この記事のポイント

  • サンフランシスコで開催されたGitHub Universeのリキャップについて書いてあるよ
  • 2026年に日本におけるデータレジデンシーが発表されたよ
  • Agent HQを含め、アップデートがすごいよ

はじめに

この記事は2025年10月28日から29日にかけて開催されたGitHub UniverseのRecapイベント
GitHub Universe · Recapのレポートです。

OpeningとKeynoteの内容が含まれています。
なお、本記事には英語話者からの講演内容も含まれます。聞き間違いや単語の和訳ミスなどがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

タイムテーブル

Keynoteを理解するために必要な知識をおさらい

Keynoteで登場したサービス名は以下のとおりです。

  • GitHub: 世界中の開発者が利用する開発者プラットフォーム
  • GitHub Copilot: GitHubが提供するコーディングエージェントです。さまざまなAIモデルが利用できます。recapでは何度も紹介がありました
  • Visual Studio Code(以下、VSCode): MicrosoftがOSSで提供するAI エージェントレディなIDEです。同社の提供するVisual Studioとは別物です
  • Agent HQ: AI Agent群をGitHub上でまとめて扱えるGitHubの新サービス、 公式の紹介ブログ

オープニング

GitHub Japan合同会社代表の角田賢治氏によるオープニングトークからスタートしました。

GitHub 日本の成長が過去最高を記録!450万人突破と2026年の重大発表

10月にサンフランシスコで行われたGitHub Universeは大変な盛り上がりを見せました。
GitHubのミッションは、「開発者のコラボレーションによって人類の進化を加速する」ことです。このミッションを支えるコミュニティは、驚異的な速さで成長を続けています。

2023年12月のGitHub Universeで発表された最新データによると、現在GitHubを利用する開発者の数は、世界で1億8000万人を突破しました。これは、過去1年で見るとこれまでにないスピードで増加しており、毎秒1人以上の開発者が新しくGitHubを使い始めている計算になります。

そして、日本市場の躍進が特に注目されています。

  • 現在、日本では450万人を超える開発者がGitHubを利用しています。
  • 前年比で28.6%増を記録し、これはこれまでで最も高い成長率となりました。

この結果、日本は世界のGitHub開発者コミュニティにおいて、世界で6番目の大きさを誇るまでになりました。

AIがソフトウェア開発の風景を確実に変えている中で、多くの方々がGitHubを信頼して利用していただいていることに感謝の念を覚えるとともに、その責任の重さを感じている、と角田氏は述べています。

2026年、日本の主要産業の変革を支えるデータレジデンス

日本の開発者の皆様がこれからもさらに大きなイノベーションを起こすことへの期待とともに、日本に関する重要な発表がありました。

それは、GitHub Enterprise Cloud Data Residence(データレジデンス)が2026年に日本で利用可能になるということです。

データレジデンスは、コードなどの重要な資産を国内に維持することを可能にします。これにより、企業がクラウド導入を進める上で必要な信頼とコンプライアンスが確保されます。

この機能が日本で利用可能になることは日本の主要産業がトランスフォーメーションを加速させ、グローバルな競争力を獲得する起点となると考えられています。

高まるセキュリティとコンプライアンスへのコミットメント

GitHubは、お客様のセキュリティガバナンスとコンプライアンスを強化する取り組みを積極的に進めています。

  • 米国での取り組み: GitHubは、連邦政府機関の厳密なセキュリティおよびコンプライアンスの要件を満たす「FedRAMP」(連邦リスク承認管理プログラム)の取得を現在積極的に進めており、これはグローバルスタンダードの準拠の基盤となります。
  • 日本での取り組み: 日本においては、「ISMAP」(政府情報システムのための評価制度、セキュリティ評価制度)の取得を目指しています。

これらの取り組みは、ユーザーにさらなる信頼を提供するためのものです。詳しい発表は2026年を待つこととなります。

Agent HQによるGitHub開発の新しい時代

Keynoteの発表者であるGitHubのDirector, International Developer RelationsのKaran氏は、GitHubの成長と、AIを開発ワークフローに統合することで、開発者のペインポイントを解決し、生産性の新たな時代を築くというビジョンを提示しました。

