はじめまして、クラウドインテグレーション事業部MSPセクションの田所です。
2023年7月に業界未経験で入社し、右も左も分からない中でオブザーバビリティに出会い、感銘を受ける話です。
こんな方におすすめ
- クラウド業界に興味がある方
- 監視に関わる方
- オブザーバビリティが気になる方
こんな方にはおすすめしません
- 監視運用と聞くと寒気がする方
- すでにオブザーバビリティ熟練の方
目次
- アイレットMSPについて
- オブザーバビリティとの出会い
- New Relic FutureStack 2023 Tokyoに参加
- 興味がある方へ
1. アイレットMSPについて
MSPってなんだ?
私は入社してMSPというセクションに配属されました。
MSPとはマネージドサービスプロバイダの略で、平たく言うとお客様の代わりにITインフラの運用、保守、監視などを行うチームです。
クラウドに興味がある方ならAWSやAzureといったクラウドサービスの名前を聞いたことがあるかと思います。
主にそれらで構築したお客様のシステムやサービスに障害が起こっていないか、起こっていればその対応を行うお仕事です。
いくらでも挑戦できる環境
本記事は業界未経験で入社した研修中の見習いが、オブザーバビリティという監視の次世代の概念に出会い、事前学習し、イベントに参加して学びを得たという内容です。
本題に入る前に、中途入社で業界や自社を新鮮な目で見ている立場から、アイレットMSPについていくつか強調しておきたいことがあります。
イベントに行きたいと手を挙げたのが入社1ヶ月。
イベントに参加したのが入社2ヶ月。
そして今でも研修中です。
研修中でも、遠方でも熱意があれば挑戦を応援してくれる文化。
入社2ヶ月で興味分野をここまで学べるスピード感。
改めて振り返ってみても本当に濃密で、ここまでさせてくれたチームや会社に感謝を通り越して驚いています。
挑戦を応援する社風、スピード感のある社風を掲げる会社は数あれど、ここまでその文化が根付いている企業は珍しいのではないかと感じます。
未経験だから?年齢的に?関係ない!
読んでくださっている方の中には、未経験からIT業界を目指している方もいらっしゃると思います。
そして、未経験だから無理かも、、年齢的に無理かも、、と感じてなかなか踏み出せない方もいるかもしれません。
しかしそんな方に声を大にして言いたい。
30代後半未経験でしたが、踏み出した結果、自由に楽しく挑戦する毎日を過ごしています!
日々新しいことを知るワクワク、自分の長所を探しながら挑戦するドキドキ、そして今なら市場や業績が伸びていくウキウキ。
そんな感情に囲まれながら働いています。
それでは本題です。
2. オブザーバビリティとの出会い
「オブザーバビリティ」という単語を知る
入社後、MSPの奮闘をインタビューした記事に出会います。
監視運用を人力でひとつひとつ対応していたところに、自動化を取り入れることで劇的に業務効率を改善したという話です。
【cloudpack 監視運用の過去・現在・未来】運用保守は、ただ見守るだけじゃない。自動化・高度化によって、より安心で安全に。監視・インシデント対応レベルを進化させ続ける。
その中でオブザーバビリティの重要性は高まっており、アイレットではそれを強化していける体制をとっている、とあります。
この「オブザーバビリティ」とは一体何でしょうか?
手を挙げる
そう思っていたところで社内にイベント案内が流れます。
「オブザーバビリティを推進するNew Relic社がイベントを行います。興味ある方はぜひ!」
New Relic FutureStack Tokyo 2023
これはぜひ参加したいと思い、手を挙げます。
しかしまだ入社したてで研修中の身、そして関西居住というダブルの障壁。
それでも興味があったので、上司に直談判。
結果熱意が認められ?参加OKをもらいます。
なんて挑戦しがいのある会社、、!
ワクワクしながら勉強を始めます。オブザーバビリティってなんだ?
勉強してみる
システムと監視の変遷
年代 | システム | 監視 | イメージ |
---|---|---|---|
~2005年 | 1台のPCサーバーでWebシステム構築、Webサービス運用 | 5分に1回程度の死活監視と簡単なメトリクス取得 | |
~2010年 | 多数のサーバーで構築・運用 | 多数のサーバーに対応、監視データ取得の高頻度化 | |
~2015年 | クラウドインフラの登場 | 監視対象や設定を動的に変更 | |
~2020年 | Webサービスを複数のコンポーネントに切り分けるマイクロサービス化 | アプリケーション側やユーザー目線でのパフォーマンス測定 オブザーバビリティという概念の登場 |
|
2020年~ | システムはより複雑に? | オブザーバビリティが必須に? |
それでオブザーバビリティって?
