はじめに

こんにちは、MSPセクションの毛利です。

2026年4月15日〜16日に開催された「PagerDuty on Tour Tokyo 2026」に参加してきました。日頃から「お客様にMSPとしてどのような新しい価値を提供し続けられるか」を考えており、今回の参加の大きな目的は、そのヒントを得ることでした。

その実現に向けた具体的なテーマとして、まずは「今後の監視設定を自動化・高度化するためのヒントを得る」こと。さらにその先の未来を見据えて「PagerDutyのAI動向、特にSREエージェントがどう進化していくかを探る」こと。この2点を掲げて参加しました。

当日は「写真撮影禁止」や「ブログ・SNS投稿禁止」といったクローズドなセッションが多く、リアルな現場の裏話や濃密な事例をたくさん聞くことができました。会場は多くの運用エンジニアやSRE担当者で熱気にあふれており、各セッションも満席に近い盛況ぶりでした。それだけ「AI時代の新しい運用」に対する関心が高いのだと肌で感じました。

今回は特定のセッションの詳細な解説ではなく、イベント全体を通して私自身が得た「気づき」と、それを踏まえてKDDIアイレットのMSPセクションとして今後どう取り組んでいくのかというレポートをお届けします。

イベントを通して見えた、システム運用の「現在地」

基調講演をはじめ様々なセッションを聞いていて、業界のトップを走る各社が共通して抱えている課題感や、その解決へのアプローチが見えてきました。

1. 「人の頑張りに依存した運用」からの脱却

多くの企業が口を揃えて語っていたのが、「属人化した運用には持続性がない」ということです。

これまでのシステム運用は、どうしても個人のスキルや「気合いと根性」による火消し作業に依存する部分が多くありました。しかし、システムがどんどん高度化・複雑化していく中で、これまでのやり方ではどうしても限界が来てしまいます。

「人がシステムを管理する」状態から、「システムがシステムを管理し、本当に必要な時だけ人が介入する」状態へ。 この「仕組み化」へのシフトこそが、これからの運用における大前提なんだと改めて実感しました。

2. インシデント対応の「自動化」と「例外処理」の切り分け

あるセッションでは、「例外運用」が当たり前になってしまうのを防ぐために、8割の定型作業は自動化し、残りの2割の例外処理に人を割り当てるという考え方が紹介されていました。

IaC(Infrastructure as Code)やPagerDutyのRBA(Runbook Automation)を駆使して、OSの再起動やログ取得といったリカバリ作業をシステムに任せる。そうすることで、私たち人間は単なる「対応作業」から解放され、より市場価値の高い「設計や改善」に時間を使えるようになるというわけです。

3. AIは「魔法の杖」ではなく「増幅器」

AIやSREエージェントについては、導入すればすべてを自動で解決してくれるような「魔法の杖」ではない、というメッセージが印象的でした。

AIはあくまで、ベテラン個人の感覚に依存しない組織づくりや、運用判断をサポートしてくれるツールであり、エンジニアの能力を引き上げる「増幅器(Amplifier)」です。その力を最大限に引き出すためには、まずは組織としてのルールを整え、システムの状況を正しく把握できる基盤(オブザーバビリティ)を作ることが欠かせません。

KDDIアイレットのMSPセクションとしてのこれからの挑戦

今回、ユーザー企業の皆様がSREへの変革や自動オンコールの導入など、一歩進んだ取り組みをされているのを目の当たりにしました。例えば、単にツールを入れるだけでなく「このレベルのエンジニアになるなら、このスキルセットを身につける」といったガイドラインを整備し、組織全体で「学習する文化」を作っている事例などは非常に参考になりました。

ユーザー企業の皆様が素晴らしい取り組みを進めている中で、私たちMSPも歩みをさらに加速させていく必要があると、良い意味での刺激を受けました。

現在のKDDIアイレットのMSPセクションでも、お客様のシステム運用において「人の頑張り」やベテランのノウハウに支えられている側面がまだまだあります。ですが同時に、私たちがMSPセクションとして進めようとしている「属人化の解消」や「システムが支える運用への改善」といったアプローチの重要性を、改めて確認することができました。

私たちは今、次世代の運用に向けた段階的なロードマップを描いています。

まずは泥臭い部分の改善として、ツールを活用し「システムが支える」運用への移行を進めること。そしてその強固な基盤の上で「AIやSREエージェント」を本格的に活用していくこと。最終的にはAIやエージェントを活用し、自動復旧からレポート報告までを自律的に行える世界を目指しています。自動化・高度化によって生み出されたリソースを使って、お客様にMSPとしての新しい価値を提供していく。これが私たちの目指すゴールです。

今回の気づきを踏まえ、KDDIアイレットのMSPセクションでは今後、以下の取り組みをさらに推進していく考えです。

🛠️ 自動化プラットフォームの積極的な活用(システムが支える土台作り)

PagerDutyを単なる「アラートの通知ツール」として終わらせず、インシデント管理の基盤として使い倒します。UIを統一して情報を集約し、トリアージの仕組み化や、ルールに基づいた初動対応の自動化を進めることで、まずはしっかりと「仕組みが支える運用」を作っていきます。

📊 AI・エージェントを活用した自律的な運用の追求(その先の未来へ)

単なるコスト削減に目を向けるのではなく、「運用の質そのものの向上」をお客様に届けるため、SREエージェント等のAI動向を継続的にキャッチアップし、現場への実装を進めます。AIの力で自動復旧や報告を自律的に行える体制を整え、私たちがお客様のビジネスにどれだけ貢献できているかをしっかり測れるような状態を目指します。

🚀 オペレーターから「新しい価値を創出するエンジニア」への転換

運用フェーズは、お客様のシステムが収益を生み出す大切な根源です。ただアラートに反応するのではなく、システム化やAI活用によって生まれたリソースを使い、エンジニアリングの力でシステムの信頼性を自ら設計・改善していく。そして、お客様のビジネス成長に直結するMSPとしての新しい価値を提供できる組織へ、メンバーの意識とスキルをアップデートしていきたいと考えています。

おわりに

「学習する組織。学習に終わりはない」

あるセッションで語られていたこの言葉が、非常に印象に残っています。現状に満足することなく、新しい技術を自分たちの生産性向上、そして何より「お客様への新しい価値の提供と、システムの安定稼働」のために活用していくことが求められています。

「PagerDuty on Tour Tokyo 2026」で得た知見や刺激を糧に、KDDIアイレットのMSPセクションはこれからも一丸となって、システム運用の高度化とお客様のビジネスへの貢献に向けて前進してまいります。