TL;DR

  • Oracle Globally Distributed AI Database は、データを複数のデータベース(シャード)に分散しつつ、アプリケーションからは1つの論理データベースに見せる仕組みだ。Raft ベースのレプリケーションでは、3秒未満の自動フェイルオーバーとゼロデータロスをうたっている。
  • シャードは Oracle Database が動く場所ならどこにでも置け、それに加えて OCI、Google Cloud、AWS、Azure といった複数のクラウドにまたがっても置ける。
  • OCI では、Exascale 上のクラウドサービス「Globally Distributed Exadata Database on Exascale Infrastructure」として紹介され、OCI コンソールでの作成画面がデモされた。作成画面には、ノードごとに Region と Cloud provider を選ぶ項目があった。

はじめに

OCI Top Partner Engineers 2026 の今井です。

今週は Oracle AI World 2026 に参加するため、ラスベガスに来ている。今回聴いたのが、セッション「LRN6009 – Build Multicloud AI Apps That Never Go Down with Globally Distributed Database」だ。Oracle の Shailesh Dwivedi 氏(GVP, Data Systems Engineering)と、PayPal の2名が登壇した。日時は 2026-10-26 11:30〜12:15(PDT)、会場は Galileo 1001 だった。

セッションのタイトルスライド)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き
セッションのタイトルスライド)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き

スライドにも「Oracle AI Database は 2017 年にネイティブのシャーディングをリリースして分散データベースになった」とある通り、Globally Distributed AI Database(以下 GDD)自体は新しい機能ではない。ただ私は、OCI と他クラウドのハイパースケーラーが加速したことで、GDD に新しい価値が出てくるのではないかと感じた。本記事では、GDD でできることと、Raft レプリケーション、複数クラウドにまたがる配置を中心にまとめる。

Globally Distributed AI Database とは?

GDD では、データを物理的に複数のデータベースに分散して置く。この1つ1つをシャードと呼ぶ。各シャードのデータは複製され、どのシャードもアプリケーションのリクエストを処理する active-active の構成だ。

登壇者は、GDD は同じ Oracle Database を別のアーキテクチャで配置したものだと説明していた。アプリケーションからも運用からも単一の論理データベースに見え、リクエストはデータがあるノードへ自動で振り分けられる。

GDD は単一の論理データベースとして見える)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き
GDD は単一の論理データベースとして見える)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き

Globally Distributed AI Database でできること

できること 内容
データを置く国を決める US とインドにまたがる1つの分散データベースで、インドのデータはインドに、それ以外は US に置いた銀行の事例が紹介された
止めずにシャードを増減する シャードの追加・削除とデータの再配置はオンラインで、停止時間は発生しないとしている
障害時に3秒未満で切り替える Raft ベースのレプリケーションで、レプリカへの自動フェイルオーバーが3秒未満、ゼロデータロス
データのコピーを減らす データを持たず Raft のログだけを持つ witness node を置ける
シャードごとにクラウドを選ぶ Oracle Database が動く場所に加えて、OCI、Google Cloud、AWS、Azure といった複数のクラウドにまたがって、シャードごと・国ごとに配置先を選べる

ここで重要なのは、銀行の事例でアプリケーション層をインドに作り直していない点だ。スライドには、複雑なアプリケーション層をインドに重複して配置する必要がなく、変更も最小限だったと書かれていた。登壇者は、規制の対象になるデータを持つテーブルだけをインドに置き、アプリケーションは US で動かし続けていると説明していた。

US とインドにまたがる1つの分散データベース)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き
US とインドにまたがる1つの分散データベース)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き

発表のポイント

1. Raft レプリケーションと witness node

Raft レプリケーションは、Raft のクォーラムに基づくレプリケーション方式だ。各シャードがデータの一部について書き込みと読み込みを受け付ける active-active の対称構成で、シャード間の同期レプリケーションによりゼロデータロスを実現するとしている。登壇者は、障害時はアプリケーションの振り分け直しまでを含めて3秒未満で終わると説明した。

Raft ベースのレプリケーション)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き
Raft ベースのレプリケーション)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き

データを持たず Raft のログだけを持つ witness node も置ける。witness node を使うと、シャード間に保存するデータのコピーを減らせる。witness node は通常のフォロワーと同じくコミットのクォーラムに参加するため、フェイルオーバー時のゼロデータロスは保たれる。

2. 複数のクラウドにまたがる配置とクラウドサービス

登壇者によれば、この機能は Oracle Database のバイナリに組み込まれているため、Oracle Database を動かせる場所ならどこでも動く。それに加えて、シャードはオンプレミス、クラウド、複数のクラウドにまたがって置ける。スライドには、クラウドのロックインを避けられること、配置先として VM、Bare Metal、ExaDB-D、Exascale などがあることも書かれていた。

シャードをオンプレミスと複数のクラウドに配置できる)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き
シャードをオンプレミスと複数のクラウドに配置できる)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き

OCI のクラウドサービスとしては、GDD と Exadata Database Service on Exascale Infrastructure を組み合わせた「Globally Distributed Exadata Database on Exascale Infrastructure」が紹介された。スライドの表記は “Always-on, scalable serverless architecture” と “Powerful, easy to use, and cost-efficient” だ。

Globally Distributed Exadata Database on Exascale Infrastructure)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き
Globally Distributed Exadata Database on Exascale Infrastructure)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き

デモでは、OCI コンソールの「Create Globally Distributed Exadata Database on Exascale Infrastructure」の画面で、地図からロケーションを選んでいた。ノードの設定欄には、ノードごとに Region と Cloud provider を選ぶ項目があった。登壇者は、複数のクラウドにまたがって複製することで、クラウド単位の障害にも備えられると話していた。

ノードごとにクラウドプロバイダーを選ぶ設定画面)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き
ノードごとにクラウドプロバイダーを選ぶ設定画面)(入稿時にスクリーンの範囲で切り抜き

セッションの後半は PayPal の登壇者に交代した。内容は本記事では扱わない。

最後の Key Takeaways では、Vector Search や Agentic Workloads にも対応すること、Exascale のサーバーレスなアーキテクチャでコストを抑えて伸縮できることが挙げられていた。

提供状況や、機能がどのバージョンから使えるかは、公式の情報を確認いただきたい。

ユースケースの考察

ワークロードは各クラウドの得意な場所に置き、データは1つにまとめる

複数のクラウドを使い分ける案件では、アプリケーションを作ったクラウドにデータベースも合わせることが多い。その結果、データがワークロードに引きずられ、別のクラウドの強みを使いたくなったときに、データの移行や同期が負担になる。GDD はシャードごとに配置先を選べるので、OCI ともう1つのハイパースケーラーにシャードを置き、それぞれのクラウドで動くアプリケーションの近くに、そのアプリケーションが主に使うデータを置く構成が考えられる。アプリケーションから見れば単一の論理データベースのままなので、ワークロードはクラウドごとの強みに合わせて選べる。前提として、どのデータをどのクラウドのシャードに置くかを決めるシャーディングキーの設計と、クラウド間のネットワーク遅延の見積もりが要る。クラウドサービスをどのクラウドで使えるかも、構成を決める前に確かめる必要がある。