クラウドの技術で、多種多様なインフラやソフトウェアを組み合わせてシステムを設計できるようになった。
そんな複雑に絡み合ったシステムでも、何が起こっているかしっかりと把握できること。
それが監視の次世代の概念、オブザーバビリティです。
元々は機械工学の用語で、
「外部の情報からシステムの内部状態をどれだけうまく推測できるかの尺度」
のことを指すそうです。
システムが複雑になればなるほど、単純な死活監視では根本原因が分からず、単純なリソース監視では本当に影響のある問題なのかが分かりません。
従来の監視方法では徐々に太刀打ちできなくなってきているのです。
そこで収集データを一元管理して、分析・可視化、そして解釈・評価することで、システムに何が起こっているか、何が問題かを常に把握できる状況にします。
これがシステムにオブザーバビリティが備わっている状態です。
もっとカジュアルに
私の好きなマラソンに例えてみます。
これだけ状況把握に差があるという例えです。
細かい点は目を瞑ってください。
あなたマラソン選手のコーチです。
得られる情報から選手にどんなアドバイスを送りますか?
まずは従来の監視です。
①走っている速度と心拍数が分かります。
スピードが速すぎたり、心拍数が高すぎたりすると最後まで持ちません。
なのでちょうどいいペースで走れるようにアドバイスできます。
悪くないですね。
次にオブザーバビリティを備えた次世代監視です。
①走っている速度と心拍数が分かります。
②選手が体感でどのくらいしんどいか、フォームが崩れていないかを観察できます。
③気温や湿度、コースの地形を確認できます。
④これら情報を組み合わせてアドバイスを提案してくれます。
これは、、すごい!!!
マラソンに特別詳しくなくても上手なアドバイスができそうですね。
これがオブザーバビリティです。
余計分かりにくいですか?
イメージできない方は私と一緒にランニングでもしましょう。
3. New Relic FutureStack 2023 Tokyoに参加
満を持して?イベント当日を迎えます。
数多くの講演やイベントブースがあったため挙げればキリがないですが、特に心に残っているものを抜粋です。
New Relic FutureStack Tokyo 2023
日本のDXとオブザーバビリティのこれから
登壇者:New Relic Inc, CEO ビル・ステイプルズ 氏、New Relic株式会社 代表取締役社長 小西 真一朗 氏
オブザーバビリティの重要性と、そこに対するNew Relic社の取り組みの話です。
概要
- New Relic社のミッション
- 「エンジニアのためのデータを」=エンジニアが感覚ではなくデータで判断を下せるような真のソースを志す。
- クラウドの普及とシステム安定稼働の重要性
- インフラを柔軟に手軽に準備できるようになった一方、システムは非常に複雑化している。
- そしてシステム安定稼働の重要性は増しており、30分のシステムダウンが1億円の損失になるケースもある。
- エンジニアはそれぞれのツールを使ってサイロ化するのではなく、共通のツールで協働しましょう。
- そこでNew Relic
- オールインワンのオブザーバビリティプラットフォーム。全てのデータ、全てのインサイトが一箇所に。
- 最新の技術と知見でお客様を手助けしてこそ価値。
- AWS Partner表彰、20,000名のユーザー登録達成などNew Relicは進化を遂げてきましたが、まだまだ進化は続きます!
事前に勉強したシステムの複雑化とオブザーバビリティの重要性をまさに説いていて、大きく頷くシーンがたくさん。
New Relic社は今後オブザーバビリティを推進するにあたって、理想的なミッション、ツールを携えているように思います。
またこの場でNew Relic社は、今後オブザーバビリティを盛り上げていく先駆者 “Trailblazer” を発表し、弊社MSPの大園が選出されました。
すでに動き出している社内外の次の展開に非常にワクワクしています。
【cloudpack MSP x オブザーバビリティ】New Relic Trailblazer に聞くオブザーバビリティ強化の取り組み in FutureStack Tokyo 2023
イオンのデジタルシフト戦略を支えるNew Relicプラットフォームの導入と効果
登壇者:イオンスマートテクノロジー株式会社 SREユニット/SREチーム リーダー 齋藤 光 氏
イオンスマートテクノロジー株式会社がNew Relicを導入した時の学びの話です。
概要
- 導入当時の監視の課題
- インフラのメトリクスは取れていたが、アプリのモニタリングが不十分だった
- モニタリング不足で障害に気づけないケースがあった
- 経験と勘に頼った影響範囲の特定をしていた
- 使用ツールがバラバラだった
- SLOの概念が弱かった
- 複数システムが複雑に絡み、障害調査が困難だった
- New Relicの良いところ
- ユーザーに近いところで監視できる
- APMに強い
- 1つのプラットフォームに集められる
- モバイル起点でバックエンドまでの流れが見えるようになった
- 原因と影響範囲を特定しやすい
- New Relicがもたらすモニタリング以外の効果
- オブザーバビリティ=未知の未知に対応できる体制になった
- アプリケーション → ミドルウェア → インフラの流れを全て見られる設計、運用になった
- 開発チームとインフラチームで同じダッシュボードを見て議論ができるようになった
導入前のシステムの監視の悩みをNew Relicで見事に解決し、パズルのピースをぴたりとはめたような気分になりました。
しかし同時に「ツールの導入だけでは不十分で、オブザーバビリティの意識を持った組織文化の醸成が不可欠」ともおっしゃっていて、プロジェクトの裏には涙ぐましい努力があったのだと感じました。
ツールも組織も高いレベルに引き上げて初めて本当の改善となる、そんな仕事の奥深さを垣間見ました。
Generative AIが変えるエンジニアのしごと
登壇者:New Relic株式会社 技術統括 コンサルティング部 兼 プロダクト技術部 部長 齊藤 恒太 氏
話題の生成AIがオブザーバビリティプラットフォームのNew Relicでも使えるようになるという話です。
概要
- New Relic Grokの登場
- ChatGPTもGitHub Copilotも今や不可欠な世界
- 業界初のGenerative AIオブザーバビリティアシスタントGrokをリリースします。
- 自然言語で誰もがオブザーバビリティツールを使いこなせる!
