はじめに
DX開発事業部の鹿嶋です。
7/31(金)に行われた「ここまでできる!最新機能と AI を活用した Google Cloud のマネージド データベースの運用術」のセッションレポートとなります。
セッション情報
セッション概要(※公式ページより引用)
Google Cloud ではユースケースに応じてビジネスの成長を支える多様なマネージド データベースを利用できます。本セッションでは、AlloyDB や Spanner をはじめとして最新アップデートに加え、 AI を活用したデータベース運用のベスト プラクティスをご紹介します。AI 支援による運用の自動化、トラブルシューティングの効率化など、明日から現場で活かせる「ここまでできる!」運用術を解説。データベース管理の負担を軽減し、より価値の高い業務へシフトするためのヒントをお届けします。
登壇者
江川 大地 氏(Google Cloud / Database Specialist)
セッション内容
1.Google Cloud における DB の方向性
冒頭では、Google Cloud がデータベース領域において注力している「鍵となる3つの柱」が説明されました。
- AI Native-Databases と開発者体験
- エンタープライズ対応
- インテリジェントな管理
AI-Native Database と開発者体験
Google Cloud では、DB 自体がデータを理解し、自律して処理を行う世界を目指しています。これが実現すると、DB が単なるデータの保存場所ではなく、直接AIモデルを呼び出したり、ベクトル検索を行ったりするための基盤としての使い方が可能になっていきます。
英数字やテキストだけでなく、画像や動画といったマルチモーダルなデータが持つ意味を直接検索し、従来のタグ付けやラベル付けを直感的に行ったり、目的のデータをスムーズに取得したりできるようになります。
従来の SQL が持つ絞り込みの力に加えて、ベクトル検索、全文検索、AI 関数、そしてエンティティのつながりを辿るグラフ検索などを組み合わせることで、ロジック、言語、データのつながりのすべてを理解する統合されたアプローチが提供されます。
また、すべてのデータベース製品で Model Context Protocol (MCP) サーバが利用可能になる点も、AI エージェント時代の大きな特徴として印象に残りました。
構築・運用を支援する Database Agents
日常的な作業から複雑な移行まで、データベースのライフサイクル全体を支援する Database Agents のラインナップが紹介されました。

現在、Onboarding agent と Observability agent が Private preview として利用可能となっており、間もなく登場する Testing agent は、Cloud SQL for PostgreSQL での提供開始が予定されているとのことです。
併せて Migration agent も開発が進められており、Database Migration Service と連携して、現状の発見からネットワーク等のセットアップ、実際のマイグレーション、そしてほぼゼロダウンタイムでのカットオーバーまでをエンドツーエンドで支援してくれます。

エンタープライズ対応とインテリジェントな管理
エンタープライズの基幹システムが求める高いパフォーマンスと可用性を追求するだけでなく、OLTP ワークロードと BigQuery などの分析基盤との連携をシームレスにするアップデートが進められています。併せてハイブリッドクラウド戦略への対応として、オンプレミスや他社クラウド環境でも動く Omni シリーズを利用することで、ビジネスニーズに最適な場所でサービスを稼働できる点が強調されていました。
運用の面では、個々のインスタンスだけでなく複数インスタンスをフリートとして一括制御し、AI アシスタンスを通じてプロアクティブに対処するインテリジェントな管理へとシフトしています。
2. AI 時代の DB オブザーバビリティ
オブザーバビリティのプロセスは、取得・分析・対処の3つのステップでそれぞれアップデートが行われています。

Query Insights
Cloud SQL、AlloyDB、Spanner などで提供される Query Insights を使用することで、データベースの負荷、クエリ性能、実行計画をダッシュボードで監視できます。問題のあるクエリを投げているユーザーやアクセス元の IP を特定できるため、スロークエリの発見に役立ちます。

AI-assisted Troubleshooting
この機能を利用すると、データベースが高負荷に陥った原因を AI が考察してくれます。例えば過剰なロギング、システムリソースやロックの競合、バッファ不足といった観点から状況を分析し、インデックス作成などの具体的な解決策を提示してくれます。 同様にスロークエリ発生時にも、データ量の変化や実行計画の変化といった要因を表示して推奨事項を教えてくれるため、経験の有無によらず迅速なトラブルシューティングが可能になります。

