すると、New Relicの課金単位である「Advanced CCU(Compute Capacity Units)」が消費されます。
公式ドキュメントによると、CCUが消費されるタイミングは以下の通りです。
- 公開ダッシュボードがロードされた時
- 閲覧者がタイムピッカー(期間)を変更した時
- 設定された自動更新が実行された時
(参考:New Relic公式ドキュメント – CCU消費)
つまり、Public Dashboardにアクセスがあるたびに、ダッシュボード内の全クエリ(NRQL)が実行され、その処理負荷に応じてaCCUが消費される仕組みです。
もしパスワードなしで公開し、クローラーやボットなどに頻繁にアクセスされると、意図せずCCUが大量に消費され、高額な請求につながるリスクがあります。
検証:Public DashboardのaCCU消費量
では、実際にどれくらいのaCCUが消費されるのでしょうか?簡単な検証をしてみました。
- 検証対象ダッシュボード: Core Web Vitals(FCP, LCP, INP, CLSなど)や、インフラリソース状況を表示する、いくつかのウィジェットを配置したダッシュボード。(※ 記事冒頭の画像参照)
- 検証操作: このダッシュボードの公開ページを、手動で30回ほどリロードしてみました。
その結果がこちらです↓

New Relicの Administration > Compute Management 画面です。グラフでCCUの消費量を確認することができます。Usage by capabilities のドーナツチャートを見ると、Public Dashboards が 0.13 aCCU を消費したことが記録されていました。
30回のリロードで 0.13 aCCU ということは、1回のリロードあたり約 0.0043 aCCU(0.13 ÷ 30)を消費した計算になります。
この数値自体は非常に小さいものですが、前のセクションで警告した通り、これはあくまで1ユーザーの検証です。
もしパスワードをかけ忘れたダッシュボードが、クローラーや外部の何千人ものユーザーによって頻繁にアクセスされた場合、この消費量は積み重なって大きなコストになる可能性があります。
そのリスクを避けるためにも、パスワード設定を行うことが推奨されます。
Public Dashboardのコストを最適化するヒント
安心してPublic Dashboardを使うために、以下のコスト最適化策を推奨します。
1. まずは「見える化」:Compute Managementの活用
Administration → Compute Management で aCCU の消費状況を可視化しましょう。どのダッシュボード/クエリ/コンポーネントが計算コストを生んでいるか把握できます(Advanced/Core Computeプランで利用可)。
※Public Dashboardは「ページ読み込み」「タイムピッカー変更」「自動更新(Refresh)」のたびに、可視化の裏でクエリが実行され、その負荷に応じて aCCU を消費します。
2. 自動更新の頻度を下げる/止める
ダッシュボードは自動更新の設定が可能です。
Public公開時、リアルタイムの方法が必須でなければ各チャートの Refresh rate を見直しましょう(遅くする/オフにする)。
更新頻度を抑えるだけで aCCU を確実に節約できます。
3. アクセス制御を徹底
- Protect with a password をオン。
- Link expiration で公開期間を限定。
- 不要になったら
Share→Manage public linkから速やかに停止。 - パスワードは再表示できませんが、忘れた場合は Reset password で再発行可能です。
まとめ
New RelicのPublic Dashboardは、外部連携に非常に強力な機能です。しかし、有効化にはNerdGraph APIの操作が必要であり、公開後のアクセスによってaCCU(コスト)が消費されるという重要な側面があります。
設定手順を正しく踏み、そして何より「必ずパスワードで保護する」「クエリを最適化する」という2点を徹底することで、コストを管理しながら安全にこの便利な機能を活用できます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事が、あなたのNew Relic活用の一助となれば幸いです。