はじめに
最近、新卒デザイナーにデザインのアドバイスをする機会がありました。
そこで改めて痛感したのが、「デザインを言葉にして伝えること」の難しさです。
UIデザインであればある程度のルールや論理がありますが、Webサイトやバナーのデザインとなると、正解が一つではない分、どう導くべきか本当に頭を悩ませます。
今回は、私なりに試行錯誤している「デザイナーを育てるための工夫」について書いてみようと思います。
1. 「答え」ではなく「考え方」を渡す
上がってきたデザインに対して、「ここをこう変えて」と指示するのは簡単です。
でも、それでは本人の成長には繋がりません。
私自身、新人の頃に先輩から「答え」を教えてもらったことは一度もありませんでした。
よく言われたのは、「今の案は、一番最初に思いつくアイデアに見える。もっと深掘りできるのでは?」という言葉。
その時に教えてもらったのが「マジカルバナナ」形式の発想法です。
一つのキーワードから連想を広げていくことで、最初の直感から一歩踏み込んだ、深みのあるデザインコンセプトに辿り着くことができます。

今の指導でも、修正案を直接提示するのではなく、この「マジカルバナナ」のように思考を広げるプロセスを大切にしています。
2. リモート環境だからこそ、言葉の「温度」に気をつける
今の時代の教育で特に難しいのが、フルリモートである点です。
私自身の新人時代は、すぐ隣に先輩がいて、困ればすぐに聞ける環境でした。
しかしリモートでは相手の表情が見えません。
* 「言い方がきつくなっていないか?」
* 「最初から指摘しすぎて、やる気を削いでいないか?」
こうした不安を解消するために、まずは「良い点」をしっかりと言語化して伝えることから始め、その上で「ここを変えるともっと良くなる」というポジティブな提案に繋げるよう意識しています。
3. 「参考サイト」をどう自分のデザインに落とし込むか
特にLPやバナー制作で必要なのは、応用力と引き出しの多さです。
新卒の子に伝えているのは、「参考サイトをそのまま持ってこない」ということ。
「このサイトは〇〇という意図があるから、このバランスにしている。だから、今回自分が作るサイトのコンセプトなら、こう変換する必要があるよね」といった、私の頭の中の思考プロセスを実況中継するように伝えることに注力しました。

また、参考にするのはWebサイトだけではありません。
バナーやチラシなど、あらゆる媒体からエッセンスを抽出する視点も共有しています。
4. 昔の自分が知りたかった「暗黙のルール」を伝える
指導していて気づいたのは、「どこまで自由にやっていいのか」という境界線が、初心者には見えないということです。
例えば、デザインを整えるための「英字のあしらい」。
指示書には書かれていなくても、雰囲気作りのためにデザイナーの判断で追加することが多いですが、最初は「勝手に足していいの?」と迷うものです。
一方で、ブログの表示件数などはディレクターがクライアントと握っている数値なので、勝手に変えてはいけない部分。

こういった「デザインの遊び」と「守るべきルール」の違い、そして迷った時にディレクターとどう連携すべきかといった実務の立ち回りも、あわせて伝えるようにしています。
結び:初心に帰るということ
自分もかつては「デザイナーの卵」だったはずなのに、当時何に困っていたのか、意外と忘れてしまっているものですね。
今回、新卒の子と向き合うことで、私自身も「なぜ自分はこのデザインを選んだのか」を言語化する良い機会になり、初心に帰ることができました。
彼女が一人前のデザイナーになれるよう、これからも根気強く、伴走していきたいと思います。