AIDD営業推進室の中山です。
Google Cloud Next 2026のラスベガスからの速報です。
Google WorkspaceのRajさんとKärcherのMarinaさんによる、Workspace Studioの一般提供開始と周辺エコシステムのセッションがありましたので共有します。以下がサマリーとなります。
サマリー
以下時間のない人向けのサマリーとなります。
Workspace Studioが一般提供開始。承認キャンバスでエージェントが日常業務に
1月のローンチから月間アクティブユーザー350万人、直近1カ月で1億7,000万タスクが実行され、3カ月で700%の成長。一般提供開始に合わせて、承認キャンバス、エージェント管理ダッシュボード、アトリビューション、ランタイムDLPなどエンタープライズで本番運用するための統制レイヤーが一気に整いました。
Skillsで会社のやり方をGeminiに教える時代へ
Google Docs上で「この過去資料を参考に完璧なピッチSkillを作って」と頼めば、Geminiが自社のやり方を学習し、Workspace StudioにSkillとして組み込まれます。会社の暗黙知が蓄積されてチームの誰でもワンクリックで呼び出せる世界です。
MCP、CLI、Apps Script × Geminiでデベロッパー側の基盤も整う
公式Google Workspace MCP Server、Google Cloud各プロダクトのMCPサーバー、Google Workspace CLI、Apps ScriptへのGemini組み込みが発表されました。Apps Scriptは今年後半にWorkspaceのコア・サービスへ昇格します。
個人的には、Workspace Studioが単なる「自動化ツール」ではなく「エージェントの実行ハブ」として位置付け直されたことが印象的でした。特に承認キャンバスと管理ダッシュボードが、営業現場で繰り返し聞かれる「エージェントに任せて大丈夫か」というお悩みへの直接的な回答になっていると感じました。
そもそもWorkspace Studioとは何か?
セッション冒頭、Raj氏はこう切り出しました。
毎朝起きると、受信トレイを延々と整理し、ミーティングの準備も十分にできないまま1日が始まる。自動化の約束はこれまで何度も語られたが、現実は極めてテクニカルで、1箇所変えるとすぐ壊れるものだった。本質的に欠けていたのは「コンテキスト」だ。
Workspace Studioは、この「コンテキスト × Gemini3の推論」を組み合わせて、すべての人からトイルを取り除くことをねらったプロダクトです。アーキテクチャは3層で構成されています。
- ゼロトラストのセキュア基盤レイヤー:すべてのエージェントとデータの土台
- 構築レイヤー:Apps Script、アクセスAPI、そして新カテゴリの「エージェント ツール」
- エンドユーザー:ケイパビリティ層Workspace Studioとヒューマン イン ザ ループ
単体の自動化ツールではなく、「基盤、構築、利用」を垂直に貫く企業AIプラットフォームとして再定義されているのがポイントだと感じました。
ここからは新機能を領域別に紹介していきます。
Workspace Studioの進化①: エンタープライズ ガバナンス
1. 一般提供開始
1月の発表から月間アクティブ ユーザーが350万人に到達し直近1カ月で1億7,000万タスクが実行されました。3カ月で700%の成長という数字は、社内ツールとしてはかなりの速度です。
2. 承認キャンバス ヒューマン イン ザ ループが標準装備
エージェントが作成したメール送信、社外チャット、共有ファイル変更などのアクションを送信前に承認キャンバスへ吸い込んで人間がレビュー、編集、承認できるようになりました。API経由でWorkspace外のアクションもキャンバスに流し込めます。
お客様提案の観点で言うと、「AIが勝手にメールを送るのは怖い」というご懸念にダイレクトに効く機能だと感じました。
3. エージェント管理ダッシュボード
管理コンソール内に一元的なダッシュボードが追加され、社内で稼働するエージェントの挙動を管理者が把握できます。さらにエージェントごとにスコープを設定可能で、例えば「ミーティングまとめエージェントにはカレンダーの読み取りだけを許可」といったポリシーが書けます。
4. エージェント アトリビューション
自動応答や社内ボットが相手に返したとき、本人ではなくエージェントによる応答であることを明示する仕組みです。Googleの全アプリケーションに対応し、管理者が企業単位で制御できます。「相手がエージェントと知らずにやり取りしていた」という問題に対して効果的だと感じました。
5. ランタイムDLPと不正利用防止
Workspace StudioにはランタイムDLP、不正利用防止、Geminiによるデータの機密性判定などがデフォルトで組み込まれています。機密データを誤って学習や送信に使わない制御が標準で効きます。
Workspace Studioの進化②: エージェントとの統合
1. NotebookLMがStudioのステップに
