こんにちは、デザイン事業部 ディレクターの金沢です。
以前メタファシリテーションの基本について記事を記載しましたが、今回は実践編についてレポートしようと思います。

前回の記事「「お風呂の温度はいつも何度?」は事実質問か?」でメタファシリテーションとは、は記載しているので細かい説明は省きますが、簡単に言うと「事実質問を積み上げていき当事者自身が問題や解決方法にたどり着けるよう導く会話法」です。
1on1や面談で、相手の状況を正確に把握したい時に有用な会話法となります。

How to メタファシリテーション

今回は実践編ということで、どの様な対話をすればメタファシリテーションになるのか具体的にみていきたいと思います。
簡単にまとめると以下のようになります。

事実質問のみを繰り返す

  • いつ
  • どこ
  • 誰と

そのほか気をつけるべき点は以下になります。
以下の質問は例外を除き使用しない

  • なぜ
  • どうして

事実を聞く質問は尋問のようになりかねないので相手に合った配慮が必要
「いつ」「どこ」「誰と」「何」を使っている質問でありながら、人の習慣について聞く質問は事実質問ではなくなっているので注意
例えば、「普段会社に出社する時は何時ぐらいに会社につきますか?」は「普段」というワードで一般化しているので事実質問としてはあまりよろしくありません。

なぜ「なぜ?」がダメなのか

「なんで〇〇なのですか?」という質問は日常に溢れていると思います。
メタファシリテーションの文脈で考えると「なぜ?」と本人に理由や原因を聞く質問は好ましくありません。
なぜなら、相手の意見には思い込みが混じっており、相手が口にした原因を解決すれば問題は解消!とはならないことがほとんどだからです。

例えば友人と会う約束をしていて、その人が遅刻してきたとします。
「何で遅刻したの?」と聞くとその人は「電車が遅延して遅れた」と言ったとします。
後ほど電車の遅延情報を確認しても遅延した情報などはどこにも記載されておらず、、、という状況でした。

上記の例は両方の立場を経験したことがある人が多いのではないでしょうか。
つまり簡単に言うと遅刻してきた人は「電車が遅延した」とそれらしき嘘をついているのです。
「なぜ?」と聞かれた時に人はそれらしき理由や嘘や思い込みを言ってしまいがちです。実体験として理解できる部分があるのではないでしょうか?また、自分に都合が悪い時は尚更それらしき理由を言ってしまいがちです。

このように「なぜ?」と理由や原因をその人本人に聞いたとしても本当の原因が語られることは少ないと言うことは自明です。これらを踏まえると、やはり事実質問を繰り返し、事実を積み上げていくことの重要性が理解できるかと思います。

【実践レポート】身近な『飲み物』をテーマにメタファシリテーションを試してみた

私はメタファシリテーション初心者のため最初にテーマを決めて、それについて事前に10個以上質問を考えていきました。
テーマは「飲み物」に設定しました。
飲み物をきっかけに相手について知っていこうと思います。

以下が準備として事前に考えた質問10個です。

  1. 直近いつ飲み物を飲みましたか?
  2. 何飲まれているんですか?
  3. ここ1週間で水筒は使用されました?
  4. もし持っていたら水筒の色は何色ですか?
  5. 今飲んでいる飲み物以外に今日、他に飲み物は飲まれましたか?
  6. なんの飲み物を飲みましたか?
  7. コーヒーは飲まれますか?
  8. コーヒーや紅茶を飲む時にミルクや砂糖は入れますか?
  9. ミルクはいくつ入れますか?
  10. 砂糖はいくつ入れますか?
  11. 今使用されている、コップ、または水筒は何色もしくは、何柄のコップですか
  12. 今日はお水は飲まれましたか?
  13. 浄水を飲みましたか?またはペットボトル飲料水を飲みましたか?
  14. 最近で美味しかった飲み物を教えてください!

落ち着いて質問を考えているはずなのに、すでに事実質問か危うい質問がいくつかあります。
私もじっくり考えてみて気づいたのですが、どの質問が事実質問として危ういかどうか、皆さんはすでにお気づきでしょうか?
事前に考えた質問の中で怪しそうな質問についてピックアップし、なぜ事実質問として微妙なのか見ていきます。

7. コーヒーは飲まれますか?
ここには記載されていませんが、つまりこの質問が聞きたいのは「(普段)コーヒーは飲まれますか?」になります。「普段」「いつも」など一般化した質問は事実ではなく回答者の感覚や主観によるので事実質問としては良くないと言われています。
上記を踏まえると「8. コーヒーや紅茶を飲む時にミルクや砂糖は入れますか?」も隠れた「普段」があるのであまり良い質問ではありません。

