New Relic Pathpoint 検証まとめ(ビジネスフロー可視化の実用性と運用観点)
本記事では、New Relic の Pathpoint を用いて、ECサイトを想定した「ビジネスフロー可視化」の挙動検証を行った内容をまとめます。
Pathpoint のステージ構成(Stage / Step)、Signal(APM / Logs / Synthetics / Alert)との連携、アラートの伝播ルール、運用設計上の注意点を中心に整理します。
公式ドキュメント:New Relic パスポイントの紹介
Pathpoint とは
Pathpoint は New Relic が提供する ビジネスプロセス可視化機能です。
従来の技術監視(APM / インフラ / ログ等)とは異なり、ユーザージャーニー全体を Flow / Stage / Step として表現し、工程単位の状態を俯瞰できることが特徴です。
例えば以下のようなフローを視覚化できます。
- 閲覧 → カート → 決済 → 配送
- ログイン → API 呼び出し → DB 更新 → レスポンス返却
各 Step に対して APM、ログ、Synthetics、カスタムメトリクス(NRQL)などの Signal を紐付けることで、どの工程が遅延しているか/どこで問題が発生しているかを一目で把握できるようになります。
こんな場面で Pathpoint が有効
Pathpoint は、以下のように「工程の状態」がそのままビジネス成果に影響するケースで特に有効です。
- ユーザー行動ステップがビジネス成果に直結するサービス(EC / 予約 / 決済 / SaaS など)
- 遅延やエラーが売上・CV へ直接影響する場合
- 障害時に「どの工程(Step)がボトルネックか」を最短で特定したい
- 技術チームとビジネスチームの認識を一致させたい
- 複数サービス・外部 API・DB が絡む構成を「一連の流れ」として俯瞰したい
Pathpoint は「技術監視」ではなく、ビジネス価値に直結する監視を実現するための機能と言えます。
Pathpoint のメリット
- ビジネスと技術の両者が「工程の状態」を共通認識として共有できる
- どの Step で体験劣化が起きているかを瞬時に判断できる
- 原因特定にかかる時間が短縮され、MTTR 改善につながる
- 技術指標だけでは見えない「業務影響・売上影響」の把握がしやすい
- マイクロサービス構成でも、フロー全体をつなげて可視化できる
導入前に必要な事前準備
Pathpoint を効果的に利用するためには、工程に紐付けるデータ(Signal)の準備と、フロー定義・粒度設計が重要です。
1. 監視データ(Signal)の準備
Pathpoint は Step に紐付ける Signal が必須です。以下のいずれか(または複数)が New Relic に送信されていることを確認します。
- APM データ
- インフラメトリクス
- ログ
- 外形監視(Synthetics)
- カスタムメトリクス(NRQL)
2. ビジネスフロー(Flow)の定義
可視化すべきユーザーフローを定義します。
- 閲覧 → カート → 決済 → 配送
- ログイン → API 呼び出し → DB 書き込み → レスポンス
3. Stage / Step の設計(粒度は細かくしすぎない)
- Stage:工程の大きな区分
- Step:Stage 内のより詳細な工程
例:Stage「決済」
└ Step「カード情報入力」「外部決済 API」「注文確定 API」
4. Step に紐付ける Signal の選定
重要なのは、ビジネスに関連の高い Signal を少数選ぶことです。詰め込みすぎるとノイズが増え、可視性が低下します。
5. タグ・メタデータの整理
- APM やインフラに適切なタグを付与する
- マイクロサービス構成の場合は Workload で関連エンティティをまとめる
6. Flow の分割を検討する
複数の大きなフローを無理に一つにまとめず、以下のように分割すると運用しやすくなります。
- 購入フロー
- 会員登録フロー
- API 呼び出しフロー
導入時の注意点(運用観点)
- Pathpoint は工程可視化に優れる一方、SLO/SLA のような厳密な分析には向かない
- Signal が不足している場合、正確な可視化ができない
- Step の設計はビジネスチームとの合意が必要
- 最初は小さく始め、検証しながら拡張するのが成功しやすい
検証目的
- Pathpoint によるビジネスフロー可視化の有効性を確認
- ステージ(Stage)・ステップ(Step)定義方法の理解
- APM / Browser / Infra / Logs など既存データとの連携動作
- アラートとの連携(SLO/SLI 代替可否)
- Pathpoint の制限や挙動の確認
- 導入可能性・運用インパクトの判定
検証フロー(全体)
- Pathpoint 機能の有効化
- 事前準備(タグ付け、サービス名の統一、NRQLの整理など)
- Business Process(ビジネス工程)の定義
- Stage(上位工程)の作成
- Step(下位工程)の作成
- 異常時の挙動確認
- 結果のまとめ(課題点・改善点)
検証結果
パターン①:Stage / Step と Monitor の基本連携
検証内容
基本的な Stage / Step の紐付けが正しく表示されるか確認します。
作業手順
1.Stage を 4 つ作成(例:Shop → Order → Notify → Deliver)

2.Step に Monitor を紐付け
3.想定どおりのヘルスが Pathpoint に反映されるか確認

4.Monitor をひとつ異常状態にして挙動を確認
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テスト結果
- Stage 内の Step が 1 つでも異常状態となると、Stage 自体が異常とみなされる
- Monitor を Step とした場合、Pathpoint 側で専用の閾値調整などはできない(Monitor 側の設計が前提)
パターン②:Synthetics を Step に紐付けた体験劣化可視化
検証内容
Synthetics(外形監視)を Step に紐付けて、体験劣化が可視化されるか確認します。
作業手順
1.API Monitor を Pathpoint に紐付け
2.レスポンスタイム劣化を発生させる
3.色変化(緑 → 黄 → 赤)を確認
テスト結果
- Synthetics monitor を作成するだけでは期待通りに動かず、アラート(Monitor)を作成して初めて想定通りの状態変化になった(色変化が出ないケースあり)
まとめ(運用に向けた所感)
- Pathpoint は「工程可視化」に強い一方で、SLO/SLA のような厳密な分析用途とは目的が異なる
- 工程に紐付く Signal が不足している場合、可視化自体が成立しない(まずテレメトリ設計が必要)
- Step を細かくしすぎると、ノイズが増えて運用しづらくなる
- 結局のところ、工程の状態は Alert/Monitor の設計に依存するため、「どの Signal を、どんな条件で異常にするか」が導入成否を左右する
終わりに
Pathpoint は、単なる障害検知ではなく「ユーザー体験や業務工程」の単位で状態を共有するための機能です。
特に、EC/予約/決済のように工程が明確で、体験劣化が成果へ直結するサービスでは、障害時のコミュニケーションや原因切り分けを高速化できる可能性があります。
一方で、工程の可視化はテレメトリ(APM/Logs/Synthetics)と Alert 設計が前提となるため、導入前に「どの工程を何で評価するか」を整理した上で、小さく始めて段階的に拡張するのが良さそうです。
Information
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