1. GitHubの現状と課題

GitHubは著しい成長を遂げています。2020年第2四半期には約4,900万人の開発者がプラットフォーム上にいましたが、現在のUniverse時点では1億8,000万人以上に増加しています。GitHubは毎秒1人の開発者を新たに追加するペースで成長しています。

しかし、イノベーションが進むにつれて開発作業は複雑化しています。開発者は、コーディングのためにIDEに、スクリプト実行のためにターミナルに、AIのヘルプを得るためにWebチャットに、といった具合に、多くの異なる場所を行き来する必要があり、AIの導入がかえって作業を複雑にしていると感じることもあります。

GitHubは、開発者がより良い方法で構築するためのツールと構築方法を決定する選択肢を提供し続けています。

2. 開発者を支援する4つの柱

GitHubは、開発者の働き方を支援するため、特に次の4点に焦点を当てています。

  1. コーディングエージェント
  2. エージェントがAIエディターにネイティブに組み込まれること。
  3. コードレビューの支援
  4. AIが組み込まれたワークフローで迅速に動くための自信とガバナンス(統制)の提供

3. Agent HQとGitHub Copilotの進化

Agent HQのビジョンは、GitHubを開発者だけでなく、開発者とエージェントが協力して働く場にすることです。

  • Copilotの進化: GitHub Copilotは、2021年初期のオートコンプリート機能の域をはるかに超え、完全に機能するコーディングエージェントとなりました。Copilotは、より深いコンテキストを持ち、推論能力を備え、開発ワークフロー全体で異なるツールを使った多数のタスクを実行できます。
  • エージェントの統合: エージェントを単純に後付けするだけでは生産性向上は見込めません。
    GitHubは、エージェントを、Issueやプルリクエストといった既存のGitHubワークフローに非同期的に組み込むことで、開発者の生産性を向上させています。

※開発ワークフロー全体で異なるツール具体的には以下のとおりです。

  • Copilot CLI
  • VS Code(後述)
  • GitHub Mobile

Mission Control (ミッションコントロール)

  • Mission Controlは、エージェントの作業を一元管理するための単一のビューです。
  • Mission Controlでは、プロジェクトやリポジトリを横断して全てのエージェントセッションを表示できます。

新たなタスクの割り当て、進捗の追跡、生成されたコードのレビュー、新しいセッションの開始が可能です。

  • 作業の指示(Steering): 開発者は、エージェントに対して「この部分を変更してほしい」といった指示(Steering)を自然な流れの中で与えることができます。
  • プラットフォーム: この機能は、Web、IDE、CLI、およびモバイルデバイスを含む、開発者が慣れているあらゆるフローで動作します。

エージェントの実行環境とカスタムエージェント

  • 実行環境: Copilotエージェントは、GitHub Actionsを使用して独自の環境で実行されます。これにより、ベーステスト、リンティング、ビルド、スキャンを実行し、変更が正しく機能していることを確認できます。
  • セルフホストランナー: コーディングエージェントは、セルフホストされたAction Runnerでのサポートも発表されており、ユーザー自身のインフラストラクチャ上での実行が可能です。
  • コンテキストの連携: Copilotは、MCPサーバーとGitHub MCPレジストリを通じて、FigmaのデザインやSentryのエラーログなど、ワークフローで使用する様々なツールやサービスに接続し、コンテキストを得ることができます。
  • カスタムエージェント: 開発者は、特定のシナリオ(ドキュメント作成、テスト駆動開発など)に合わせてCopilotを調整するためにカスタムエージェントを作成できます。カスタムエージェントは、リポジトリや組織全体で作成および共有が可能です。

生産性向上の実績

GitHubは、コーディングエージェントを自社の開発に使用しており、その効果を実証しています。

  • GitHub内部での貢献度: GitHub Copilotは、GitHub自身のコードベース(複雑なモノレポであるGitHub/GitHub)において、マージされたプルリクエストの最大の貢献者となっています。
  • 高速な開発: シークレットスキャンニングチームは、コーディングエージェントの助けを借りて、わずか1ヶ月で90以上の新しいプロバイダーのためのシークレットバリデーターを構築し、リリースしました。この作業は主にサマーインターン(日本で言うところの入社前の一時的な社員)によって行われました。
  • 全体的な影響: 過去5ヶ月間で、Copilotによって作成され、マージされたプルリクエストは700万件以上に上ります。

