はじめに
先週末に開催された JAWS PANKRATION 2024、皆様、試聴いただきましたでしょうか?
JAWS PANKRATION とは、JAWS-UG(Japan AWS User Group)主催の、地球規模の AWS 社員およびユーザーによる 24 時間ぶっ続けのオンライン勉強会です。
2021 年からの 3 年ぶりの開催になります。
地球規模のイベントに参加できる絶好の機会のため、私の周りでも多くの方が CfP(登壇内容の事前プレゼンのようなもの)を書いて、応募していました。
我々アイレットからも複数名が、登壇者および運営として携わらせていただきました。
ありがたいことに、私の CfP も選んでいただき、その一員に加わることができました。
2021 年の時も国際色豊かでしたが、今年度はさらに国外の登壇者のかたが増えているように見受けられます。
日本の面積的に埋もれちゃってますが、私のアイコンもこの中に埋もれています。
ここから確認も可能です。
準備にあたって
私のコンテンツは、Is Serverless safe? ~ Hacking AWS Lambda ~ というタイトルでお話しさせていただきました。
コンテンツの内容自体は、去年あたりに別のセキュリティイベントで話させていただいたものの焼き直しになります。
システムによる通訳が入るため、喋る言語は自由ですが、資料は世界標準語の英語で作る必要があります。
いまや生成 AI を活用することで、この辺の苦労はほとんどありません。
とはいえ、せっかく数ある CfP から選んでいただいたものなので、レイアウト崩れや、齟齬を与えにくい単語への置き換えなど、ほぼ手作業で行いました。
チューニングしたとはいえ、過去の焼き直しなのもあり、セルフリハは一旦はスムーズに終わりました。
ただ、ふと気になったのが、通訳のところでした。
これだけの数や内容の登壇を、ヒトの通訳を割り当てるのは無理だろうなぁと思って確認したところ、システムによる機械翻訳とのこと。
通訳の方の力をお借りしての英語圏の方との会話はまぁまぁありますが、機械翻訳で登壇をしたことがなかったので、数ページ喋る内容を手持ちの翻訳にかけてみました。
その結果、音声認識と翻訳をかけることで、分かり易い単語と、長すぎない文、適度な間が必要と分かりました。
ただし、あまりここを意識し過ぎると、今度は日本語で聞いていただく方には、不自然で逆に伝わりにくくなるものになるところが出てきました。
そこで、英語のスクリプトも用意し、英語から日本語に変換することでどうなるんだろうという実験も行いました。
数ページ行ってみた結果、むしろこちらの方が、翻訳結果の日本語も自然で分かり易いものとなりました。
ただ、ネックは自分の英会話能力の低さ…
ここ数年は年に1、2度は海外出張の機会がありますが、そこまで現地で英会話することはなく、たまに話しても聞き直されることもままある感じです。
そんな不安もあるものの、英語→日本語の方が英語圏の方にも日本語圏の方にも分かり易いコンテンツになりそうなこと、15 分未満という比較的短めのセッションであること、パネルディスカッションのようなフレキシブルなものでなく予め準備できること、そしてまたとない絶好の機会であることから、英語でのスピーチに心が傾いてきました。
当日利用する翻訳機能の検証環境が提供された本番5日前、ある程度、目処が立ったので運営の方にお願いして、英語スピーチに差し替えさせていただきました。
こうなっては後に引けません!
普段、自分は登壇の際には、運営・スポンサーの方や聴衆に敬意を払うため、なるべく話す内容を事前にスクリプトに落とすなど準備に時間をかけますが、スクリプトは敢えて箇条書き程度に抑えることが多いです。
一語一句、セリフに落とし込んでしまうと、丸読みのようになってしまうことと、当日の聴衆などの反応や同イベントのネタの差し込みなど、アドリブが利きにくいためです。
(私自身の能力不足でもありますが)
しかし、英語においては自分の英会話能力では無謀です。一語一句、スクリプトに落とし込み、時間が許す限り声に出して、手元の音声認識サービスで正しく聞き取ってくれるかを試し続けました。
上手く発音できないところは、単語を変えたり(「steal」->「take」)、語順を入れ替えたりしました(「Code Scan」->「Scan Code」)。
また、誤翻訳されにくいような単語の入れ替え(「tmp」 -> 「temporary」)や、ちょっとした間を入れる(「R/DS」、「Shift / Left」)などをしていきました。
朝晩やちょっとした隙間時間、ひたすら音読を繰り返し、意図した翻訳になるように練習を繰り返しました。
日本語と喉の使い方が違うためか、しゃがれ気味になってきたので、前日はちょっと抑えて挑むことにしました。
当日
朝の 8:20 からの登壇、寝坊や接続で手間取って遅れないように 6時には起きて、さらにネット環境の安定しているオフィスに向かいました。
一応、PC は2台体制にし、万が一の故障にも備えて準備万端。
早くスタンばっていたつもりなものの、あっという間に自分の時間。
想定よりも 30 秒ほど早く終わってしまいましたが、なんとかやり切りました。
登壇中はゆとりがなく、自分の発音が正しく翻訳されているかは確認できなかったですが、登壇直後に自身のタイムテーブルに挿入された「セッションサマリ(by Amazon Bedrock)」には、本題部分に関しては言いたかったことが概ね誤変換なく入っていたので一安心。自己紹介や会社紹介は、個別用語満載なのでやむを得ない。
これは、Bedrock と、チューニングいただいた方の賜物であることに、実は気づいてはいますが。
自分自身も、今回はとくに準備に気合と時間を注ぎましたが、実際に登壇者として近くで見て、運営の皆様の大変さを痛感できました。
観ていた限り、若干登壇者の通信状況によって開始が遅れるコンテンツがあったりと、小さなトラブルはありましたが、視聴者視点では問題を感じさせないようなすごい運営だったと思います。
振り返りとまとめ
得られたものとして、まずは、「地球規模の視聴者に向けた英語での登壇の実績」になります。これは、本当になかなか得られない経験だったと思うので、ただただ感謝です。
国外で実施するには、質疑応答をこなせる自信がないですし、そもそも調整の段階で頓挫しそうな気がしています。
ぜひ、多くの方に経験して欲しいところです。
失ったもの、それは「下手くそな英語を話すことが恥ずかしい」という見栄・羞恥心です。
これまでも、礼儀として自己紹介や、ちょっとした挨拶などは、なるべく英語でするように意識をしてきましたが、どうも小っ恥ずかしさもあり、オフィスでも普段のリモート会議はデスクでやるものの、英語の時は一人でも会議室を借りてやることもありました。
今回、限られた時間での準備に向け防音のある会議室を確保できないこともあり、その辺でちょっと練習をしたりを繰り返すうちに、まぁ別にいいかっと思えるようになりました。
最後に、この素晴らしい機会を与えてくださった運営の皆様と、日曜の朝早くに聴いていただいた皆様にお礼を述べさせていただければと思います!
セッションサイトにも追い追いリンクは追加されると思いますが、当日のスライドはコチラ