要件定義書からテスト仕様書を作成してみる

システム開発において、要件定義書は「何を開発するか」を示すものです。そして、その要件が正しく実装されているかを検証するために必要なのがテスト仕様書ですが、ゼロから作成するのはとても大変です。

今回、私はAIツールの「Gemini」(※Google Workspace連携機能を利用)を活用して、この総合テスト仕様書作成の効率化を試してみました。

 

試行錯誤のプロンプト

試行1:まずはシンプルに「このファイルを元に総合テスト仕様書を作成して」

  • Geminiからの回答: なんとなくテスト仕様書っぽいものは返ってきました。しかし、項目数が少なく、正直そのまま使えるレベルではありませんでした。AIも「なんとなく」しか分からないようです。

試行2:既存フォーマットを「お手本」に指示「このファイルを元に総合テスト仕様書を作成して。テスト項目はこのフォーマットを参考にして [既存のテスト仕様書URL]」

  • Geminiからの回答: 指定したスプレッドシートのフォーマットをしっかり学習し、かなりイメージに近い形で回答を返してくれました。しかし、まだ要件定義書の内容をすべて網羅しているわけではありませんでした。完璧には程遠いです。

試行3:不足要件の明確化「要件定義書の抜けている項目があるのでそれも追加して。また画面一覧に記載しているすべての画面を項目に入れて。」

  • Geminiからの回答: 特定の機能は追加されました。しかし、多数ある「各種設定画面」が「各種設定」というざっくりとした項目にまとめられてしまいました。一つ一つの画面表示を確認したいので、もう少し詳細の内容が欲しいところです。

試行4:具体的な画面数を指定「要件定義書内の画面一覧の項目に記載してある○○個の画面すべてテスト項目に追加して」

  • Geminiからの回答: このプロンプトでは追加してくれませんでした。どうやら「○○個」という数字だけでは、AIがどの画面を指しているのか正確に理解できなかったようです。

試行5:まるッとコピペ「要件定義書の以下の部分をテスト項目に追加して。各画面ごとに項目を分けて。[画面一覧のテキストを丸ごとコピペ]」

  • Geminiからの回答: 要件定義書から抜き出した画面一覧のテキストをそのまま渡したところ、各画面ごとの表示テスト項目が期待通りに追加されました。正確なインプットには正確なアウトプットで応えてくれます。
  • しかし: 残念ながら、元々Geminiが回答してくれた基本的な機能に関する項目がごっそり抜け落ちてしまいました。AIは常に「最新の指示」を優先し、過去の情報を網羅しない傾向があるようです。

試行6:過去の回答の復活依頼「元々回答してくれたテスト仕様書にあった機能が無くなったので、それを追加して」

  • Geminiからの回答: なぜか回答が途中で途切れてしまい、何度試しても最後まで出力されませんでした。これはAI側の安定性の問題か、出力文字数制限によるものかもしれません。

最終的な成果と所要時間

結局、最後の試行で回答が途切れてしまったため、私はプロンプト3とプロンプト5で得られた回答を「手動で結合する」というアナログな方法で、最終的なテスト仕様書を完成させました。

  • 所要時間: Geminiとのやり取りに約30分、その後の見直しや手動での微修正に約1時間。合計で約1時間30分

AI協業の感想:大幅な時間短縮と今後の可能性

今回の試みで、AIとの協業の可能性を強く感じました。

もし、私がこの総合テスト仕様書をゼロから手作業で作成していたら、要件定義書の読解、項目出し、フォーマットへの落とし込みなどで、最低でも丸一日はかかっていたでしょう。それが、AIとのやり取りと手動修正を含めてもわずか1時間30分で完了したのは、大きなメリットです。

AIはまだ完璧ではなく、特に、指示のニュアンスを完全に理解できなかったり、過去のコンテキストを忘れてしまったりする点は、人間が介入して補完する必要があります。しかし、その「叩き台」を生成する能力、そして「フォーマットに従う」といった明確な指示への対応能力は、素晴らしいものがあります。

まとめ

今回の経験から、こちらのプロンプト次第で非常に有用なツールであることを確認できました。以下のことを意識し今後も活用していければと思います。

  • 具体的な指示と明確なフォーマットは必須。
  • AIの回答を盲信するのではなく、必ず人間がレビュー・修正する。
  • 複雑な要求は、段階的に、かつ具体的に分解して指示する。