はじめに

この記事は2026年4月16日に開催されたPagerDuty Tech Dayのイベントレポートです。
掲載されている写真についてもPagerDuty Tech Dayにて撮影されたものです。
※PagerDuty On Tourでは撮影禁止のセッションもあったため、誤解防止のために記載

一部英語話者による説明が含まれます。翻訳を通しての紹介になりますのでニュアンスのズレなどが含まれる可能性があります。
あらかじめご了承ください。

セッションタイトル: AIエージェントが導くインシデント解決の最前線

本セッションを理解するために必要な知識をおさらい

本セッションの核心であるAIエージェントの活用を理解するために、PagerDutyが提唱する「自律型運用(Autonomic Operations)」の背景となる基礎知識を整理します。

  • PagerDuty Operations Cloud: 単なる通知ツールではなく、インシデントの検知、診断、対応、そして事後分析までを一つのプラットフォームで完結させるサービスです
  • インシデントライフサイクルの自動化:
    • 検知・ノイズ削減: 膨大なアラートから重要なインシデントを抽出
    • 診断(Triage): 何が起きているかをAIが判断
    • 修復(Remediation): Runbook(自動化手順書)を用いた復旧
    • 学習(Analysis): ポストインシデントレビュー(PIR)によるナレッジ化

これらのプロセスにおいて、これまでは人間が中心だった判断や作業を、AIが「エージェント」として自律的に肩代わりし始めるというのが、今回のセッションの大きなテーマです。

セッションの要約

本セッションでは、PagerDutyが提唱する「自律型運用(Autonomic Operations)」のビジョンと、それを具現化するAIエージェントの最新機能が公開されました。

  • 従来の「通知」から一歩踏み込み、AIがSlackやZoomなどの現場に入り込み、状況分析、アドバイス、そして記録を自動化する「共生型」の運用スタイルを提示
  • 決済システムの障害を題材に、SREエージェントがDatadog等のログを読み解き、根本原因を特定。さらにはスクライブエージェントがインシデント報告書を瞬時に自動作成する様子を実演
  • 2026年に向け、AIが人間に代わって一次対応を自律的に行う「バーチャルレスポンダー」へと進化し、エンジニアの心理的・作業的負荷を劇的に削減することを目指しています
  • AI活用のリスクを最小化するためのガードレールや、データのプライバシー保護に関する厳格なポリシーが、グローバル基準で実装されていることが強調

概要

PagerDuty Japanが開催した「Tech Day」のキーノートでは、PagerDuty本社から来日したApplied AI部門ディレクターのEveraldo Aguiar氏
そして日本のソリューションコンサルタント陣が登壇。AIがインシデント対応をどう変革し、エンジニアを苦境から解放するのか、その具体的なビジョンと最新機能が披露されました。

運用を「自律型」へと進化させるPagerDutyのビジョン

PagerDutyが掲げるのは、AIと自動化を組み合わせた「自律型運用(Autonomic Operations)」です。

  • 膨大なデータの活用: 2009年からのパイオニアとして蓄積された9,000億件以上のインシデントデータと120億件のイベントデータを製品開発に投入しています

  • 継続的な改善: インシデントの通知に留まらず、解決後の分析や学習を通じて再発防止までをワンストップで支援
  • AIと自動化: AIがインシデントを分析し、最適な対処を自動実行することで、最終的にはシステムが自律的に運用される世界

現在はその「過渡期」にあり、人間がAIアシスタントの支援を受けながら対応する「人間とAIのコラボレーション」が重要視されています。

実演!最新AIエージェントによるライブデモ

セッションの目玉として、架空の電子決済システム「OrbitPay」での障害発生を想定したデモンストレーションが行われました。

SREエージェント:状況分析とアドバイス

インシデントが発生すると、AIが瞬時に状況を分析。Datadogなどの監視ツールのデータを精査し、Slack上で「何が起きているか」「根本原因の推定」「次のアクション」を人間と対話するように提示します。

スクライブエージェント:記録と報告の自動化

ZOOM会議に「記録係」としてAIが参加し、発言内容をリアルタイムに近い形で文字起こしします。インシデント解決後は、ボタン一つで経緯やタイムラインをまとめた「ポストインシデントレビュー」を自動生成し、報告業務の負担を劇的に軽減します。

2026年に向けたロードマップと安全性

Everaldo氏からは、AIエージェントが「バーチャルレスポンダー」へと進化する展望が語られました。

  • 自律的な修復: AIが人間を呼び出す前に、過去の類似事例に基づき自律的にクエリ実行やサービスのスケールアップなどの修復を試みます。
  • 対応領域の拡大: DynatraceやServiceNowといった多様なデータソースとの連携を強化し、より広範なシステム環境に対応

  • 徹底したセキュリティ: 顧客データを他者のモデル訓練に利用しないポリシーを定め、NISTのフレームワークに基づいたリスク評価を公開するなど、安全なAI利用を担保しています。

PagerDuty Advanced 機能のリリース状況一覧

今回のデモで紹介されたエージェントも含め具体的なまとめが示されました。

まとめ

結論:明日からの運用を変える「手応え」

今回のセッションでは、AIが単なる「効率化ツール」ではなく、現場の心理的負担を下げ、エンジニアが創造的な仕事に専念できる環境を作るための「パートナー」であることが示されました。PagerDutyは、今後も日本市場に最適化されたAIソリューションを提供し、複雑化するデジタル運用の課題解決を先導していく姿勢を強調しました。

全体を通しての感想

本セッションも含め、AI活用のセッションとPagerDuty導入、運用設計の見直しなどシステム運用にAIを導入するために
これまでの運用を見直すようなセッションが多いように感じました。どんなインシデントを許容するか絶対に守るべき点はどこかといった初歩的で基礎的な部分の振り返りが多かったともいいます。

また、今回紹介されたエージェントはとても便利である反面、もし導入するとなった場合は慎重になる必要があるとセッションにおける質問を通して思いました。個人的には応答の安定性が気になっていたため、「日本語対応と応答の安定性」について質問したのですが、LLMの出力は確率的なところがあるため
いわゆる限りなく0に近づくことはあっても絶対はないということでした。LLMOpsについても今後は考えていく必要がありそうです。

ちなみに筆者によるAI運用の実績は以下のとおりです。

まだ悩みポイントは多いものの全体を通して良いセッションでした。

他、参考資料