AIDD営業推進室の中山です。
Google Cloud Next 2026のラスベガスからの速報です。
BigQueryの新機能の紹介がありましたので共有します。以下がサマリーとなります。
サマリー
以下時間のない人向けのサマリーとなります。
データプラットフォームは「Action System」へ
エージェントが真に自律的に動くためにはデータ基盤にグラウンディングされている必要がある。
BigQuery は「オープン、コンテキスチュアル、AI ネイティブ、エージェンティック」という 4 つの柱で分析基盤からビジネスの「行動のシステム」へ進化する。
BigQuery AI が “SQL だけ” で完結する時代へ
AI.CLASSIFY, AI.AGG, AI.IF などのマネージドAI 関数、TimesFMによる時系列予測、ObjectRefによる構造化/非構造化の統合テーブルまで、モデルの知識がなくても SQL だけで高度な AI 処理が書ける世界が GA レベルで揃ってきた
会話型アナリティクスが BigQuery で GA
Graph × Measure × TimesFM × マルチモーダルを組み合わせることで、ビジネスユーザーが自然言語で聞けるエージェントを作れるようになった。Gemini Enterprise への公開もワンクリック
個人的には、BigQueryが単なるデータウェアハウスではなく「エージェントの行動を支える基盤」として位置付けられたことが印象的でした。また特定のデータエンジニアしか扱えなかったBigQueryがSQLだけの完結や会話型アナリティクス(Conversational Analytics)により、より広いユーザーの利用も意識していると感じました。
そもそも「Agentic なデータプラットフォーム」とは何か?
セッション冒頭、Niraja 氏はこう切り出しました。
エージェントが真に自律的であるためには、ワールドクラスのデータ基盤にグラウンディングされている必要がある。そうでなければハルシネーションを起こす。
そして、データプラットフォームが満たすべき 4 つの柱が示されました。
- Open:構造化/非構造化、クラウド横断のすべてのデータに対応
- Contextual:データからビジネスコンテキストを常時キュレーションし、リアルタイムに更新
- AI Native:高度な推論を可能にする
- Agentic:洗練されたエージェントを駆動する
プラットフォーム自体がエージェントとのやり取りをチェックしリアルタイムの評価データとしてループバックする。つまり「データ基盤がそのままエージェントの継続改善エンジンになる」という考え方です。この点は個人的にかなり新しい視点だと感じました。
ここからは新機能を領域別に紹介していきます。
BigQuery の進化①:パフォーマンスとコスト
1. 1 年で性能 35% 向上、コスト 40% 削減
次世代のベクトル化クエリ実行、小規模クエリ最適化、履歴ベース最適化などにより、業界標準ベンチマーク全体でクエリ性能 35% 向上、クエリコスト 40% 削減が実現されたとのこと。特に低レイテンシ・高並行のダッシュボード用途が効いている様子でした。
2. Fluid Scaling(新)
データチームが常に抱える「SLA のためにオーバープロビジョニングするかコストのために性能を妥協するか」のトレードオフを解消する新機能です。ミリ秒単位で伸縮し、秒単位で課金。お客様環境の検証では平均 34% 以上のコスト削減とのこと。
お客様提案の観点で言うと、これは「まずコスト下がります」と言えるので刺さるポイントだと思いました。
3. AI 駆動の観測性
自然言語で BigQuery のジョブ、プロジェクト単位のコストを特定し管理できるようになりました。「なぜこのクエリ高いのか」をそのまま聞けるようです。
BigQuery の進化②:AI ネイティブ機能
1. TimesFM(Google Sheets × BigQuery)
Google Research が1 億件以上の実データで訓練した予測モデルが、Google Sheets 内の BigQuery からシンプルな SQL で呼べるようになりました。予測も異常検知もできます。ビジネスユーザーがSheetsのまま扱える点がメリットです。
2. Tabular Foundation Model(新)
構造化データの分類・回帰向けの Transformer ベース基盤モデル。インコンテキスト学習で、SQL 文だけで利用可能。社内ベンチマークではカスタム訓練した XGBoost を上回る精度が出ているとのこと。
3. ObjectRef型が一般公開(GA)
構造化データと非構造化データを同じテーブル内に別列として表現できる新データ型。これで「PDF のメタデータとテーブルを別パイプラインで管理」という手間から解放されます。
4. マネージド AI 関数(新)
AI.CLASSIFY(分類)、AI.AGG(意味的集約)、AI.IF(条件論理)の 3 本柱。LLM の推論力を SQL に直接差し込めるというコンセプトで、ユーザーはモデルの中身を知らなくて OK です。
5. Optimized Mode for AI Functions(新・ブレイクスルー)
AI 関数を大規模データに投げるとトークンコストが爆発する問題を、クエリごとに動的に蒸留した小モデルで解決。AI.CLASSIFY の社内ベンチマークでトークン数を最大 230 倍削減したとのこと。 お客様からよく聞かれる「全量に AI 処理かけたら月額いくらになるのか問題」に効果があると感じました。
6. ベクトル検索・ドキュメント処理
- エンベディング自動生成:データ取り込み時に自動生成、GA
AI.PARSE_DOCUMENT:PDF を Gemini のレイアウトパーサーで構造化抽出。実在の図表・2 段組にも対応- Hybrid Search:ベクトル検索+全文検索+再ランキングを単一関数で
7. BigQuery Graph
ETL なしで BigQuery上にナレッジグラフを構築できる機能。メジャーをグラフ内にネイティブ定義できるようになり、エージェントに「売上低下の原因は?」「サポート引当はいくら?」といった曖昧な問いを任せる際の精度が大きく上がります。 お客様のビジネスロジックはデータプラットフォーム層に置くことがポイントです。
