みなさんこんにちは。

DX開発事業部 の石川です。

Google Cloud Next 2026 のセッションレポートを現地ラスベガスよりお届けいたします。

事業部でも愛好家が多いADKのセッションを聞いてまいりました。

Explore Google’s Agent Development Kit capabilities and roadmap」のセッションをご紹介します。

なぜ今、AI Agentなのか

Google Cloud Next 2019年から参加し続けているというプロダクトマネージャーは、過去7年間でイベントの中心テーマが「コアプロダクトインフラ」から「AIとagent」へと劇的にシフトしたことを強調しました。

「Agentic AIの台頭は、単なるテクノロジーのシフトではない。私たちの毎日の仕事のあり方を変えつつある」

Googleは自社ハードウェアとFoundation ModelであるGeminiの組み合わせにより、コストとパフォーマンスを両立できる唯一のハイパースケーラーであると主張し、Gemini Enterprise Agent Platformという包括的なend-to-endのツールチェーンを提供していることを紹介しました。

 

ADKとは何か

ADK(Agent Development Kit)は、AI agent開発を従来のソフトウェア開発に近い感覚で行えるよう設計された、オープンソースのcode-firstツールキット。

主な特徴:

  • 推論・構造化ワークフロー・カスタムロジックのベースprimitivesを提供
  • ModelおよびDeployment環境に依存しない設計
  • Google Cloudエコシステムとシームレスに統合
  • Python・Java・Go・TypeScriptの4言語をサポートする唯一のフレームワーク

セッション時点でGoogle Cloudの顧客の約3分の1がADKを採用しており、Google Colab上のデータサイエンスagentなど、数百万人のユーザーが日常的にADKベースのagentを(意識することなく)利用しているとのこと。

ADK 2.0の3つの柱

 

ADK 2.0はベータ版として公開されています!

 

1. Graph-basedのワークフロー

最も多くの顧客からリクエストされていた機能です。agentの動作をどこまで決定論的にするかを調整できる仕組みで、Node(作業の単位)とEdge(ワークフローのトラバース方法を定義する接続)によって構成されます。

これにより以下が実現されます:

  • ノード間のイベント処理が容易になる
  • Human-in-the-loopワークフローが実現できる(人間の承認を経て処理を再開)
  • 複雑なグラフをシンプルに表現できる
  • クラシックなLLMベースのagentとグラフベースのワークフローをシームレスに切り替え可能

2. Ambient Agents

チャットメッセージを待つのではなく、特定のイベントによってトリガーされるagentです。

  • BigQueryに新しいデータが到着したとき
  • Cloud Storageのバケットにファイルが追加されたとき
  • Pub/Subに新しいメッセージが届いたとき

これらのイベントをトリガーに自律的に動作するagentを、GCPの既存プラットフォームとnativeに統合できます。

 

3. Collaboration Modes(マルチエージェント協調モード)

2026年は「マルチエージェントシステムを構築する年」という位置づけのもと、複雑なmulti-agent構成を整理するための協調モードが導入されました。これまで「agent」「ツールとしてのagent」「sub-agent」の違いが分かりにくかった問題に対処するもので、以下のような構造を選択できます。

  • Chatbotとして動作
  • 自律的にタスクを解決
  • 特定のsignalに基づいてagentを制御

Agent CLI:アイデアからProductionまで一直線

新たに発表されたAgent CLIは、agentを使ってagentを構築するという、Agentic AIを活用した開発体験を提供します。

インストール1回・インターフェース1つ・スタック全体をカバー

Agent CLIが実現するライフサイクル:

フェーズ 内容
Scaffold 雛形生成
Build 構築
Eval 評価
Deploy デプロイ
Observe 観測
Optimize 最適化
Register Gemini Enterpriseアプリへの登録

 

Agent CLIはGoogle Cloud Agent PlatformへのProgrammatic interfaceであり、ADKのすべてのコンポーネントをnativeに理解しています。boilerplateコードを書かずに、数秒でagentのscaffoldingから環境設定、production展開の準備まで完了します。また、Gemini CLICloud Codeなどの既存のcoding agentとも連携可能です。

インストールも uvx google-agentcli setup の1行で完了

 

ライブデモ:SRE Triage AgentをAgent CLIで構築する

セッション後半では、実際にAgent CLIを使ってADK agentを作成し、Gemini Enterprise環境に登録するまでの一連のフローがライブデモで紹介されました。

ユースケース: サーバーログを解析し、重大度(severity)でインシデントを分類して、レポートを自動生成するSRE Triage Agent

 

デモの流れ

Step 1: Design Specの生成

Agent CLIはコードをいきなり生成するのではなく、まずdesign_spec.mdを作成します。ログのソース、レポートのフォーマット、通知の粒度、外部インテグレーションの要否などをagentとの対話を通じて整理し、承認(「LGTM」)後にコード生成へ進みます。

Step 2: テスト・評価

Agent CLIの評価用skillを使って自動テストを実施。合成データセットを生成し、3つのシナリオすべてで満点スコアを達成しました。

Step 3: Agent Runtimeへのdeploy

Agent CLI経由でAgent Engine(Agent Runtime)へdeployし、会話のtraceをBigQueryにexportして詳細分析を行うことも可能です。

