DX開発事業部の開江です!

本記事では、Google Cloud Next Tokyo ’24 の Day2 にて行われたセッション「敬和会が目指す地域統合ヘルスケア実現に向けた生成AIの活用」について紹介します。

セッション概要

タイトル

敬和会が目指す地域統合ヘルスケア実現に向けた生成AIの活用

スピーカー

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 北原 雄高 氏
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 荒谷 裕介 氏
社会医療法人敬和会 佐藤 昇 氏

生成AIの導入背景

セッションの冒頭では、医療従事者の業務負担が増大している現状が説明されました。

特に、診断書などの書類作成は時間と労力がかかる業務であり、最新のAI技術を用いることで患者、医療・介護従事者に価値を生み出すことを目指しています。

生成AI導入にあたっての実証実験では、以下の2つのテーマが選定されました。

  • 介護保険制度の案内
  • 退院サマリの作成

介護保険制度の案内

利用者が介護保険について質問すると、インデックス化されたパンフレットの情報をもとに、AIが生成した回答文をデジタルアバターが読み上げるシステムです。

応答時間や回答の正確性が評価の対象となり、検証が行われました。

バックエンドではDialogflow CXが自然言語でのコミュニケーションを処理し、自然な対話フローを実現しています。

文章生成にはGoogle Cloudが提供する基盤モデルの一つであるtext-bisonが使われているとのことです。

セッションでは、実際にデジタルアバターが質問に回答するデモ動画も流れました。

音声認識の感度は良好で、大分県の方言にも対応できたとのこと。

一方で、同じ質問でも毎回異なる回答が返されるなど、生成AIならではの課題もあるようです。

退院サマリの作成

退院サマリとは、患者の入院経過や検査所見など、入院中の治療内容をまとめた記録です。

この作業は膨大な文字数を読み込まなければならない上に作成頻度が高く、医療従事者にとって大きな負担になっているそうです。

こちらの検証でも介護保険制度の案内と同様にtext-bisonを使用しています。

プロンプトエンジニアリングに加え、学習データを与えてファインチューニングを実施したとのこと。

指示通りに退院サマリを出力できていることがわかります。

日付ごとに箇条書きで記載することが難しかったものの、ファインチューニングによって実用レベルまで精度を向上させることができたそうです。

個人情報の取り扱い

セッションでは個人情報の保護についても言及されました。

生成AIを利用する際のデータの取り扱いには慎重な対応が求められます。

特に医療分野においては厳格なプライバシー保護が不可欠なため、条件に応じてクラウド環境とオンプレミス環境を使い分けているそうです。

まとめ

セッションの最後に示された「AIは、人から仕事を奪うものではなく、人間が人間らしい仕事に注力するためのもの」という言葉が非常に印象的でした。

AIが医療現場での書類作成や情報整理を効率化することで、医療従事者がより患者に対するケアや診療に時間を割けるようになります。

私の家族が医療従事者ということもあり、大変興味深く聴講したセッションでした。