はじめに

  • こんにちは、エンタープライズクラウド事業部の新川です。今週は Oracle AI World 2026 に参加するため、ラスベガスに来ています。
  • 前回に続き、今回もクイズを出題します。

    AI に投資したのに、期待したほどの成果が出ません。このセッションが、まず見直すべきだと伝えていたのは、どれでしょうか?

    A. AI のモデルの性能が足りない
    B. 使う人が AI に慣れていない
    C. AI を支える土台(システムやデータ)が古い

    このセッションの答えは、C でした。

 

  • 今回は「AI-Ready Foundations: OCI Modernization and Enterprise Scale [LRN2505]」の内容をお伝えします。
  • Accenture を司会に、電力・ガスの Southern Company と、医療機器の ICU Medical が登壇しました。2 社が、古いシステムを OCI で作り替える「モダナイゼーション」を進めながら、AI を使えるようにしてきた話です。対談形式だったので、ここでは、共通する考え方だけを取り出します。

このブログの対象

  • システムの土台づくりと、AI を使い始めるまでの進め方を扱います。
    • 非エンジニアの方:AI を導入する前に、何を整えておくとよいのかが分かります。
    • エンジニアの方:システムの刷新と AI 活用を、どうつなげて進めるかが分かります。

先に、用語をおさらい

  • モダナイゼーション:古いシステムを、新しい仕組みや環境に作り替えることです。
  • AI エージェント:人が毎回指示しなくても、自分で判断して作業を進める AI のことです。
  • ハイブリッドクラウド:自社の設備(オンプレミス)と、クラウドを組み合わせて使うことです。
  • そのほかの言葉は、出てきたところで説明します。

3 行まとめ

  • AI は、土台(システムとデータ)が整って、はじめて広げられる。
  • 登壇者は、「小さく始めて、早く価値を見せる」ことをすすめていた。
  • 関係者を最初から巻き込み、AI の部品は使い回せる形で作る。

 

AI より先に、土台を整える

  • セッションの前提は、概要にもある通りです。
    • 現代的で、障害に強いデジタル基盤がなければ、AI を広げることはできない。
  • 多くの会社が AI に投資しています。でも、データが古いシステムの中に散らばっていたり、システム同士がつながっていなかったりすると、AI は力を発揮できません。AI の話の前に、土台の話をする。それが、このセッションの出発点でした。

 

事例 1:電力・ガスの Southern Company

何を作り替えたのか

  • 大手の電力・ガス会社です。
  • 古い顧客管理・請求のシステムを、Oracle のプラットフォームに作り替えました。
  • 家庭のスマートメーター(電気の使用量を自動で送る機械)から届く大量のデータを、集めて使える基盤を作りました。
  • 請求などの基幹システムは自社の設備に残しつつ、クラウドと連携する、ハイブリッドクラウドの形にしました。

AI の使いどころ:請求のエラー処理

  • 毎晩の請求処理では、どうしても一定の割合でエラーが出て、バックオフィスの担当者に確認作業が回っていました。
  • そこで、請求のエラーを見分ける AI エージェントを作りました。
    • 顧客の過去の使用量などと照らし合わせて、エラーの原因を判断する。
    • 判断できるものは、AI が自分で処理を終わらせる。
    • 判断できない複雑なものだけ、整理した状態で人に渡す。
  • 財務の基幹システムに AI を入れるのは初めてだったので、監査の担当者を最初から巻き込み、あとから確認できるようにしました。投資に対して、大きな削減効果が出たとも説明されました。実験で終わらせず、ほかの用途にも広げられる形で作ったことも、ポイントでした。

これからの構想:AI の部品をそろえる

  • AI の機能を、「レゴのブロック」のように部品にして、組み合わせて使う構想も語られました。たとえば、コールセンターの通話を分析する機能などです。

 

事例 2:医療機器の ICU Medical

何を作り替えたのか

  • 会社が成長する中で、古い設備のデータセンターや、システム同士をつなぐ個別の接続が増えて、保守も拡張も難しくなっていました。止められない製造工場もあり、信頼性を高める必要がありました。
  • そこで、システムを OCI に移しました。

つまずいたところ

  • つまずきは、大きく 2 つありました。
    • 準備に時間がかかった:必要な環境を、すぐに用意できず、事前の予約と準備の待ち時間が出た。
    • 隠れたつながりが多かった:基幹業務のソフトと、工場のアプリが、思っていた以上に直接つながっていた。
  • 対策は、開発者、事業部門、コンサルタントを巻き込んだ、日々の打ち合わせと、利用する部署への説明を続けることでした。

これから

  • 自然な言葉でデータベースに質問できるような、AI 機能の活用に向けた準備を進めている、とのことでした。

 

登壇者からのアドバイス

  • 登壇者から、次のようなアドバイスがありました。
    • 小さく始めて、早く価値を見せる:大きな計画だけで進めず、早い段階で成果を示して、事業の側の信頼を得る。
    • 関係者を最初から巻き込む:セキュリティ、設計、監査、現場の運用の担当者を、初期から入れる。
    • (Southern Company の例では)実験で終わらせない:最初から、広げられる形で作る。

 

まとめ

  • AI の成果は、AI の性能だけで決まりません。AI が使うデータやシステムの土台が整っているか、そして、小さく始めて関係者と進められるかで決まります。
  • 今回のセッションで学んだことを、3 点にまとめます。
    • 土台が先:AI を広げるには、システムとデータの土台を整える。
    • 小さく始める:早く価値を見せて、信頼を得ながら広げる。
    • 巻き込み、使い回す:関係者を最初から入れ、AI の部品は使い回せる形にする。

おわりに

  • 「AI」に関するセッションが多い中で、このセッションは、土台の話に焦点を当てた内容でした。派手な話ではありませんが、実際の仕事では、いちばん効いてくる部分だと感じました。
  • 古いシステムを作り替えるのは、時間も手間もかかります。でも、そこに手を付けた会社が、AI を事業に広げていける。2 社の話は、それを具体的に見せてくれました。当社を含め、多くの企業にとって参考になる内容だと思います。