Step 4: Gemini Enterpriseへの登録

Gemini EnterpriseのApp IDを渡すだけで、deployしたagentが自動的に登録され、Gemini Enterpriseのpreview画面から実際に呼び出せることが確認されました。

 

Ambient Agentのデモ:Expense Approval Agent

ADK 2.0のgraph-based workflowを活用したExpense Approval Agentもデモが行われました。

ワークフロー:

  1. Cloud Pub/Subが経費申請データのtriggerとなる
  2. Agentが申請内容をtriage
  3. $100超の場合:マネージャーへの承認依頼を送信
  4. $100以下の場合:自動承認

デモでは「Lindsay が$115の食事代(高額な水3本含む)を申請した」というメッセージをPub/Subに送信し、agentがポリシー違反として拒否判定を下すまでの流れがリアルタイムで実演されました。

このアーキテクチャはニュースやinventoryの監視、Cloud StorageへのPDFアップロードをtriggerとしたワークフロー、Cloud Schedulerを使った定期実行など、常時監視・自動処理シナリオに幅広く適用できます。

Skill Editorスニークプレビュー

研究チームと共同開発中のプレビュー機能としてSkill Editorも紹介されました。

  • Agentの動作をbuild時に修正できる組み込みskill
  • ユーザーがskillに対してフィードバックを与えられる
  • 関連skillを見つけ、更新を提案し、以降のすべての呼び出しに反映

デモでは、毎朝の「Daily Digest」agentに対して「今取り組んでいるGemini Enterprise Agent Platformに関する情報をもっと詳しく表示してほしい」と要望を伝えると、skillが更新されてglobalに反映されるという流れが示されました。

企業事例 1:UKG — フロントライン体験の刷新

UKGについて

UKGは、6,500万人以上の従業員データを管理し、300億件以上のトランザクションを処理するHCM(Human Capital Management)企業。バリスタ・チェックインスタッフ・製造現場作業員といったフロントラインワーカーの体験向上を特に重視。

課題と導入背景

フロントラインの従業員1人が日常業務で使うサブシステムは80〜85にも及ぶことがあり、業務の断片化が大きな課題。

UKGは2023年からAI agent開発の取り組みを開始しており、当初はLangChain/LangGraphを活用。

しかしエコシステムの複雑化に伴い限界が生じ、ADKへ移行。

ADK移行による改善

  • Sub-agent機能による複雑なワークフロー対応
  • MCP(Model Context Protocol)サポートによる他agentとの連携
  • 統一frontendからUKGエコシステム全体へのアクセス

成果として、以前に別のフレームワークで構築した機能のほぼすべてを約6週間で再実装することに成功。

 

新アーキテクチャの核心

UKGの新しいarchitectureは以下の要素で構成:

  • Supervising agent: 適切なroutingと、必要なskill・toolの動的な読み込みを担当。タスクに応じた最適なagentへroutingします
  • Navigation guard: 数千にも及ぶアプリケーションのリンクを整理し、ユーザーを適切なページへ誘導

また、マルチモーダル対応として、従業員がマネージャーとのチャットのスクリーンショットを添付するとagentがその内容を読み取り、シフトのスケジュール確認などのアクションを自動的に行う機能も実装。

 

企業事例 2:Rubrik — エンタープライズセキュリティへのADK活用

Rubrikとは

Rubrikはクラウドおよびオンプレミスのデータをランサムウェア攻撃などのデータ損失から保護するセキュリティ企業です。6,000社以上の顧客が本番環境で利用。

なぜADKを選んだか

2025年4月〜5月頃、Rubrikは「Agentic Ruby」という構想のもと、約12種類のagentフレームワークを評価。

12フレームワーク × 12評価軸の詳細な比較検討の結果、ADKが採用。

ADKが選ばれた主な理由:

  • クリーンなprimitives: multi-agentシステムの構築・改善に適したシンプルな設計
  • ADK Web: 開発時間の約80%をこのツールで費やすほど優秀なdebug・trace環境。Agentの動作path、判断過程、コストの可視化が可能
  • V1からproduction ready: 通常V1リリースは品質面での課題が多いにもかかわらず、ADKは初版からproduction品質を実現
  • 迅速なreleaseサイクル: バグ修正や要望への対応がstartupのような速さ
  • 豊富な機能: YAML形式でのagent定義、human-in-the-loop、callbacks、plugins、evals、cachingなど

デモの内容

本番環境での実例として以下が公開されました:

ストレージ容量の予測: 「追加のストレージを購入すべきか」という質問に対し、agentが現在の容量詳細を取得し、コスト試算を行って回答を提示

セキュリティ監査: 過去24時間で最も多くの操作を実行したユーザーを特定し、適切なAPIを自動選択・実行して管理者向けレポートを生成

 

まとめ

 

DK 2.0の「Graph-based」「Ambient Agents」「Collaboration Modes」という3つの柱、そしてAgent CLIによる一貫した開発体験の革新は、2026年のAIエージェント開発における新しいスタンダードを提示していました。
私たちDX開発事業部でもさっそく検証を行い、実際のシステムに組み込んでいきたいと思います!

 

お知らせ

KDDIアイレットでは、今回ご紹介したADKを活用した「AIエージェント導入支援サービス」を提供しております。最先端のAI技術を用いた業務効率化やシステム構築にご興味がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

https://cloudpack.jp/service/gcp/gen-ai/ai-agent.html