はじめに

DX開発事業部の鹿嶋です。

8/5(火)に行われた「Google Agentspace を実際に導入した効果と今後の展望」のセッションレポートとなります。

セッション情報

セッション概要(※公式ページより引用)

MIXI では今年5月、国内で初めて Google Agentspace を導入し、全社展開に向けて準備を進めてきました。Agentspace は、Google Cloud が提供する、企業内の様々な情報へのアクセスと活用をAIエージェントで効率化するプラットフォームです。本セッションでは、導入の経緯、デモンストレーションを交えた使用例から、業務プロセス改善の実例、今後の展開計画まで具体的事例を交えてお話しします。

登壇者

  • 白川 裕介 氏(株式会社MIXI)

セッション内容

1. 導入前の課題

MIXI様では、社内情報のサイロ化や検索の非効率性といった複数の課題を解決するため、様々な観点から具体的な改善プランの策定を慎重に進めていました。
その中で、Agentspace の導入を検討し、PoC(Proof of Concept)の形式で検証を進められたとのことです。

Agentspace を選択された理由としては、「既存ツールとのシームレスな連携」「ACLを活用した閲覧制御」「全社展開を見据えたスケーラビリティ」などといったポイントが挙げられました。

ご説明いただいた導入前の主な課題は以下のとおりです。

  • 情報の分散
    • 複数にまたがるデータソースにデータが点在
    • 横断的な検索手段がない
  • 検索の非効率性
    • データソースごとに個別検索
    • 必要な情報の発見に時間を要する
  • 部門間の情報共有の壁
    • 部門により利用しているツールが異なる

2. 検証プロセス

PoC は以下の4つのフェーズに分割して検証を実施されました。

  • フェーズ1: PoC の体制構築
  • フェーズ2: 初期検証(技術的な実現可能性を確認)
  • フェーズ3: 限定公開(各部署の主要なステークホルダーにて有用性を評価)
  • フェーズ4: 実務検証(4つの部署での実践的な活用)

フェーズ1: PoC の体制構築

このフェーズでは PoC 実施前の体制構築を実施

フェーズ2: 初期検証

対象ユーザを「導入先のプロジェクトメンバー」「情シス/セキュリティ担当」に設定し、各種ツールとの連携方法の確立や ACL などの基本動作の検証を実施

フェーズ3: 限定公開

対象ユーザを「各部門のステークホルダー(役職者/AI 関連業務担当者)」に設定し、前者導入前の限定利用による安全性・有用性を評価、活用事例の創出に重きを置いて検証を実施

フェーズ4: 実務検証

対象ユーザを「実際に稼働しているプロダクトの関係者」「情シス/DX 推進部門」に設定し、連携するデータの絞り込みと各部署に最適化した事例の創出、実際の業務データを使用しての実務への応用方法の検証を実施

この PoC の進め方で特に重要なポイントは、リスクを段階的に管理しつつ、実用的な価値を多角的に検証し、組織全体へのスムーズな導入と活用を確実にするというアプローチです。

初期の技術検証から始まり、実務環境での応用検証へとフェーズを細分化することで、各段階で得られるフィードバックを継続的に改善に活かし、ビジネス全体への貢献を見据えた実効性の高い成果を生み出すことに重点が置かれているように思います。最終的な全社展開というゴール(成功)の確度を飛躍的に高める PoC プロセスであると感じました。

3. 実際の活用事例

プロダクト部門、間接部門の2つの部門での活用事例をそれぞれご紹介いただきました。

① プロダクト部門の活用事例

  • 資料検索・要約の効率化
    • 大量の資料から特定の情報を素早く見つけ出し、要約も同時に提供
  • 過去案件・類似事例の調査
    • 過去の不具合チケットから関連する改修情報などを見つけ出し、関連性を整理
  • 施策・イベントの実施履歴管理
    • 特定の時期や条件での施策・イベントの実施状況を調査

② 間接部門の活用事例

  • Confluence の情報検索と自動起票
    • Confluence の情報検索ならびに未起票の問い合わせに対してはチケットを自動起票
  • ヘルプデスク一次支援対応
    • 問い合わせの提携・個別対応の判断と初期対応を支援

やはり「横断的資料検索」「過去・類似情報の調査」「自動でのチケット/メールの起票」といった Agentspace が真価を発揮する場面での利用がなされており、自動でチケット起票を行う実際のデモにおかれましても、その特性が最大限活かされておりました!

4. 実際の導入効果

MIXI様にて実際に Agentspace を導入した効果として、以下のようにご説明をいただきました。

  • 検索性能と業務効率の向上
    • 複数のデータソースの情報を自動統合して要約し、情報集時間を大幅に短縮
    • 曖昧なキーワードでも関連資料を正確に特定
  • 情報処理と業務品質の向上
    • 大量の資料から検索と要約を同時実行
    • データの関連性を自動で整理
    • 対応者の経験に関わらず、一定品質の業務対応が実現可能
  • 多様な業務への活用可能性
    • 資料検索・要約のみならず施策履歴管理まで幅広く活用
    • ヘルプデスク業務の一次対応を支援
  • 導入・拡張の容易性
    • Google Workspace、Slack、JIRA、Confluence などと標準統合
    • データソース連携もコネクタを利用することで容易に対応可能
    • 導入までの開発工数とリードタイムを大幅に削減

Agentspace が単なる情報検索ツールに留まらず、業務全体の質と効率を劇的に向上させ、さらに幅広い業務領域での活用を可能にする強力なプラットフォームであることが、効果として表れていると感じました。

5. 得られた知見と成功のための要素

Agentspace の導入・検証の一連のフローを通じて、MIXI様では前述のような顕著な効果が実証されました。
この成功の背景には、ツールを導入・活用する上で特に重要となる、以下の2つの重要な知見があったとのことでした。

① データの選別と品質管理の重要性

  • データ範囲が広すぎると精度が低下する
  • 古い情報が残り続けることによる参照リスクがある
  • プロンプトの工夫に頼るのではなく、データ選別と品質管理が大切になる

② 業務プロセスと連携設計の重要性

  • 導入だけでは利用促進に直結せず、既存フローの一部置き換えに留まってしまう
  • 既存フローとの不整合により、AI の利用範囲が制限される場合がある
  • 業務フロー可視化と AI 導入による改善ポイントを明確化する
  • AI 活用前提のフローへの再構築が導入効果を最大化する

まずはデータの蓄積と整備で「データを使える状態」とすること、そして既存の業務フローにとって「どこを AI に置き換えることで最大限のインパクトがあるのかを可視化」すること。
これらが成功の鍵である、とセッションでは結論づけられていました。

おわりに

今回のセッションを通じて、Google Agentspace の導入事例を深く知ることができたと同時に、技術導入の成功が 「ツールの力」だけでなく「人間がデータをどう管理し、業務プロセスをどう見直すか」 にかかっているという点が非常に参考になりました。DX 推進は、単に最新技術を導入するだけでは達成できず、まずは人間とテクノロジーが協調し、相互に価値を高められるビジョンを描けるかどうかが、成功につながるのだと強く感じることができました。

この学びを胸に、私もお客様と共に新たな価値を創造していきたいです!