はじめに
Oracle AI World Tour Tokyo 2026のジェネラルセッション「データとAIの未来 – Oracle AI Database」のレポートをお届けします。
本セッションでは、Autonomous AI Database and Data Warehouse Technologies担当EVPのÇetin Özbutun氏が登壇し、AI時代に求められる次世代データ基盤の全体像を語りました。プライベートデータに対して、AIをどのように安全かつ柔軟に活用していくかが中心テーマでした。

セッション概要
本セッションの核心にあったのは、「AIをデータに持っていく」 という発想です。従来のようにデータを別の場所へ動かしてAIに渡す方式では、コストも遅延も大きくなります。そこでOracleは、AIが必要とする最新データへ低レイテンシかつ安全にアクセスできる基盤として、Oracle AI-Linked Data Hub を提示していました。その中核として紹介されていたのが、最新の長期サポート版である Oracle Database 26ai です。
Oracle AI Databaseのアーキテクチャ
1. AI-Linked Data Hubとは
Oracle AI Databaseは、AI時代のために設計された次世代データ基盤として位置づけられていました。Oracle Database 26ai は数多くのAI機能を備えた最新の長期サポート版であり、一方で Oracle Database 19 にも多くのAI関連機能が含まれるため、既存環境から段階的に取り組めることも強調されていました。

2. セマンティックデータとベクトル検索(RAG)
Oracle AI Databaseは、ベクトルデータをデータベース内でネイティブに扱います。文書、画像、各種メディアなどの意味情報をベクトルとして保持し、従来のデータと組み合わせて扱える点が大きな特徴として説明されていました。

ワークフローとしては、ベクトル検索で意味的に関連する情報を見つけ、それを従来データと組み合わせてコンテキスト化し、LLMへ渡すという流れです。いわゆるRAGを、データベース側でより自然に実装する考え方だと理解できました。また、列やデータにアノテーションを付けて意味を明示することで、AIが問い合わせ意図をより正確に理解できる点も紹介されていました。
3. プライベートエージェントとDB内オーケストレーション
セッション後半では、Agentic AIの実行基盤としてのOracle AI Databaseも紹介されました。Oracleは、Private Agent Factory や Agent Memory Core などをデータベース内に持たせることで、エージェントを安全に構築・実行・管理できると説明していました。

4. 1つのデータベースで多様なデータ型に対応する
リレーショナル、JSON、空間、ベクトルごとに別々の専用データベースを増やしていく構成は、管理コストもセキュリティリスクも大きくなります。Oracleはこれを Data Chaos と表現し、1つのデータベースで多様なデータ型をまとめて扱うべきだ と説明していました。
この考え方の利点は、開発者が使い慣れたAPIやインターフェースを維持しながら、DBAは1つのデータベースで統一的に運用できることです。セキュリティ、バックアップ、監視、チューニングを一元化できるため、AI時代に向けた現実的な基盤のあり方として納得感がありました。

5. 外部データを動かさずに活用する:Autonomous AI Lakehouse と Data Link
外部データとの連携では、Oracle Autonomous AI Lakehouse が紹介されていました。Snowflake や Databricks など他システム上のデータを移動させずに参照・活用できる構成で、Oracle Data Lake Accelerator や組み込みデータカタログ、フルマネージドの自律運用もあわせて示されていました。データ移動を前提としないため、コスト、レイテンシ、ガバナンスの面で有利だというメッセージでした。
「データをどこに置くか」で分断が生まれるのではなく、AIから見てどう一貫して使えるかを重視する設計は、マルチベンダー環境を前提とした現場では特に実用的だと感じました。

6. Exadataと新機能:AI Smart Scan
ExadataはOracle Databaseのための専用エンジニアードシステムであり、セッションでは新たに Exadata X11M が利用可能であることも紹介されました。さらに、新機能として AI Smart Scan が挙げられ、AI関連のスキャン処理をストレージ層へプッシュダウンすることで、低レイテンシかつ高スループットな実行を目指す考え方が説明されていました。また、Exadataや同じデータベースエンジンを、OCIだけでなくAWS、Google Cloud、オンプレミスなど複数環境で動かせることも強調されていました。

7. ディープデータセキュリティ
AI時代のセキュリティとして特に印象に残ったのが、アプリケーション層ではなく、データベース層でポリシーを強制するという考え方です。Oracleはこれを Deep Data Security と位置づけ、AIエージェントやBIツールなど、クエリの発行元に関係なくDB側でアクセス制御を適用する重要性を説明していました。
さらに、データベース内SQLファイアウォールも紹介されていました。SQLインジェクション攻撃のリスクに対して透過的に対処し、可用性やレイテンシへの新たな影響を抑えながら、悪意あるユーザーによるバイパスを防ぐ設計であることが示されていました。AIエージェントが大量に動く世界では、アプリケーション層だけで守るのでは不十分で、DB層での強制が堅牢な防護線になると主張されていました。

8. ポスト量子暗号
セッションの最後では、量子コンピュータ時代を見据えた暗号の話にも触れられていました。現在は安全に見える暗号化データも、将来的には「今収集され、後で復号される」リスクがあります。Oracleは、Oracle Database 26ai や 19系において、こうした将来リスクへの備えも進めていると説明していました。

さいごに
本セッションを通じて、Oracle AI Databaseが単なるデータベースの機能追加ではなく、AI時代のデータ基盤そのものをどう設計するか という話であることがよく伝わってきました。ベクトル検索、プライベートエージェント、Deep Data Security、Exadataまでが、「AIをデータの近くで安全に動かす」という1本の軸でつながっていたのが印象的でした。