Database Center
データベース全体のフリートを包括的に把握できるインターフェースとして Database Center が用意されています。パフォーマンス、コスト、セキュリティに関する推奨事項を確認できるほか、自然言語チャットを使って質問し、問題を迅速に解決に導く機能もサポートされています。

3. 最新アップデート
セッション後半では、データベース運用のあり方やデータ活用手法を大きく変える機能アップデートが多数披露されました。それぞれのアップデートがどのような現場の悩みを解決するのか、機能領域ごとに整理して紹介します。
AI 関数の導入とコスト最適化
アプリケーション側から毎回 LLM を呼び出す構成は、ネットワークのオーバーヘッドやコスト、レイテンシが課題になりがちです。AlloyDB や Spanner では、AI 関数が拡張されており、SQL のクエリ内から直接モデルを呼び出して文脈や知識を踏まえた高度な処理を行うことが可能です 。

関連情報として、先日これらのAI関数をいち早く試してみた検証ブログを公開しています。具体的な使い方や実行結果のイメージを掴みたい方は、ぜひそちらも併せてご覧ください!
データ統合と非同期処理を強力にする Spanner の新機能
Spanner では、リレーショナルモデルとグラフモデルを融合させた Spanner Graph search が登場しました。別々のデータベースに分けがちだったグラフデータと OLTP データを同じ基盤で扱えるため、データのサイロ化を防ぐことができるようになります。
さらに、不正利用の検出や関連ユーザーのレコメンドなどで活用できる Spanner Graph アルゴリズムもプレビューとして導入され、これらをクエリで呼び出すことで、これまで複雑だったロジックをシンプルに記述できます。

併せて近日公開予定機能として紹介されたのが Spanner queues です。データベーストランザクション内でアトミックにタスクをキューへ追加でき、ユーザーリクエスト処理と高負荷な処理を非同期に分離できます。スケジュール機能も備えており、多様なシステム連携が安全かつスケーラブルに実現できるようになります。

自然言語でのデータ操作とエコシステム連携
データベースとGeminiの連携も深まっています。プレビュー公開された QueryData では、自然言語による質問から Gemini がスキーマ構成などのコンテキストを元に 自動で最適な SQLクエリを組み立ててくれます。

AlloyDB から BigQuery や Apache Iceberg のデータへシームレスにアクセスできる Lakehouse federation for AlloyDB もプレビュー機能として提示されました。
フィルタリング処理の自動プッシュダウンやデータ保持の容易化により、分析基盤と OLTP の垣根を低くする連携が加速しています。

パフォーマンス向上と柔軟なインフラ変更
ハードウェア面では、Axion ベースの C4A マシンシリーズが Cloud SQL(MySQL / PostgreSQL)向けに東京リージョンで一般提供開始となりました。従来の N2 シリーズと比較して約50%優れる価格性能と最大2倍のスループットを実現しており、Hyperdisk にも対応しています。

さらに近日公開予定のアップデートとして、マシンタイプの変更をインプレースかつニアゼロダウンタイムで行える機能が加わります。Enterprise から Enterprise Plus への変更や、Intel(N2/N4)から ARM(C4A)への変更、ストレージタイプの変更を、手動マイグレーションや再構築なしで実施できるようになります。

バージョンアップのハードルを下げる Blue-Green deployments
メジャーバージョンアップグレードなどの作業において、ダウンタイムやリスクを低減するフルマネージドの切り替え機能である Blue-Green deployments が近日公開予定です。シンプルな3ステップで操作が完了し、実際のデータのコピーを使って本番移行の前にテストを実行できます。
Enterprise Plus ではダウンタイムが2秒未満に抑えられ、まずは MySQL 8.0 から 8.4 へのアップグレードなどで活用が期待されています。

おわりに
これまでパフォーマンス低下の要因調査やメジャーバージョンアップ時の対応は、エンジニアにとって負荷の高い作業でした。しかし、AI による原因分析や改善案の提示など、マネージドサービスに任せられる範囲が広がっています。
もちろん運用面だけでなく、データベース機能そのもののアップデートも印象的でした。AI 関数の組み込みや、Spanner のグラフ検索機能の追加により、アプリケーション側の処理を簡略化でき、データを移動させずに DB 上で AI 処理を行う構成は今後のシステム設計で実践的なアプローチになります。
プレビュー版や近日公開予定の機能も多数発表されていたので、手元で試せるものからどんどん実際のプロジェクトに組み込み、新しいデータベース運用の形を実践していきたいと思います!
