はじめに
「Oracle AI World Tour Tokyo 2026」のセッションレポートをお届けします。
今回は、ミッションクリティカルなデータベース基盤をどのように最新のAI環境(Oracle AI Database 26ai)へ安全に、かつ「止めずに」進化させるのかをテーマにしたセッション「パナソニックが支えるExadata基盤刷新の最前線Oracle AI Database 26aiへの「止めない進化」とオラクルが描くミッションクリティカルの未来」についてご紹介します。
最新のテクノロジー解説と実際の移行プロジェクトを成功に導いた実践的なノウハウが詰まった非常に濃密なセッションでした。
セッション概要
本セッションは日本オラクルによる「AI時代のミッションクリティカル・データベースの進化」についての解説と、パナソニック デジタル株式会社の辻本氏による「プロトコーポレーション様の大規模移行事例および社内活用事例」の2部構成で行われました。
「絶対に止められない」システムを最新のクラウドAI基盤へ移行するための技術的アプローチと、AIを活用した次世代のデータベース運用手法が具体的に語られました。

AI時代の要求に応える「Oracle Database 26ai」の進化
セッション前半では、人・物・金を動かし「止まることが許されない」ミッションクリティカルシステムに対して、AI時代に求められる新たな要求と進化が解説されました。
- ハードウェアとAIの最適化(Exadata X11M)
最新のExadata(X11M)は、前世代と同価格でありながら、オンライントランザクション(OLTP)性能が25%、分析処理が2.2倍向上しています。特に注目すべきは「AIベクトル検索」の処理をデータベースサーバーからストレージ側にオフロード(分散)できる点です。これにより、専用のチューニングなしで、トランザクション処理に影響を与えることなく高速なAI処理を実現します。

- 強固なセキュリティとデータ保護(ZRCV)
AIが自然言語でデータにアクセスする時代において、データソース側でアクセス制御を行う重要性が語られました。また、ランサムウェア対策として、バックアップを本番環境から論理的に隔離し(エアギャップ)、安全かつ迅速に復旧できる「リカバリーサービス(ZRCV)」の重要性が強調されました。

わずか2時間半で10TBを移行!プロトコーポレーション様の事例
セッション後半では、パナソニック デジタル様が手掛けた、プロトコーポレーション様(「グーネット」等の運営)の過酷な移行プロジェクトの全貌が明かされました。
- 過酷な移行条件と「リフレッシャブル・クローン」の採用
データ量10TB以上という大規模環境を、オンプレミス(19c)からクラウド上の最新環境(26ai)へバージョンアップしつつ移行するという要件に対し、与えられたダウンタイムは わずか「2時間半」 でした。
従来のData Guardを用いた移行ではバージョンアップに伴うリスクがあったため、パナソニック デジタル様は「リフレッシャブル・クローン」機能を採用しました。これは、新環境に古いバージョン(19c)のクローンを作成し、60分間隔で定期的に差分を同期させ、切り替えのタイミングで一気にアップグレードを行うという手法です。 - 大成功のプロジェクト成果
事前の緻密な検証(同期のタイミングや参照モード時の挙動の確認など)を重ねた結果、見事2時間半でのクラウド移行とバージョンアップを完遂させました。移行後1年以上、実業務に影響するアラートが「ゼロ」という極めて高い安定性を誇り、運用コストも30%削減するという大成功を収めました。

APEXとAIによる次世代のデータベース運用
さらに、パナソニックグループ内での最新の活用事例も紹介されました。
- ローコードツール「APEX」× AI
パナソニックグループでは2,000以上のデータベースを少人数で管理しており、その運用画面(アラート分析やパフォーマンス推移など)の開発にローコードツール「APEX」を活用しています。APEXのAIアシスタント機能を使うことで、「商品管理のページを作りたい」と指示するだけで画面が自動生成され、さらには「部署ごとの給与合計を出力するグラフを作りたい」といったSQL文までAIが自動で生成してくれる様子が紹介されました。 - 「ZRCV」によるバックアップ戦略の進化
これまで同グループでは、本番環境へのI/O負荷を避けるため、あえて待機側(スタンバイ環境)でバックアップを取得する運用をしていました。しかし、オラクルが提供するZRCV(リカバリーサービス)は「永久増分バックアップ」の仕組みにより本番環境への負荷がほとんどかからず、低コストでランサムウェア対策が可能です。そのため、今後はプライマリ(本番)環境でも強固にバックアップを取得していく新たな構成を検討していることが語られました。

まとめ
本セッションを通じて、ミッションクリティカルな要件と最新のAI技術は決してトレードオフではなく、Oracleのエコシステムの中で見事に融合していることがよく理解できました。
特に、プロトコーポレーション様の「10TBを2時間半でクラウド移行・バージョンアップする」という事例は、高度な技術力と挑戦の賜物であり、同じようにレガシーからの脱却やバージョンアップに悩む多くのエンタープライズ企業にとって、非常に勇気づけられる内容だったと思います。データベース管理のあり方がAIによって大きく変わっていく未来を実感できる、素晴らしいセッションでした。