皆様、こんにちは。
クラウドイノベーション本部 DX開発事業部 クロスイノベーションセクション クライアントソリューショングループの楊林です。

前回の投稿では、プロジェクト作業中の障害対応についてご紹介しました。

プロジェクトの障害を解決した後、その解決に至った経験をチーム内で共有し、プロジェクトメンバーの共通認識として残すことは一般的です。
しかし、プロジェクトメンバーの入れ替えなどが発生した場合、以前に発生した問題や、それを解決するために得られた経験を、どのようにメンバー間で引き継ぐべきでしょうか?

今回は、そのような知識をより有効にプロジェクト・チーム内に残すための、プロジェクト知識マネジメントについてご紹介します。

知識の種類

知識をどのように管理するかを考える前に、まず知識はどのように分類されるのかについて説明しましょう。

PMIでは、プロジェクトにおける知識を、その性質によって二種類に分類しています。

まずは、文書化して他者と共有できる知識です。
例えば、文字、数字、図表などの形で残すことができる知識です。このような知識を形式知と呼びます。
形式知は、一般的に知識として認識されやすいものであり、保存する媒体があるため、プロジェクト内で共有することも比較的容易です。

形式知の反対に位置するのが、暗黙知と呼ばれる知識です。
個人の経験や勘、技能など、形がなく、明示したり共有したりすることが困難な個人の知識は、暗黙知に分類されます。
物理的な形として存在するものではないため、暗黙知は失われたり、忘れられたりしやすい知識です。
そのため、暗黙知をどのように共有するかは、プロジェクトにとって重要な課題となります。

知識マネジメントのレベル

プロジェクトの知識マネジメントには、個人プロジェクト組織の三つのレベルがあります。

個人レベルの知識マネジメントでは、各チームメンバーが、割り当てられたタスクのスコープ、スケジュール、コストなどに応じて、作業を実行するために必要な知識を持つことが求められます。
必要な知識は、調査、他者との協働、プロジェクトや組織の知識リポジトリの学習など、さまざまな手段によって得ることができます。

プロジェクトレベルの知識マネジメントでは、現在のプロジェクトの目標を達成することに重点を置きます。
プロジェクト・マネジャーは、現在のプロジェクトに適用できる他のプロジェクトの知識を求めることがあります。
そのため、PMOが組織内のプロジェクトマネジメントの基準を定義・維持するために蓄積している知識を提供してもらうことは、有効な情報源の一つになります。

組織レベルの知識マネジメントでは、プログラムやポートフォリオのマネジメントに重点を置きます。
プログラム・マネジャーやポートフォリオ・マネジャーは、他のプログラムやポートフォリオをマネジメントしている同僚から情報を得て、その知識を特定のニーズに合わせて適用することがあります。

教訓

教訓とは、プロジェクト中に得られ、プロジェクトの各フェーズや他のプロジェクトで活用できる知識のことです。
教訓はプロジェクト・ライフサイクル全体を通じて発生し、ポジティブな経験とネガティブな経験の両方が含まれます。

教訓を整理するには、基本的に時間とコストが必要となります。
しかし、学んだ教訓を文書化するために費やす時間と労力は、将来のプロジェクトに大きな利益をもたらす可能性があるため、決して浪費ではありません。

プロジェクト・チームは、パフォーマンスを定期的に見直し、学んだ教訓を特定するとともに、チーム全体の効率と有効性を改善するための具体的な改善点を特定する必要があります。
このような特定のプロセスを振り返りと呼び、アジャイル開発においてはレトロスペクティブとも呼ばれます。

教訓を記録するには、教訓登録簿と教訓リポジトリという二つの手段があります。

教訓登録簿とは、プロジェクト中に得られた知識を記録するためのプロジェクト文書です。
実施中のプロジェクトにおいて、教訓登録簿はプロジェクト・ライフサイクル全体を通じて更新されます。

一時的に記録するための教訓登録簿に対して、教訓リポジトリは、プロジェクトの教訓をより長期的に保存するための履歴情報であり、組織のプロセス資産の一部となります。
プロジェクトやフェーズの終結プロセスにおいて、教訓登録簿から教訓リポジトリへ教訓を追加することが一般的です。
教訓リポジトリは、複数のプロジェクトから得られた教訓を蓄積したデータベースとも言えます。

知識の共有と移転

プロジェクト・マネジャーには、プロジェクト知識の共有と移転を成功させる責任があります。
知識の移転とは、特に暗黙知を共有し、他者と協働することです。
グループ・ファシリテーションやトレーニングは、そのためによく使われる技法です。

知識は常に一定とは限らず、変化する可能性もあります。
そのため、常に新たなリスクがないかを継続的に評価し、リスク・マネジメント計画書に従って、プロジェクト目標に影響を与える課題へ発展しないよう、潜在的なリスクに事前に対処することが重要です。

また、知識を仕舞い込んだままにしておくことも避ける必要があります。
コミュニケーション・マネジメント計画書に従い、作業に影響を与える変更についてステークホルダーに通知することも重要です。

最後に

本記事では、プロジェクトの知識マネジメントについてご紹介しました。

プロジェクトは終結すればすべてが終わるわけではありません。
そこで得られた教訓や知識の共有・移転は、次なるプロジェクトの成功にもつながります。
常にプロジェクトを振り返り、得られた暗黙知を文書化して形式知に変換することは、チーム内の知識共有を促進し、より強いチームを育てることにつながります。

プロジェクト・マネジャーを目指す方、またはPMP資格取得を検討している方にとって、本記事が皆さまに少しでもお役に立てば幸いです。