はじめに

Oracle AI World Tour Tokyo 2026で開催された、シアターセッション「Oracle Database@AWSが実現する”真の統合基盤” 堅牢性・性能・運用効率・コストのすべてを妥協しない新しい選択肢」のセッションレポートをお届けします。
AWSを扱うエンジニアとして、Oracle Database@AWS(以下、ODB@AWS)は気になっていたテーマの1つでした。これまでAWS環境では実現が難しかった Oracle Exadata や RAC を活用できる可能性が広がるということで、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の田辺啓介氏がどのようなポイントを語ったのか、印象に残った内容を整理してご紹介します。

ODB@AWSとは

ODB@AWSは、これまでOCI上で提供されてきたExadataベースのサービスを、AWS内に設置された基盤上で利用できるようにしたサービスです。講演では、これにより各種AWSサービスと低遅延で接続できる点が大きな変化として紹介されていました。

Oracle Database@AWS は 東京リージョンで2025年12月から提供が開始されており、この新サービスにより、AWS上でのExadata利用が可能になりました。

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利用できるサービスは以下の3つです。

サービス 概要
ExaDB-D Exadata基盤上のデータベースサービス。OSアクセス可能でオンプレに近い感覚で管理可能。
ADB-D OracleによるフルマネージドのAutonomous Database。OSアクセスはできず、運用をできるだけOracleに任せたい場合に向く。
ZRCV/RCV Oracle Database向けバックアップサービス。イミュータブル保護やリアルタイムデータ保護などに対応。

このサービスの登場により、AWSユーザーからは「ついにAWSでもRACやExadataが使える」「ミッションクリティカルな構成もAWSで検討できそう」といった期待の声がある一方で、「最終的にはコスト次第」という見方も強いことが紹介されていました。田辺氏自身も、この“期待とコスト懸念の両面”を率直に語っていたのが印象的でした。

ODB@AWSの基盤となるExadataは、Oracle Databaseに最適化されたプラットフォームです。講演では、Smart Scanによる高速化、SQLオフロードによるCPU負荷の軽減、RACによる高可用性、さらにOLTPやDWHを集約しやすい統合基盤としての強みが説明されていました。

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ExaDB-D と ADB-D のどちらを選ぶか

2つのデータベースサービスの大きな違いは、運用管理の範囲です。講演では、ExaDB-D は「柔軟性」、ADB-D は「シンプルさ」を重視したサービスとして整理されていました。

観点 ExaDB-D ADB-D
運用モデル Automated Full-Managed
OSアクセス 可能 不可
近いイメージ オンプレミスに近い RDSに近い
向いている用途 運用コントロールを重視したい 運用をOracleに任せたい

オンプレミスのOracle環境に近い感覚を保ちながら移行したいなら ExaDB-D、運用負荷を下げつつクラウドのメリットを活かしたいなら ADB-D、という整理がわかりやすく、選定の軸として非常に参考になりました。

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コスト最適化の3つのポイント

セッション後半の中心は、多くの人が気にしている「コスト」の話でした。単に“高そう”で終わらせず、どこで最適化できるのかを具体的に示していたのが参考になりました。
まず講演では、ODB@AWS の課金が ECPU課金 と インフラ課金 に分かれていることが説明されました。加えて、ライセンス込とBYOLの選択肢があることも紹介されています。

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ポイント1:ライセンス計算方法の違い

講演で特に強調されていたのが、ライセンス計算方法の違いです。
従来、AWS上で Oracle Database Enterprise Edition を利用する場合は、ライセンス係数の違いによって、オンプレミスやOCIと比べて必要ライセンス数が大きくなりやすいという課題がありました。一方、ODB@AWS では オンプレミスやOCIと同じ考え方のライセンス計算 が適用されるため、RDS for Oracle と比較した場合にライセンスコスト面で有利になる、という説明でした。

ここで重要なのは、インスタンス料金単体ではExadata基盤が高く見えても、DBライセンス料金まで含めたトータルコストでは見え方が変わるという点です。講演でも、初年度の比較では ODB@AWS が優位になるシナリオが示されていました。

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ポイント2:ADB-DでのSE2ライセンスBYOL

2つ目のポイントは、ADB-DでStandard Edition 2(SE2)のライセンスをBYOLできることです。
講演では、この構成により SE2の費用感でありながら、より高機能なデータベース利用の選択肢が広がる点が大きなメリットとして紹介されていました。田辺氏自身も、コストインパクトが大きいため Oracle に確認したと話しており、それだけ印象的なポイントだったことが伝わってきました。

また、講演では「1インスタンスあたり最大32 ECPUまでという上限がある」としつつ、多くのシステムでは大きな制約になりにくい、という説明もありました。加えて、この構成を使うことで、初期コスト・ランニングコストの両面でRDSより有利になる可能性が示されていました。

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ポイント3:OCI Support Rewards(OSR)の活用

3つ目のポイントは、Oracle Support Rewards(OSR)の活用です。
講演では、ODB@AWS も OSR の対象であり、OCI利用額に応じて還元されるポイントを、Oracle Database のサポート費用に充当できることが紹介されました。還元率は 25% と説明されており、長期的に見ると保守費用の上昇を抑える上で有効な施策として位置づけられていました。
特に、保守費用は年次で上がっていく傾向があるため、初年度だけでなく継続運用時のコストまで見据えて最適化するという視点が重要だと感じました。

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AI時代の統合基盤として

セッションの最後に語られていたのは、ODB@AWS を単なる“OracleをAWSで使うための仕組み”としてではなく、リアルタイムデータ、高性能基盤、自律運用、AI活用を一体化した次世代基盤として捉える視点でした。
印象的だったのは、データが蓄積されてから分析するのではなく、データが発生した瞬間に判断し、次のアクションにつなげる という考え方です。AI活用が進む今、単に高性能なデータベース基盤というだけでなく、リアルタイムな意思決定を支える基盤として ODB@AWS を位置づけていた点が、このセッションの締めとして非常に印象に残りました。

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さいごに

セッション参加前、Oracle Database@AWS は運用コストが高そう、という印象を持っていました。しかし実際には、ライセンス計算方法の違い、ADB-DでのSE2 BYOL、Oracle Support Rewards(OSR) といった複数の工夫を組み合わせることで、コストの見え方が変わることがわかりました。
特に、AWS上で Exadata や RAC を活用できるようになることは、これまでオンプレミスのOracle環境をそのまま移行しづらかった企業にとって、選択肢が広がると思いました。