はじめに

  • こんにちは。新川です。Oracle AI World 2026 に参加するため、ラスベガスに来ています。
  • 今回は、Product Spotlight のセッション「Powering the Next Era of Enterprise AI [SPT2723]」の内容をまとめます。登壇者は、OCI 担当プレジデントの Mahesh Thiagarajan 氏です。OCI の新サービスの発表に加えて、Snowflake、OpenAI、NVIDIA、Google、Quantinuum、Meta の 6 社のリーダーがゲストとして登壇しました。
  • 詳しくは、オラクルの発表や各サービスの資料をご確認ください。本記事では、セッションで聞いた内容のサマリを記載します。なお、記載内容はセッションの発表とスライドをもとにしており、提供時期は変更される可能性があります。

用語をおさらい

  • RDMA:CPU を介さずにサーバー間でメモリを直接読み書きする、高速なネットワーク通信方式
  • NVL72:NVIDIA の GPU を 72 基、1 つのラックにまとめた構成
  • TPU:Google が設計した AI 向けの専用プロセッサ
  • egress:クラウドの外へ出ていくデータ通信。通常は転送料金がかかる
  • ファーストパーティサービス:クラウド事業者自身が提供し、請求や運用も一本化されるサービス
  • ONTAP:NetApp のストレージ OS。データ保護や移行などの管理機能を持つ

3 行まとめ

  • OCI は、Dynamic Resource VM や Oracle Acceleron など、AI 時代のコストと性能に向けた新サービスを発表した
  • Snowflake、OpenAI、NVIDIA、Google、Quantinuum、Meta の 6 社のリーダーが登壇し、ストレージでは NetApp との提携も紹介された
  • データ保護の考え方として、Oracle AI Database の Deep Trust AI Architecture が紹介された

AI の普及と、企業が抱える課題

課題はコスト

  • セッションでは、AI の普及が進んでいる一方で、企業での本格導入には課題があることが語られました。講演では、AI の利用者は世界で 20 億人を超え、9 割の組織が価値を実感し、8 割が生産性の向上を感じている、と紹介されました。
  • その一方で、スライドには「タスクあたりのトークン数が 5〜30 倍」「メモリ使用量が 480%」「インフラコストが 30% 増」といった数値が示されていました。Mahesh 氏の解説によると、課題は次の 3 点です。
    • トークン消費の急増と浪費:AI が扱うコンテキストの長さや、タスクの複雑さが増えるにつれて、消費するトークン数が急増しています。コンテキストの設定ミスや不正確なプロンプトで、トークンが無駄に使われることもコストを押し上げます。
    • モデルの大型化によるメモリ不足:モデルのサイズが大きくなるにつれてメモリの需要が急増し、業界全体でメモリ不足が生じています。その結果、総保有コスト(TCO)が増えています。
    • セキュリティとデータアクセス:講演では、過去 1 年でセキュリティブリーチが 56% 増えたと紹介されました。AI が既存の脆弱性を素早く見つけてしまうことが理由で、AI エージェントがデータに過剰にアクセスしてしまう点も課題として挙げられました。
  • ※スライドの数値(5〜30 倍、480%、30% 増)の比較対象や定義は、口頭では詳しく説明されていなかったため、参考値として記載しています。20 億人、9 割、8 割、56% は講演での発言で、公式資料では確認できていません。

インフラの新サービス

Dynamic Resource VM

  • Dynamic Resource VM は、設定した OCPU とメモリの範囲の中で、OCI が裏側の物理 CPU とメモリを動的に管理する仮想マシンです。
    • Standard E6 Flex の同じ構成と比べて、OCPU とメモリの料金が 10% 低くなる(ストレージ、ネットワーク、ライセンスは同じ)
    • 負荷が一定で高いワークロードには向かない
    • ※10% は、同じ構成の通常のモード(固定割り当て)との比較です。対象リージョンは限られます。

Oracle Acceleron

  • Oracle Acceleron は、OCI のネットワークとストレージを高速化する仕組みです。
    • フロントエンドの RDMA ネットワークを、学習だけでなく推論、ストレージ、HPC にも拡張
    • NVMe ブロックストレージの性能が最大 3 倍(スライドの表記は「Storage IOPS」)
    • OCCL(Oracle Cloud Infrastructure Collective Communications Library)は、NCCL / RCCL と互換性があり、混雑を避けた経路選択や、障害時の自動切り替えに対応

ストレージの強化

  • セッションでは、ブロック、オブジェクト、ファイルの各ストレージの強化が紹介されました。
    • ブロック:負荷に応じて性能の階層を自動で切り替える Autonomous Flexible Storage
    • オブジェクト:Global Endpoints、Multi-Region Buckets、Object Lock などの追加
    • ファイル:ペタバイト規模の AI 学習向けの Lustre
    • NetApp の ONTAP を OCI 上のマネージドサービスとして使えるようになる。既存の NetApp ユーザーは、使い慣れたツールや連携環境を維持して OCI で利用でき、OCI コンソール、SDK、ONTAP の API から管理できる。