9. ミルクはいくつ入れますか?
10. 砂糖はいくつ入れますか?
これらも、あまり事実質問としてはよくなさそうです。
ミルクといっても市販のコーヒーフレッシュ(コーヒーフレッシュは関西圏での呼び名であるそうですが、カフェでコーヒーや紅茶を頼んだ時に出てくる小さいプラスチック製のカップに入って蓋されているアレです。)を指しているのか、もしくは注ぎ口がついた小さな容器に入っているのか、補足が必要かもしれません。砂糖も角砂糖なのかスティック型の袋に入っている砂糖なのか、想定できるものの揺れがあるので好ましくありません。

これらの事前質問を頭に置いた上で実践してみた結果が以下になります。
テーマの飲み物から話を10分ほど展開していきました。簡単に質問と回答内容を記載していきます。

質問と回答

No. 質問 回答
1 今とか直近いつ飲み物飲んだかとかってありますかね? 水の大きいボトルを仕事中に置いて作業していて、最近だと水道水です。
2 そのボトルってなんか特徴ありますか?例えばこう水色とかお柄が入ってるとか。 透明のプラスチック製で、色はついていませんが、200mlなどの目盛りがついています。
3 今日、水以外に何か飲んだりしましたか? 朝にヤクルトを飲みました。花粉症で喉がしんどいので、少しでも足しになればと思って最近飲んでいます。
4 ヤクルトって、液体の色って何色でしたっけ? 定番の小さいサイズの肌色のものです。
5 朝これ何本飲むんですか? 1本です。
6 いつぐらいから朝飲み始めてるんですか? 特に決まってはないんですけど、なんとなく冬に買いやすいです。体調を崩しがちだから、12月くらいからスーパーで見かけて安い時に買おうかなという感じです。
7 朝ご飯にそのヤクルトと、あと何か合わせて飲んだりとかするんですか? ヤクルトはサイズが小さいので、これに水とか牛乳とか何かしら飲み物は追加することが多いです。
8 (ヤクルトと水分以外に)物として何か食べたりとかするんですか? 朝ご飯はおにぎりと、鮭などの塩気のある食べ物を食べることがあります。
9 (朝食は)社会人になってから結構この朝ご飯を食べ続けてるって感じなんですか? 毎回同じではなく、ご飯をよそって、物足りない場合は鮭を焼いたり目玉焼きを作ったりしています。
10 お昼ご飯は何を食べられたんですか? 近所のパン屋で買った、アップルパイとチーズパンを食べました。
11 この近所のパン屋さんって、直近でいつぐらい行ったんですか? 土曜日ですね。
12 土曜日にパン屋さん行った時って、その今さっき食べたアップルパイとかチーズのパンとか以外に他何か買われたんですか? クリームパンっぽいやつを買って、土曜日のおやつに食べました。
13 そのパン屋さんはチェーンみたいな感じではなく個人でやられているような感じなんですか? チェーンです。「リトルマーメイド」です。
14 (リトルマーメイドで)このパンよく買うみたいのあります? 明太フランスは好きでよく買ってるかな。

やはり回答によって質問を変化させていくので、事前に準備していた質問はあまりできませんでしたが、初めの方は考えていたものに則って質問できていたかと思います。
簡単に振り返っていきます。

よかった点

  • 回答してもらう時に「んー、なんだったっけ?」と言われている時があったのでその時は事実を思い出させることができていた。また、それを基準に今事実質問ができていたかを測ることができた点。
  • 回答を見ていると、具体的な数字や曜日、商品の名前をいっていただけていることが確認できたので具体的な事項について質問できていた。
  • 「なぜ?」質問をしないで最後まで会話を続けることができた。

改善できそうな点

  • 質問する際に「よく」「いつも」というワードを言いがちになっていました。言ったら自分で気づくのでこの時は練習だと思って、事実質問に言い換えていました。
  • この結果の表からは読み取れないですが、、事実質問をしようとして、頭をフル回転させているので、変な間が空いたり、質問を言い直したりなど普段の会話などであまり見ない質問中の調整が数回入った点。

実践してみた感想

実践してみて、事実質問だけで質問を構成する難しさを痛感しました。今回、回答をお願いした人は同僚の方だったので、信頼関係がある程度築けている方でした。そのため質問する気まずさや緊張はありませんでしたが、実際にメタファシリテーションが活きる場面、例えばユーザーインタビュー、エスノグラフィーなどの実地調査では関係を構築するところから始まります。このような事実を聞く質問はまるで刑事による尋問のようになってしまう懸念があります。

経験を積んで事実質問だけで質問やインタビューなどができるように日々意識して訓練していきたいです。

皆さんも少しでもメタファシリテーションの手法を用いて事実を確認する質問を始めてみませんか?