Workspace StudioのフローからNotebookLMを直接呼び出せるようになりました。自社の商品カタログ、PDF、対応パーツを取り込んだノートブックに対して、メール本文をコンテキストとして渡し、該当商品を抽出するといった使い方が可能です。
2. Gemini EnterpriseエージェントがStudioのステップに
ERPや基幹システムを参照するGemini Enterpriseエージェントを、Studioのフロー内で直接呼び出せます。NotebookLMと組み合わせて在庫確認や返信文の生成までを1フローで完結できる例が示されました。
3. チーム モード
セキュリティ統制を前提に、チャット スペース送信、他者へのDM、外部メール送信、コメント返信などのアクションをデフォルトで実行できるようになりました。基盤のガバナンスが整ったからこそ安全に広げられる機能です。
4. Webhookとサード パーティ ツール 新機能
WebhookによりStudioを任意の外部システムに繋げられ、Googleが用意するサードパーティーツールも組み込みで利用可能になります。さらにApps Scriptでカスタム ステップを作ってStudioに直接接続する道も用意されています。
Workspace Studioの進化③: Skills会社の暗黙知をGeminiに渡す
1. Skillsとは
Skillsは、自社独自の仕事のやり方をGeminiに教え、Workspace Studioで再利用可能な部品として蓄える仕組みです。Google Docs上で「この過去のピッチ資料群を参考に、完璧なピッチSkillを作って」と頼むだけで、Docsが関連コンテキストを取り込み、Geminiのアクション用インストラクションまで自動生成してくれます。
2. 共同編集からワンクリック公開まで
Docsなので、完成前にチームで共同編集して磨き込めます。仕上がったらSkillに変換し、Workspace Studio上で検証、ワンクリックで全社有効化できます。社内の「ピッチ担当」がやってきた属人的ノウハウを、企業の資産として残せる設計です。
3. 呼び出しはGeminiのある場所どこでも
作ったSkillはGeminiのサイドパネル、Workspace Studio、Google ChatなどGeminiがいる場所ならどこでも呼び出せます。「請求書レビューSkill」を実行してメール添付の不整合を発見し、続けて「返信Skill」で会社のブランド、言語、カラー ガイドラインに沿った返信を生成する、という流れが示されました。
お客様のお悩みで多い「会社独自のルールにAIが合わせてくれない」という問いに、ダイレクトに応える機能だと感じました。提案書やレポートの「社内お作法」をそのままSkill化するユースケースが思いつきました。
Workspace Studioの進化④: Docs、Slides、Deep Researchを内包
Google DocsとSlidesは既にエージェンティックアプリに進化しており、プロンプトからドラフトを生成できます。今回、このDocs、Slides、Deep ResearchがWorkspace Studioのステップとして組み込まれました。
例として示されたのは、「顧客メールを受けてDeep Researchで顧客を深掘りし、作成ステップでDocs、Slidesエージェントに引き渡して、ブランド ガイドライン準拠のピッチ資料が1フローで仕上がる」というシナリオです。Skillsをこの流れにそのまま差し込めるので、「会社のやり方でリサーチし、会社のやり方で資料化する」までが一気通貫になります。
顧客事例: Kärcher
清掃および自動車関連技術のグローバル リーダー、KärcherのMarina氏から、約17,000人のグローバル従業員にWorkspace Studioを展開している事例が共有されました。
- 約400名の早期導入プログラムで効果測定
- 営業関連の繰り返し業務で最大70%を自動化できたユーザーがいる
- 週あたり42時間の削減効果が見込まれる
- 機能要望プロセスでは手作業で数時間かかっていた工程を2分弱に短縮、約90%の時間削減
特に勉強になったのは、導入を阻む2つの壁についてです。
- ロジックギャップ:使いやすいがゆえに自分の業務を論理的に分解し自動化に向く作業を見極める「発想の筋肉」がいる
- 過剰な野心:いきなり複雑なフローを組もうとして失敗し目の前の現実的なメリットを見失う
そしてこれを踏まえた2フェーズのロールアウトも実践的でした。
- 全員に1回の紹介セッションと小さなワークショップ
- 早期導入者やAIイネーブルメントがホストするテーマ別の深掘りセッション
Workspace Studioは時間を大きく削減してくれるがヒューマン インタラクション、ヒューマン インプット、レビュー、ヒューマン オーバーサイトを強く前提にした設計でもある(Marina氏)
営業現場として私がよく伺う「AIツールを買ったけど結局使われない」というお悩みに対して、「技術導入とイネーブルメントを同じ濃さで設計する」という回答が、定量数値とセットで示されていたのが印象的でした。
