本記事は、Japan AWS Top Engineers であるクラウドインテグレーション事業部ソリューション開発セクションの畠山大治さんに監修をいただき執筆しております。
はじめに
AWSの利用を始めたときに気になるのが「料金の見える化」です。
クラウドは簡単にリソースを作成できますが、気づかないうちに課金が発生していたというケースもよくあります。
その対策として便利なのが AWS Budgets(バジェッツ) です。
Budgetsを使うと、あらかじめ決めた予算を超える前にメールで通知を受け取れるようになります。
AWS Budgetsとは
AWS Budgets は、AWSアカウントのコストや使用量を定期的に監視し、設定したしきい値を超えそうなときに通知してくれるサービスです。
たとえば、以下のようなことができます。
- 月ごとのコスト上限(例:$10)を設定
- その金額の「10%」や「100%」を超えたら通知
- しきい値を超えたら通知(メール・SNS経由)
Budgetsを使うメリット
- 請求額を事後確認ではなく事前に気づける
- 無料枠や個人検証環境のコストを把握しやすい
- チームで共有できる形でアラートを飛ばせる
クラウドの料金管理は、慣れないうちは難しく感じるかもしれませんが、Budgetsを設定するだけでも「見えない不安」を減らすことができます。
料金体系
| 内容 | 料金 |
|---|---|
| 毎月2つまでの予算を無料で作成可能 | 無料 |
| 3つ目以降の予算ごとに課金 | 約 $0.01 / 1 / 日(※月あたり約 $0.30) |
個人利用や学習環境では、ほとんどの場合「無料の範囲」で十分使えます。
(最新の料金は AWS Budgets 公式料金ページをチェック)
AWS BudgetsとCost Explorerの違い
AWSの料金関連サービスには、Budgets のほかに Cost Explorer もあります。
どちらもコストを把握するためのツールですが、次のような違いがあります。
| 項目 | AWS Budgets | Cost Explorer |
|---|---|---|
| 目的 | コストの監視と通知 | コストの分析と可視化 |
| 機能の特徴 | あらかじめ設定した「予算上限」を超えそうなときにアラートを送信 | サービス別・期間別などで実際のコストをグラフ表示・分析 |
| 通知機能 | メール・SNS・Slackなどに通知可能 | 通知機能なし |
| 利用タイミング | 「使いすぎる前」に気づく | 「使ったあと」に振り返る |
まとめると、Budgetsは事前にアラートを受け取る予防ツールであり、Cost Explorerは発生したコストを可視化・分析する分析ツールになります。
ハンズオン
ここでは、Budgetsだけを使ってメール通知を受け取る設定を行います。全体の流れは以下の通りです。
- Budgetsを開く
- 新しい予算を作成
- 予算額と期間を設定
- しきい値と通知先メールアドレスを設定
- 確認メールを承認
- 通知が届くか確認
Budgetsを開く
- マネジメントコンソールを開き、「budgets」を検索
- 「予算を作成ボタン」をクリック
予算タイプを選択
- 「カスタマイズ」を選び、「コスト予算」を選択
- 「次へ」ボタンをクリック

予算の基本設定
- 予算名 : budget-alert-test(任意)
- 期間 : 月
- 予算更新タイプ : 定期予算
- 予算額 : $1.00
- 範囲 : すべてのAWSサービス(デフォルト)
設定したら「次へ」

しきい値と通知先の設定
- しきい値 : 10
- 単位 : 予算額の%
- トリガー : 実際のコスト
- 通知方法 : Eメール
- 受信者 : 自分のメールアドレス
設定後、「次へ」→「予算を作成」

確認メールを承認する
- 入力したメールアドレス宛に「AWS Budgets Notification Confirmation」というメールが届きます。
- メール内の「Confirm subscription」リンクをクリック。これを承認しないと通知は届きません。
通知を確認する
Budgetsには手動テスト機能がないため、以下で確認します
- 実際に使用料が発生して予算を超える
- 一時的に しきい値を 1% などに下げて、超過を意図的に起こす
トラブルシューティング
| 状況 | 対応策 |
|---|---|
| メールが届かない | 迷惑メールフォルダを確認(差出人:no-reply@sns.amazonaws.com) |
| 遅延している | 初回利用時(Cost Explorer有効化直後)は最大24時間かかることも |
| 再設定したい | Budgets画面から「削除」→「再作成」でもOK |
まとめ
- Budgetsだけでもメール通知は可能(SNSやSlack連携なしでもOK)
- 初回は「Cost Explorerのデータ準備中」でグラフが出ないことがある(通常)
- 「Confirm subscription」メールの承認が通知の鍵!
AWS Budgetsを活用すれば、「気づいたら課金」を防ぎ、安心して学習や検証環境を運用できます!