はじめに

こんにちは!開発エンジニアのクリスです!

Google Cloud Next Tokyo ’25に参加してきました!数あるセッションの中でも特に注目を集めていた「Google Workspace 全庁導入の舞台裏:生成 AI が変える、新たな自治体の働き方と今後の展望」のレポートをお届けします。

札幌市様、秋田県様という先進的な自治体が、なぜGoogle Workspaceを選んだのか?そして、生成AIをどのように活用し、未来の働き方を描いているのか?行政のDXに関心のある方には必見の、リアルな声が満載のセッションでした!

セッション概要

タイトル:Google Workspace 全庁導入の舞台裏:生成 AI が変える、新たな自治体の働き方と今後の展望

登壇者:

  • 坪谷 賢一 氏(札幌市 デジタル戦略推進局)
  • 伊藤 隼人 氏(秋田県 企画振興部)
  • 伊藤 維 氏(Google Cloud Google Workspace 本部)

このセッションは、Google Cloudの伊藤維氏がファシリテーターとなり、実際にGoogle Workspace(以下、GWS)を全庁導入した札幌市と秋田県の担当者を迎え、導入の背景から今後の展望までを深掘りしていくというものでした。

GWSとGeminiの完全統合:ゲームチェンジの始まり

セッションの冒頭で強調されたのは、GWSの大きな進化です。昨年までアドオン(追加機能)だった生成AI「Gemini」が、今年からGWSのライセンスに標準で含まれるようになったのです。これにより、全ての職員が追加コストを意識することなく、日常業務で当たり前のように生成AIを使える環境が整いました。

生成AIが自由に活用可能になったことで大きくコストの削減が実現でき、Geminiの利用で週105分間の時間削減を実現されています。「もう生成AIのない生活には戻れない」という言葉が、そのインパクトを物語っていました。

また、特に印象的だったのがNotebookLMのデモンストレーションです。

庁内のガイドラインや過去の資料などをソースとして読み込ませるだけで、まるでその道の専門家のように質問に答えてくれます。さらに、指示次第で回答のスタイルを変えたり、男女の対話形式で音声解説を生成したり、写真をもとに動画を作成したりと、その多彩な機能には驚かされました。

自治体が積極的にDX化を進んでいる

去年から今年にGWSを採用した自治体は233%増加していることを提示されました。

GWSの強固なセキュリティとその柔軟性が大きなポイントだそうです。

【秋田県の事例】若手の声から始まった、全庁を巻き込むDX

まずは東北三大祭り(竿燈まつり)、と日本三大花火大会の称号を自慢する秋田県の事例から見ていきましょう

秋田県の取り組みは、数年前に導入したChromebookから始まりました。その成功体験を元に、若手職員から「GWSを使って業務を効率化したい」という声が上がり、1200人規模・3ヶ月間のPoC(概念実証)がスタートしたそうです。

導入前後の変化:アナログからクラウドコラボレーションへ

  • Before:職場のPC、紙、電話が中心。情報共有にタイムラグがありました。
  • After:マルチデバイス対応、ペーパーレス化、チャット活用で、いつでもどこでもスピーディな連携が可能に。

参考までに、評価シートが提示されています。

なぜGWSだったのか?

チャットやカレンダーなどの機能検証を経て、最終的にGWSの採用を決定。その決め手は以下の点でした。

  • Office資産との親和性:既存のOfficeファイルも問題なく扱える。
  • ブラウザで完結:スペックの高くない自治体のPCでもサクサク動く。
  • セキュリティ:ローカルにデータを置かない思想と、Chrome Enterprise Zero Trustでセキュリティ要件をクリア。リンク切れなどの細かいストレスも解消されたそうです。