4. AIネイティブエディターとコードレビューの強化

VS Codeの統合

VS CodeはGitHub CopilotのフラッグシップAIネイティブエディターです。GitHubは、コミュニティと共にVS Codeの改善を進めており、透明性を高めるため、プロンプトやテレメトリーデータをオープンソースプロジェクト内で公開しています。

  • 機能強化: 過去6ヶ月間で、VS Code内のCopilotに対して200以上の改善が行われました。
  • プランモード: 新しい機能として「プランモード」が導入されました。これは、開発者が具体的な計画を立て、それをCopilotコーディングエージェントに渡して実装させる機能です。
  • モデル選択の自由: Copilotは、Claude 3.5、GPT-5、Codexなどの最新モデルをサポートしています。開発者は、Hugging FaceやAzure AIなどから独自のモデルを持ち込むことも可能であり、また、最適なモデルをCopilotが自動で選択するオートモードも導入されています。

エージェントによるコードレビュー

2025年のOctoverseレポートによると、昨年マージされたプルリクエストは4,300万件以上あり、開発者が扱うレビューの量は膨大です。

  • Copilot Code Review: Copilotによるコードレビューは、LLMベースの検出と、コードスキャン、シークレットスキャンといったセキュリティ機能を統合しています。これにより、単純なタイプミスだけでなく、より独創的な(novel)問題を発見できるようになります。

  • レビューの質と改善: Copilotは、PRレビューにおいて推論とセマンティック解析を実行し(例:代替テキスト(alt text)がより記述的であるべきと示唆)、その提案を新しいエージェントセッションとして実装するよう指示できます。

5. Agent HQによるエコシステムの拡大とガバナンス

Agent HQのエコシステム

Agent HQのビジョンは、Copilotだけでなく、他の全てのコーディングエージェントをGitHubに歓迎することです。

  • パートナーシップ: 今後、AnthropicのClaudeやOpenAIのCodexだけでなく、Google CognitionやxAIなどのエージェントもAgent HQを通じて利用可能になる予定です。
  • 単一管理ポイント: Agent HQは、ウェブ、IDE、CLI、モバイル全体でこれらのエージェントの設定を開始、保護、管理するための単一の司令塔として機能します。

エンタープライズ向けのガバナンスと制御

企業がCopilotを導入する際の自信を確保するため、強力なガバナンス機能が提供されます。

  • Copilot Metrics Dashboard: 管理者やガバナンスチーム向けに、Copilotの使用状況、エージェントやモデルの採用状況、ROIを追跡できる新しいダッシュボード(パブリックプレビュー)が提供されます。
  • AI Controls: エンタープライズ管理者インターフェースを通じて、エージェントがアクセスできるコードベースの制限、インストールされているエージェントの確認、エージェントのアクティビティ監査など、きめ細かな制御を単一の場所で提供します。
  • エージェントのアイデンティティ: エージェントはGitHub上で完全なリアルなアイデンティティを持つため、開発者と同様にアクセス権限を付与したり、Issueを割り当てたり、コメントでメンションしたりすることが可能です。

まとめ

GitHubは、開発者とエージェントが協力し、共に構築する新しいコラボレーションの時代の始まりに立っています。Agent HQは、開発者の実際の辛みを解決し、チームや企業が次世代のソフトウェアを構築・提供するための道を切り開くことを目指しています。

この新しい時代は、まるで大規模な建設プロジェクトを指揮するオーケストラの指揮者のようなものです。
開発者は、エージェントを、Mission Controlを通じて指揮し、特定のタスクの実行を委ね、必要に応じて指導します。
これにより、開発者は、細かな技術的な作業に煩わされることなく、プロジェクト全体の設計と革新という、より創造的で価値の高い作業に集中できるようになります。

その他、参考になるリソースなど

感想

個人的にはAgentHQやAgent Sessionsが良いと思いました。
OpenAI CodexがすでにVSCodeで利用できるようになっていると思いますが、GitHub Copilotのアカウントを持っているだけで利用できるのはシンプルにすごいです。また、CodeQualityもとても興味深いサービスなのでもっと触っていきたいと思いました。

GitHubは創設2008年から17年、あと3年で20周年になるのでつぎのアップデートにも期待したいです。