BigQuery の進化③:すべてのデータへ(Lake House)
1. Apache Iceberg がネイティブに
BigQuery 内での Iceberg 対応を大幅強化。
- Multi-Statement Transactions(GA):複雑な ETL・多段処理を完全な ACID 一貫性で
- 高スループット CDC(GA):別のマージパイプライン不要で Iceberg に直接ストリーミング
- 完全な読み書き相互運用:Spark/Flink など他エンジンと同じデータを共有
2. Cross-Cloud Lake House(新)
Iceberg + REST カタログフェデレーション+クロスクラウド相互接続+透過キャッシュの組み合わせで、AWS 上のデータに対してもネイティブ BigQuery 並みの性能と TCOを出すとのこと。 ここはまさに日本のお客様でも「データは AWS 側に残したまま Google Cloud で分析したい」というケースが増えているので重要だと感じました。
3. SAP、Salesforce にゼロコピー
ETL なしで SAP、SalesforceのデータをBigQuery から直接クエリ可能に。基幹系データを動かさずAIに渡すことができるようになりました。
顧客事例:MercadoLibre
e コマース、フィンテック企業、MercadoLibreの事例も学びが多かったので要点だけ整理しました。
- RAW で 354PB、毎秒 1,000 クエリ以上という圧倒的規模
- 6 年で従業員数が 11 倍(1 万 → 12.5 万人)に拡大する中、BigQuery に投資を倍増
- 鍵となった 3 つの意思決定:独自データプラットフォーム、データメッシュ、Gen AI エコシステムの内製
- 社内会話型アナリティクスは Looker により精度 90% を達成
そして、Fernando 氏が共有してくれた4 つの教訓も勉強になりました。
- プラットフォームは賢く選ぶ(スケーラビリティと実行能力)
- ビジネスロジックとナレッジをドキュメント化せよ
- セマンティックレイヤー選定は軽視しない
- クエリを最適化してコストを常時監視
この Gen AI 時代に最も難しい部分は AI そのものではなく、キュレーションされた単一のデータプラットフォームを持つことだ(Fernando 氏)
BigQuery の進化④:エージェント関連
1. Conversational Analytics in BigQuery が 一般公開(GA)
ビジネスユーザー向け自然言語エージェントを、テーブルやグラフ指定だけで構築可能に。BigQuery Graphでグラウンディング、TimesFMで時系列予測、ObjectRefでマルチモーダル対応と、前半で発表された機能がここに結集している印象でした。 Data Studio への公開はもちろんGemini Enterprise にも配布可能です。
2. Google Cloud Data Agent Kit(新)
エージェントをオープンソースのスキルとして一般公開するもの。
- Gemini CLI、Claude、OpenAI 製品での互換性テスト済み
- VS Code, Cursor, Windsurf 向けの IDE 拡張も同梱
- 意図を伝えるだけでパイプライン構築やデータサイエンスを代行
3. BigQuery Remote MCP Server
フルマネージドのMCP サーバー。プロジェクト単位で MCP ツール呼び出しを制御できるエンタープライズセキュリティ前提の作りになっています。
4. BigQuery Agent Observability(新)
ADK, LangChain, Agent Engine からのエージェントテレメトリを BigQuery に取り込み、Conversational AnalyticsやBI ツールでエージェントのパフォーマンスを分析できる機能。オンにするだけで使えます。 エージェントを作る側としては運用フェーズの可視化がここまで標準で揃ってきたのは嬉しいですね。
デモ:冷凍ヨーグルト機のリコール
セッション終盤には「冷凍ヨーグルトマシンのメーカーでリコールに直面した」という架空シナリオのデモが披露されました。
- PDF の素材仕様書を
ObjectRefで取り込み、Gemini でエンティティ/関係抽出 - BigQuery Graph にノード(顧客, 製品, パーツ, 素材)とエッジ(購買, 構成)として投入
- Conversational Analytics エージェントに自然言語で 3 問
- このファイバーグラスのリコールで影響を受ける顧客を教えて
- それぞれの顧客にいくらのサポート引当が必要?
- リコールがなかった場合の売上予測は?
3 問とも破綻なく回答し、展開すれば生成された GQL, SQL まで確認できるという流れで、「Graph × Measure × 基盤モデル」の組み合わせが、ここまで実用レベルに来ているんだと率直に感動しました。
まとめ
改めてまとめますと、
- データプラットフォームは「Action System」へ
- 4 つの柱(Open, Contextual, AI Native, Agentic)で、BigQuery はデータウェアハウスからエージェント基盤へ進化
- BigQuery AI は “SQL だけ” で完結
- AI 関数、Optimized Mode、ObjectRef、TimesFM、Hybrid Searchによりモデル知識なしで大規模 AI 処理
- Conversational Analyticsが一般公開
- Graph × Measure × 基盤モデル × マルチモーダルを組み合わせてビジネスユーザーが本質的な問いを自然言語で投げられる時代に
データ基盤=エージェントの行動基盤という一貫した物語が Google 側から明確に打ち出されたのは、提案ストーリーとしても非常に組み立てやすいと感じました。特に Fluid ScalingとOptimized Mode はコスト懸念を持つお客様への回答として使えそうだと感じました。
ご覧いただきありがとうございました。