導入後はDXが活発化し、「組織全体が動いている実感がある」と伊藤氏は語ります。

セキュリティ要件

セキュリティガイドラインのαモデルの採用とBYODの活用で、GWSの柔軟性の最大限を発揮します。

GWSツールへの移行は再来年度まで完全に移行されるようです。

生成AIが住民サービスを向上させる

現在、GWSに搭載されたNotebookLMを議会答弁に検証中とのこと。

議事録作成などをAIに任せることで、職員はより住民サービスといった「人でなければできない業務」に注力できるようになります。

もちろん、「AIの回答を鵜呑みにせず、上司がファクトチェックする」といった課題はありますが、それを乗り越えた先にある未来は非常に明るいと感じました。

【札幌市の事例】コスト削減と「新しい働き方」の両立

人口約196万人を抱える北海道の中核都市、札幌市。

同市ではICT環境の課題 – クラウドサービスを活用できない「αモデル」を語りました

秋田県と違い、自由度の高いコミュニケーションを実現する「βモデル」への移行の必要性を感じられました。

導入の経緯:コロナ禍とコスト課題が後押し

もともとはコロナ禍を背景にMicrosoft 365を導入していましたが、コスト面で課題を抱えていたとのこと。様々な要件を検討した結果、今年、GWSへの完全移行を決断されました。

期待と不安

  • 期待:5年間で約30%ものコスト削減を見込んでいる。
  • 不安:長年慣れ親しんだOfficeソフトからの変更に対する職員の戸惑い。

この移行は大きな挑戦ですが、それを上回るメリットを感じているようでした。

GWSへの移行とともにNew Work Styleガイドラインを作成

業務効率化を志向する働き方へのシフト、全職員に対し新環境への意識改革を促す、創造性と自律性を尊重する新たな組織文化を醸成することをフォーカスしています。

GWSが変えた会議と働き方

GWSの導入で、札幌市の働き方は大きく変わりました。

業務体制が「組織(課)単位のチーム」から、「タスク単位のスペース」まで概念を変化されました。

特に会議のあり方は劇的に変化し、従来の情報共有が中心だった場から、アイデアを出し合うクリエイティブな活動の場へと生まれ変わったそうです。

先行利用した部署からは「とにかく動作が軽い、速い!」「アプリの立ち上げを待たずに済む」といったポジティブな声が多数上がっています。

生成AIの民主化:誰もが開発者になれる時代へ

札幌市では、すでにMicrosoft Copilotを利用していましたが、今後はGeminiとNotebookLMの活用を組織全体に広げていく方針です。内部でのAI研修も実施しており、職員のリテラシー向上に力を入れています。

驚くべきは、その開発スピードです。GeminiとビジュアルプログラミングツールのCanvasを組み合わせることで、専門知識のない職員でも30分程度で業務改善アプリのプロトタイプを完成させ、特設サイトにいたってはわずか5時間で作成したというから驚きです。まさに「生成AIの民主化」が現場で起きている証拠だと感じました。

まとめ:自治体DXの未来を拓く2つの鍵

今回のセッションを通じて、自治体における働き方改革の未来を照らす2つの重要な鍵が見えました。

  1. 生成AIの民主化:GWSとGeminiの統合により、専門家でなくても誰もがAIの恩恵を受け、業務改善のアイデアを即座に形にできる時代が到来しました。これは、職員一人ひとりの創造性を解放し、組織全体の活力を生み出します。
  2. 本来業務への集中:AIに任せられる作業(議事録作成、資料要約など)を徹底的に効率化することで、職員は人にしかできないクリエイティブな業務や、住民と向き合う時間により多くのエネルギーを注げるようになります。

秋田県と札幌市の事例は、単なるツール導入の話に留まらず、クラウドとAIを前提とした新しい行政の姿、そして未来の働き方そのものを示す、非常に示唆に富んだ内容でした。

さいごに

「お役所仕事」なんて言葉は、もはや過去のものになるかもしれません。今回のセッションで紹介された両自治体の先進的な取り組みは、GWSと生成AIが、いかにパワフルな変革のエンジンとなり得るかを証明していました。

私もこのセッションを通して、業務改善の魂が燃えてきましたので、一刻も早く社内業務改善のタスクに着手したいところです!

また、弊社もGoogle Cloudの支援をしておりますので、もしGoogle Workspaceの魅力が伝わりましたら、ぜひご相談いただけますと幸いです!

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