デモ: メール1通から承認付き自動返信まで
- GeminiサイドパネルからWorkspace Studioのフローを自動生成
- NotebookLMのインベントリノートブックに該当商品を問い合わせ
- Gemini EnterpriseエージェントでERPの在庫を確認
- Workspace Studioが返信メールを生成
- 承認キャンバスに送信内容が吸い込まれ人間が確認してから送信
数分の操作で「メール到着 → 社内システム照会 → 返信生成 → 承認 → 送信」までが1つのフローに繋がり、しかも最後に人間の承認が必要、という構造が出来上がっていました。「AIが自律で動く」と「最後は人が決める」を両立させるには、承認の機能がプラットフォーム側に存在することが重要なんだと率直に感じました。
エージェント ツールという新カテゴリ
エンドユーザー向け機能だけでなく開発者とエージェントのための新カテゴリも大きく前進しました。
1. 公式Google Workspace MCP Server
Gmail、Drive、カレンダーに対応した公式MCPサーバーです。既存の非公式MCPサーバーが抱えていた「GmailやDriveを丸ごとダウンロードしてコンテキストを圧迫する」という課題をコーパス ベースのインテリジェンスで解消しました。OpenAI、Atlassian、Salesforceなど主要パートナーが既に採用しており、エンタープライズ向けMCPサーバーのブループリントとして使われています。
2. Google Cloud各プロダクトのMCPサーバー
Compute Engine、Vertex AI、Cloud Runをはじめ、Google Cloudの各プロダクトがMCPサーバーを備え、WorkspaceとStudioから利用できるようになります。フル マネージドで自己ホスト不要、データ セキュリティ プロトコルと「どのアプリがどう使われたかのフルスケール可視化」まで標準装備です。
3. リモートMCPでサード パーティと接続
従来はGoogleがコネクタを自前で用意していましたが、これからはパートナーやベンダーの専用MCPサーバーを、Studioやアプリケーションから直接接続できます。ISVと企業が自社ドメインに特化したMCPサーバーを出してくる流れが一気に加速しそうです。
4. Google Workspace CLI
CLIの公式提供も発表されました。自動化スクリプトやCIパイプラインからのWorkspace操作が、標準的なコマンド インターフェースで扱えるようになります。
5. Google Chatのエージェント対応強化
Google ChatはMCPサーバー経由でのグループチャット作成、イベント検索、メッセージ検索、多言語対応まで拡張されます。カードのUIも刷新され、ダイナミック ドロップダウン、コード ブロック、可観測性、ワークフロー可視化まで対応します。
Apps ScriptへのGemini組み込み
1. Geminiがコード生成、改善、デバッグを代行
Apps ScriptにGeminiが組み込まれます。関数の生成、既存スクリプトの改善提案、エラー発生時のデバッグから適用まで、Geminiがカバーします。改善提案は勝手に上書きせず、必ず確認を取ってから反映される挙動がポイントです。
2. Apps ScriptがWorkspaceのコア サービスへ
Apps Scriptは今年後半にGoogle Workspaceのコアサービスとなります。エンタープライズグレードの信頼性、監査機能、モバイル対応まで揃い、企業本番で使える基盤に格上げされます。これまで「使いたいけど正式サポートが弱い」と感じていたお客様への回答として効くと感じました。
まとめ
改めてまとめますと、
Workspace Studioが一般提供開始。企業エージェントの実行ハブに
承認キャンバス、管理ダッシュボード、スコープ、アトリビューション、DLPという一連の統制レイヤーが揃い、エージェントを本番運用するための受け皿が整いました。
Skillsで「会社のやり方」をGeminiに渡せる
Google DocsからSkillを作ってWorkspace Studioに組み込み、Geminiのある場所すべてで呼び出せる。企業の暗黙知が再利用可能な資産として蓄積できる設計です。
MCP、CLI、Apps Script × Geminiでデベロッパー側の基盤も揃った
公式Workspace MCP Server、Google Cloud各プロダクトのMCP、Workspace CLI、そしてApps ScriptへのGemini組み込みとコア サービス化が進みました。
Workspaceが「生産性スイート」から「企業エージェントの実行基盤」へ再定義されたことを、統制、Skills、デベロッパー体験の3軸で明確に打ち出したセッションだと感じました。特に承認キャンバスとSkillsは、日本のお客様に多い「AIを使いたいが、誰が、どの範囲で、どのお作法で使うのかを決められない」というお悩みに、かなり実運用寄りの回答を提示していると感じました。
ご覧いただきありがとうございました。