- New Relic Grokができること
- 導入&設定:データ収集、アラート設定など
- 問題の分析:テレメトリーデータとコンテキストから洞察と原因特定
- クエリ:自然言語からデータ検索クエリを生成、その逆も
- コードの修正:コードレベルの問題特定、修正
- Coming soon!
- New Relic Grok: https://newrelic.com/jp/platform/new-relic-grok
チャットでツールとやり取りしながら設定や分析、調整を行える、夢のような機能がもうすぐ実現します。
近未来のような世界に生きられる興奮と共に、この技術を生み出している人達がいるという事実に畏敬の念を抱かざるを得ません。
エンジニアは本当に偉大。
イベントを通しての学び
講演はまだまだたくさんありましたが、イベント全体で学んだことも負けず劣らずたくさんありましたのでご紹介です。
このイベントでオブザーバビリティに関する知識が増えたのはもちろん、講演を聞いたり、人と話したりして様々な刺激を受けました。
まさに Connect, learn, get inspired.
エンジニアの熱がすごい
イベント中もさることながら、イベント後もNRUG(New Relicユーザーグループ)として活動がありました。
そこでは各自、会社や個人単位でNew Relicを使ってシステムの改善をした話、導入時の苦労した話などをプレゼンし、またその後の懇親会でも熱く語り、、と登壇者や参加者の熱に圧倒されました。
技術が好きで来ている方ばかりで、「まだ業界数ヶ月で、、」と言う自分が少し悔しくもありました。
早く語れるようになりたい。
システムは生物のように
事前勉強や講演で何度も目にしましたが、システムが複雑化する流れは止まらないこと、そしてオブザーバビリティの重要性が増していくことは明らかです。
今後システムがどのような変遷を遂げるのか、New Relic株式会社 シニアテクニカルサポートエンジニア 伊藤 覚宏 氏によるシステムモデルの予測に妙に納得してしまったので共有です。
オルガノモデルというシステムの在り方を提唱しています。
- ITのシステムモデルは、時代と共にペットモデル → キャトル(家畜)モデル → オルガノ(臓器)モデルへと移り変わっていくと考えられる。
- ペットモデル:少数の個別サーバーをペットのように守る運用。
- キャトルモデル:AutoScalingで多数のサーバーを家畜のようにクラスタとして扱う運用。
- オルガノモデル(NEW!!):コンテナが細胞のように修復や死滅し、臓器のように機能を維持する。オーケストレーションにより生物個体を維持するような運用。
システムは生物のように新陳代謝しながら改善、維持、終焉するようになる、というものです。
そうなると一台のサーバーがダウンすること自体は何も問題にはならず、逆にそのような監視では何の情報も得られない。という未来像でした。
AIと脳に関しても同様ですが、あらゆるシステムが我々人体と近しい概念で稼働すると思うと何か壮大さを感じます。
MSPはどう変わるべきなのか?
オブザーバビリティを学ぶほどに気になるのがMSPの今後です。
システムの在り方も変わる、監視技術も変わる、その中でMSPはどう変わるべきなのか?
そんなことを思っていると、New Relic日本法人の小西社長がたまたまそこにいたので質問してみました。
「MSPは今後どのようなところで価値を出せるのか?」
素人の質問にもしっかり答えていただけました。
なんて気さくで親切な社長、、!
ざっくり言うと「より高度な領域で価値を出す」というお話で、以下のような可能性があると解釈しました。
- オブザーバビリティに強い運用保守を提供する(専門性)
- オブザーバビリティを前提とした高付加価値の構築、運用を提供する(上流工程)
- 収集データを元に課題やインサイトを分析し、システムの改善を提案する(コンサルティング)
これはMSPだけでなく、会社として、SIer業界として取り組んでいくべき大きな流れであると思います。
MSPとしては、オブザーバビリティに強みを持つ次世代のMSPに進化を遂げる必要があると感じました。
4. 興味がある方へ
ここまでMSP見習いがオブザーバビリティについて学んだ話をお伝えしてきました。
最後になりますがアイレットでは一緒に挑戦するメンバーを募集しています。
アイレットMSPでは経験の有無、年齢に関わらず思い切り挑戦できる環境が整っています。
最後まで読んでくださったそこのあなた、一緒に新しい世界に飛び込んでみませんか?