はじめに

エンタープライズクラウド事業部の高橋です。

Oracle AI World 2026にて、「Redefining Enterprise Apps for the Age of AI [SPT2659]」のセッションに参加しましたので、その内容を紹介します。

セッション概要

When business conditions change, people still carry the burden of interpreting what happened and coordinating the response. Oracle Fusion Applications are changing that. They can monitor business activity, recognize meaningful changes, determine the best next step, and take action—all within the policies, approvals, and controls of an enterprise. See how innovations including Fusion Agentic Applications, Fusion Claw, and the no-code-to-pro-code capabilities of Fusion AI Agent Studio are helping turn business signals into action.

ビジネス環境が変化する際、何が起きたのかを解釈し、それに対する対応を調整するという重荷は、依然として人々にのしかかっています。Oracle Fusion Applicationsは、この状況を一変させます。企業が定めるポリシー、承認プロセス、統制の枠組みの中で、ビジネス活動を監視し、重要な変化を認識し、次に取るべき最善の策を判断して、実行に移すことができるのです。Fusion Agentic ApplicationsやFusion Claw、そしてノーコードからプロコードまで対応可能なFusion AI Agent Studioといったイノベーションが、いかにしてビジネス上のシグナルを具体的な行動へと変える手助けをしているのか、ぜひご覧ください。

セッション内容

本セッションでは、企業システムを記録するためのシステムから「成果を達成し続けるためのシステム」へ転換するというOracleの構想と、新機能・発表内容が紹介されました。

本セッションでは複数の新発表がありましたが、本記事では特にOracle Fusion CompanionとOracle Fusion Agentic Homeに絞って紹介します。

この新発表はOracle Fusion Clawと連携する機能のため、まずOracle Fusion Clawについて簡潔に説明します。

Oracle Fusion Claw

Oracle Fusion Clawは、既存のエージェンティック・アプリケーション(アウトカムを軸に業務を進める仕組み)に対して、照合(リコンサイル)・最適化・シミュレーション・プランニングといった、計算負荷の高い長時間の専門業務を追加で任せられる実行エンジンです。

従来型のエージェントは「推論→1件のレコードを確認→判断」を繰り返す、いわゆる「ループの中にLLMがいる」構成になっています。この方式では、数百万件規模のデータを扱う業務の場合、処理件数が増えるほどAIコストが膨らみ、さらにコンテキストウィンドウの限界により途中から判断の精度が崩れてしまうため、エンタープライズ規模の処理には向かないという課題があったと説明されていました。

Oracle Fusion Clawは、AI(LLM)を「計画を立てる」推論フェーズでのみ使用し、実際の大量データの計算処理は決定論的な計算エンジンに引き渡すことで、この課題を解決しているとのことです。これにより、エンタープライズ規模のコストと精度を両立させています。

各実行には、ポリシー・承認基準に基づき「誰が/どの権限で/どのデータを使って」実行したかを記録する「アウトカムレシート(Outcome Receipt)」という監査可能な証跡が生成されます。

実行時に誰がどのデータを使用したかをログとして残せることは、実システム上でも重要な要素だと思います!

※Oracle Fusion Clawは、本セッション(2026年10月26日)より前の2026年9月29日に、以下のプレスリリースで発表済みの機能です。
オラクル、Oracle Fusion Clawを提供し、Fusion Agentic Applicationsを拡張

本セッションの新発表:Oracle Fusion Companion/Oracle Fusion Agentic Home

本セッションに合わせて発表された公式プレスリリースは以下の通りです。

Oracle Introduces New AI-Powered Ways to Execute Work Across Oracle Fusion Applications

Oracle Fusion CompanionとOracle Fusion Agentic Homeは、それぞれ役割が分かれています。

Oracle Fusion Companion

自然言語で伝えられた「やりたいこと」を理解し、裏側で適切なトランザクション・ワークフロー・承認・AIエージェント・エージェンティックアプリケーションを自動的に選択・調整する「インテリジェンス層」です。

ユーザーの権限や業務コンテキストを理解した上で動作し、Fusion本体だけでなく連携する外部システムも含めて横断的に処理を調整できる点が特徴として説明されていました。

利用できるクライアントも複数用意されており、Oracle Fusion Agentic Homeのほか、ChatGPTのプラグインやモバイルなどからも利用できます。

Oracle Fusion Agentic Home

Fusionアプリケーション内にネイティブで用意された、ユーザーが実際に操作するインターフェースです。ユーザーがOracle Fusion Agentic Homeの画面上で指示を入力すると、その依頼は裏側で動いているOracle Fusion Companionに渡され、Companionが「どのアプリケーション・エージェントを使って実行するか」を判断し、処理を進める、という役割分担になっています。

セッション内のデモでは、登壇者がOracle Fusion Agentic Homeに対して「今月の支払債務(AP)の前月比変化を教えて」と指示を行い、継続的なアウトカム追跡が必要な作業はOracle Fusion Clawに委任し、自分は経費精算を進める、といった一連の流れが示されていました。

ユーザーが利用するクライアント(Oracle Fusion Agentic Home/モバイル/ChatGPT等)が変わっても、権限やビジネスコンテキストは同じOracle Fusion Companionが管理し、実行自体はFusionの中で完結する、という点がセッション内で強調されていました。

 

また、本セッションでは、以下の2つのアクションが呼びかけられていました。

  • 75個のエージェンティック・アプリケーションのうち1つを、まずパイロットでも良いので導入してみること
  • Oracle Fusion Agentic Homeを今すぐ試し、来年1〜2月頃には広く展開すること

Oracle Fusion Agentic Home/Oracle Fusion Companionの実際の使用感は、別の記事として記載したいと思います!

本記事に記載した内容のまとめ

本記事に記載した内容を、発表日・ステータスごとに整理すると以下のようになります。

発表内容 発表日 ステータス 概要
Oracle Fusion Claw 2026年9月29日 既発表(本セッションでは前提知識として説明) 専門業務(照合・最適化・シミュレーション・プランニング等)を任せられる実行エンジン
Oracle Fusion Companion 2026年10月26日 新発表 自然言語の依頼を理解し、適切なアプリケーション・エージェントに処理を振り分けるインテリジェンス層
Oracle Fusion Agentic Home 2026年10月26日 新発表 Oracle Fusion Companionに依頼を渡すための、Fusion内のネイティブな入力画面

本記事では、このうち新発表のOracle Fusion CompanionとOracle Fusion Agentic Homeを中心に紹介しました。

エンジニア視点での所感としては、Oracleは「AIに作業を支援させる」段階から、「ガバナンスを適用した上で、AIに作業そのものを完了まで任せる」段階へ本気で踏み出していると感じました。

まとめ

本セッションから、Oracleのアジェンティックアプリケーション戦略が、2026年9月に発表済みのOracle Fusion Clawに、Oracle Fusion Companion/Oracle Fusion Agentic Homeを組み合わせる形で進化してきていることを学べました。

実行をAIに任せる分、アウトカムレシートのような監査・統制の仕組みをセットで提供している点も、エンタープライズ向けにAIの自律性を広げていく上で欠かせない要素だと思います。

今後、複数のAIエージェントやアプリケーションを横断する業務依頼を一本化したいというニーズに対しては、「自然言語のフロントドアが裏側で適切な実行エンジンに振り分ける」という設計思想を、提案の参考にできそうです。