Global CDN Connect

  • Global CDN Connect は、OCI Object Storage と CDN 事業者のネットワーク(Cloudflare、Fastly、Netskrt、Mainstreaming)を直接接続する仕組みです。
    • 対象となるキャッシュ取得では、OCI の egress(データ転送料金)がゼロ(スライドの表記は「Direct Links, Zero Egress Fees」)
    • スライドの提供時期は「SUMMER 2027」

データセンターと電力

  • セッションでは、AI データセンターの建設と電力の確保にも触れられました。電力については、Bloom Energy の燃料電池や、現地でのガス発電といった取り組みが、公開情報にも見られます。

各社との提携(登壇順)

  • ゲストは、Snowflake、OpenAI と NVIDIA(同時に登壇)、Google、Quantinuum、Meta の順に登壇しました。

Snowflake

  • 最初に Snowflake のリーダーが登壇しました。発表された内容は、Snowflake AI Data Cloud が OCI のファーストパーティサービスとして提供される、というものです(スライドの表記は「SnOCI」)。
    • Oracle を通じて購入、請求でき、Oracle Universal Credits が使える
    • Fusion、NetSuite、Autonomous AI Database、MySQL HeatWave、NoSQL Database との連携を想定している
    • クラウド間のデータ移動を減らすことが狙い
  • ※提供時期はセッションでは明示されていません。

OpenAI

  • 次に OpenAI と NVIDIA が一緒に登壇しました。オラクルの発表では、OpenAI のモデル GPT-6 Astra が、OCI 上のSuperCluster で学習、提供されたとされています(テキサス州アビリーン)。
  • また、OpenAI は NVIDIA の Vera CPU を、エージェントのサンドボックス用途で採用する予定とのことです。

NVIDIA

  • NVIDIA は、OCI に NVIDIA Vera Rubin NVL72 を導入する、という発表でした。
    • 構成:Rubin GPU 72 基、Vera CPU 36 基
    • スライドの提供時期は「SPRING 2027」

Google

  • 続いて Google です。OCI は、Google の TPU を提供する、Google 以外では初のハイパースケーラーになります(公開セッションで「初」と説明され、オラクルのプレスリリースにも同じ記載があります)。
    • 第 8 世代の TPU(学習向けの TPU 8t、推論向けの TPU 8i)
    • 2027 年から、段階的に提供を拡大する予定
    • TPU 8t のスーパーポッドは、最大 9,600 チップ、約 2 PB の HBM、FP4 で約 121 EFLOPS(Google が公開している TPU 8t の仕様)

Quantinuum

  • その後、量子コンピュータ企業 Quantinuum のリーダーが登壇しました。同社の量子コンピュータ Helios を、OCI の AI データセンターに導入する取り組みが紹介されました。
    • 2026 年 8 月に提携を発表済み
    • OCI の量子サービスは、今後数か月でプレビュー提供を予定

Meta

  • 最後に Meta が登壇しました。講演では、Meta の最新モデル Muse Wonder と、コーディング向けの Muse Code が、OCI で使えるようになることが紹介されました。
    • Muse Wonder は、長時間動き続けるエージェント向けのモデル
    • Active Memory:長期のコンテキスト(プロジェクトのルールなど)を保持する
    • Active Focus:複雑なタスクで失敗しても、途中で諦めずに完遂しようとする
    • Oracle Marketplace から、OCI のクレジットで利用できる
      ※Muse Code は、2026 年 9 月 24 日に Oracle Marketplace へ追加されたと Oracle が発表しています(従量課金、Oracle 経由の請求)。Muse Wonder の提供は、セッションで説明された内容です。

データとセキュリティ

  • Oracle AI Database の Deep Trust AI Architecture が紹介されました。AI がデータを扱う際に、アクセスを制御するための 4 つの層(App Dev、Data Access、Data、Software Platform)で構成されています。
    • Deep Trust Data APIs:業務オブジェクト単位でアクセスを制御し、任意の SQL は許可しない
    • Deep Data Security:アクセス規則をデータベースの内側に持つ

まとめ

  • OCI は、コストの課題に対して、Dynamic Resource VM や Acceleron などの新サービスを示した
  • 提携は、登壇順に Snowflake、OpenAI、NVIDIA、Google、Quantinuum、Meta と、データ、モデル、計算資源、量子の各領域に広がり、ストレージでも NetApp との連携が加わった
  • AI にデータを渡すための仕組みとして、Deep Trust AI Architecture が紹介された

おわりに

  • インフラエンジニアとして、大変熱くなるセッションでした。最近のテクノロジーの話題はアプリケーションやデータベースが中心ですが、このセッションでは、オラクルのリーダーが各社との新しい提携や新サービスを発表し、データセンターの建設とそのテクノロジーについて語りました。目に見える形で想像が膨らみ、うれしく感じました。