こんにちは。デザイン事業部でWebディレクターをしている西嶌(にしじま)です。
今回は、『行動経済学が最強の学問である』という書籍を読んで得た気づきや、業務の中で実践できそうなポイントについてまとめてみました。
「人は必ずしも合理的に判断するわけではない」という前提のもと、どのように情報を届けたり、選択肢を設計すればよい行動を促せるのか。
実務にも応用できそうな知見がいくつもありましたので、自分なりに具体例や応用方法を考えながらご紹介します。
そもそも「行動経済学」とは?
行動経済学は、経済学に心理学の視点を取り入れ、人が実際にどのように意思決定を行うのかを探る学問です。
今では多くの大学で教えられ、行政施策や企業のマーケティングにも応用されています。
たとえば、同じ内容でも「どのように伝えるか」によって受け取り方が変わることがあります。
こうした人の思考や選択の癖を理解することで、UI設計やサービスの導線づくりに活かすことができます。
行動経済学から学ぶ3つの心理効果とUI/UXへの応用
1. 選択のパラドックス
なぜ多すぎる情報は人を疲れさせるのか?
選択肢が多すぎると、人は決断が難しくなり、最終的に選択を避ける傾向があります。
多くの選択肢は自由度が高い反面、迷いや不安も増えるため「何も選ばない」結果につながることも。
具体例
- オンラインショップで商品カテゴリーがあまりに細かく多すぎると、ユーザーがどれを選ぶべきか迷い、購入を断念する
- サブスクリプションのプランが多すぎると、どのプランが自分に最適か判断ができず登録をためらう
UI/UXでの活用方法
- プランや商品の選択肢は代表的なものに絞り込み、ユーザーにおすすめを明示して選びやすくする
- 各プランの違いやメリットをシンプルに比較できる表を用意し、直感的に理解できるようにする
活用シーン
- ECサイトのカテゴリ設計
- サービスプラン選択画面
- メニュー構成やナビゲーション
2. デフォルト効果
なぜ人は「最初から選ばれているもの」に流されやすいのか?
人は、あらかじめ選ばれている選択肢(デフォルト)をそのまま受け入れる傾向があります。
これは「意思決定の面倒さ」や「損をしたくない心理」、そして「推奨されているように感じる」ことが理由です。
具体例
- メールマガジンの登録が最初からチェック済み → 多くの人がそのまま登録する
- 有料オプションがデフォルトで選択されている → 外さずそのまま申し込むユーザーが増える
- 配送方法の選択肢が「最短」で初期設定されている → 考えずにそのまま進む人が多い
UI/UXでの活用方法
- 推奨したい選択肢をあらかじめ選んでおくことで、ユーザーの意思決定をサポートできる
- なぜその選択肢がデフォルトなのか補足説明を添えると、納得感が増し不信感を避けられる
- チェック状態は目立たせ、変更可能であることを明示することでユーザーの信頼を損なわない
活用シーン
- サブスクリプション申込時のオプション加入
- ECサイトでの配送・支払方法選択
- プライバシー設定や通知設定画面の設計
3. 損失回避バイアス
なぜ人は「得をすること」よりも「損をしないこと」に強く反応するのか?
人は、同じ金額でも「利益を得る喜び」より「損失の痛み」の方を強く感じます。
このため、損を回避できる選択肢があると、それに惹かれやすくなります。
具体例
- 「あと3名様で終了」の表示を見ると、「今買わないと損をするかも」と感じ、購入を促進する
- 無料トライアル期間終了時の通知で「使えなくなります」と伝えると、継続意欲が高まる
UI/UXでの活用方法
- メッセージに「今だけ」「逃すと損」などの表現を入れて訴求力を高める
- 利用中の機能を減らす場合には「この機能が使えなくなります」と損失面で説明する
- プラン変更などでは「変更後は〇〇がご利用できなくなります」といった表示を加える
活用シーン
- LPやバナーでの訴求文
- サブスクリプションサービスの課金誘導
- ECサイトのタイムセール
まとめ
UI/UXに活かせる行動経済学の代表的な心理効果についてご紹介しました。
「人は必ずしも合理的に判断するわけではない」という前提に立つと、情報の見せ方や選択肢の設計が、ユーザーの行動に大きな影響を与えることが見えてきます。
これからも新たな知見をキャッチアップしながら、ユーザーにとって迷いなく、心地よく行動できる設計を意識していきたいと思います。
参考になったサイト
- 「人は“見せ方”で動く|UXデザインに活きる行動経済学の2大法則」
- 「UI/UXデザインに行動経済学のナッジ理論を活用」 株式会社アルファシステムズ