こんにちは、アイレットデザイン事業部Webディレクターの杉原と申します。
デザイン事業部では「inside UI/UX」をテーマに各メンバーの知見や学びを記事にしています。
今回はプロジェクトにHCDを導入した後の「HCDにおけるプロジェクトマネジメント」について解説します。
HCDの導入に関しては、過去の記事にて詳しく解説していますので、そちらをご確認ください。
私の経験上、プロジェクトにHCDを導入しても、スケジュール調整が難しかったり、メンバーにも有用性が説明しきれてなかったりと、いざプロジェクトが始まっても、スムーズに進めることができなかったりして、HCDをうまく活用できないことがあって悔しい思いをしたことがあります。
今思えば色々準備不足なところがあったのではないかと反省することがありました。
私自身HCDスペシャリストの資格を持っていますが、そこから更に上位のHCD専門家を勉強する中で
そのために必要なコンピタンスがある事がわかったので、それらを紹介します。

HCDにおけるプロジェクトマネジメントに関するコンピタンス
HCDにおいてプロジェクトマネジメントに関するコンピタンスは以下の3つになります。
- プロジェクト企画能力
- プロジェクト調整・推進能力
- チーム運営能力
それぞれの内容を細かく解説します。
プロジェクト企画能力
「プロジェクト企画能力」は、単にスケジュールや予算を組むことではなく、ユーザーの真のニーズを出発点として、その解決とビジネス目標の達成を両立させる戦略的な計画能力を指します。
このコンピタンスは、プロジェクトの成否を左右する最も重要な要素の一つです。

ユーザー理解に基づく問題設定能力
顧客の要望ではなく、ユーザーの潜在的な不満や動機を調査し、プロジェクトが「本当に解決すべき課題」を定義します。適切なHCD調査手法(ユーザーインタビューなど)と、プロトタイプと評価の検証サイクルを計画に組み込みます。
ビジネスと技術の統合能力
理想的なユーザー体験を追求しつつも、技術的な制約や予算を正確に把握し、実現可能な計画を立てます。HCDの目標をビジネスのKGI/KPIに接続し、段階的なロードマップ(MVP)を策定します。
ステークホルダーマネジメント能力
開発者、経営層、ユーザーなど、すべての関係者の参加と目標への合意を得るための体制やワークショップを企画します。HCDのプロセス(反復が必要なこと)について、関係者の期待値を適切に調整します。
プロジェクト調整・推進能力
「プロジェクト調整・推進能力」は、単に計画通りに進捗を管理するだけでなく、HCDの反復プロセスを維持しながら、多様な関係者の期待値とアウトプットを戦略的に一致させる能力です。
これは、HCDプロジェクト特有の不確実性(ユーザー調査による計画変更の可能性)に対応し、プロジェクトを成功に導くための実践的な能力です。

コミュニケーションとファシリテーション
調査結果を技術要件に変換し、技術チームと調整します。共感できるストーリーを用いて経営層に報告し、デザインの正当性を説得します。意見対立時にはユーザーデータに基づき中立的な判断軸を提供し、議論を収束させます。
プロセス維持と適応
反復サイクル(プロトタイプと評価)の勢いを維持し、計画遅延を抑えます。ユーザー調査で計画の大幅な見直しが必要になった際も、データを裏付けに迅速かつ戦略的に計画を修正し再スタートさせます。開発フェーズにもユーザビリティテストなどのHCD活動を組み込みます。
成果物の活用とレビュー
ペルソナやジャーニーマップをチームの共通認識として活用します。デザインレビューでは、個人的な好みではなくHCDの原則やデータを判断基準として提供し、デザインの質を維持します。フィードバックを優先度に基づいて構造化し、次の改善サイクルに繋げます。
チーム運営能力
「チーム運営能力」は、単にチームを管理するのではなく、HCDの価値観とプロセスをチームに浸透させ、多様な職能を持つメンバーの能力を最大限に引き出し、ユーザー中心の共同作業を促進する能力です。
これは、HCDがクロスファンクショナル(横断的職能)な連携を必要とする性質上、プロジェクトの成功に不可欠なコンピタンスです。

組織化と文化醸成
チーム内の役割と責任を明確にし、HCDの基本原則と倫理観を共有することで、ユーザー中心の文化を醸成します。失敗を恐れずに意見を言える心理的安全性の確保が重要です。
学習と知識共有
ユーザー調査で得られたインサイトやペルソナを、開発者含むチーム全員が理解できる形で共有する仕組みを構築します。定期的な振り返り(レトロスペクティブ)を実施し、チームの継続的な成長を促します。
コラボレーションの促進
異なる専門性を持つメンバーによる共創ワークショップを企画・実行し、創造的な共同作業を促進します。対立が生じた際には、ユーザーデータやHCD原則に基づいて議論を仲裁し、建設的な意思決定を支援します。
まとめ
HCDをプロジェクトに導入するにはユーザー中心の反復的なプロセスを円滑に進めることに焦点を当てます。「不確実性」を前提とし、ユーザーの声を常に反映しながら進化していく「学習」と「改善」のプロセスを管理することに尽きます。
なので、見積やスケジュールにはこれらの「不確実性」と「学習」と「改善」を含めたバッファを含めることが重要となります。
