アイレットが運営する、情報満載のオウンドメディア「iret.media」。
「iret.media」では、最新技術トレンドから実践的なノウハウ、社員インタビューなど、“わくわく”する情報を日々発信しています。

年々投稿数が増加している一方で、iret.media 編集部では記事内容の事実確認などにかかる工数・負担が課題となっていました。

そこで、週刊生成 AI ニュースの発信など日々生成 AI 情報をキャッチアップしている DX開発事業部のエンジニアと共に、生成 AI による自動レビュー機能の開発に挑戦し、記事の品質と運用効率の向上を図ることに。

今回は、この取り組みに携わった DX開発事業部 エンジニアの西田 駿史と前野 佑宜、そして実際に「iret.media」を運営する広報 羽鳥 愛美の3人に話を聞きました。

「生成 AI で記事をレビューできる?」
OSS 活用から始まったプロジェクト

— はじめに、今回のプロジェクトの全体像を教えてください。


業務改善活動の一環として、アイレットのオウンドメディア「iret.media」にて投稿された記事を生成 AI を用いてレビューし、結果を Slack に出力する自動化フローを構築しました。


— プロジェクトの開始にあたり、当初の課題はどのようなものがあったのでしょうか?


「iret.media」では、アイレットのエンジニアによる技術解説やイベントレポートや広報・人事による社員インタビューなど、年間で1,000本以上もの記事を公開しています。

「iret.media」を運営する編集部では、記事のファクトチェックや機密情報の記載がないかを確認していますが、人力で確認するには工数がかかり、さらに2021年から記事公開数が大幅に伸び始めたため負担も大きく、課題となっていました。


— どのような経緯でプロジェクトがスタートしたのでしょうか?


AWS が提供する OSS「What’s New Summary Notifier」 を新卒2年目で 2024 Japan AWS Jr. Champions の前野に紹介したことがきっかけでした。「What’s New Summary Notifier」では、AWS の Web サイトで公開されている最新情報を生成 AI により要約し、結果を Slack などのチャットツールに投稿することができます。

【2024 Japan AWS Jr. Champions とは】
3年目までの若手 AWS エンジニアの中で、情報発信などの突出した AWS 活動実績があることを評価された AWS パートナーのエンジニア


この機能では Web サイトの更新情報を RSS で取得する仕組みを利用していたことから、一部仕組みを変更すればレビュー機能として「iret.media」でも活用できると考えました。その頃、自社の業務効率化に向けてこの OSS を応用しているケースは見かけなかったので、先進的な取り組みになったのではないかと思います。


丁度「iret.media」の改善に向けた取り組みを実施している最中だったので、その一つとしてプロジェクトがスタートしました。

AWS + Claude を活用!
記事の品質向上を支える生成 AI の仕組みとは

— 具体的にどのような設計をしたのか教えてください。


まずは Amazon EventBridge と AWS Lambda によって定期的に「iret.media」の RSS を取得し、取得結果を Amazon DynamoDB に登録します。
その登録をトリガーに Lambda 関数が起動し、指定したプロンプトに沿って Amazon Bedrock(Anthropic 社 Claude 3.5 Sonnet モデル)にて記事内容の生成 AI レビューを実施。
そして、レビュー結果を Slack の Webhook を介して、ワークフローにて特定の Slack チャンネルに送信するという構成です。

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— どのようなプロンプトを指示したのでしょうか?


  • 誤字脱字がないか
  • 機密情報(ID やパスワードなど)が含まれていないか
  • サービス名称や製品名が正式名称で記載されているか
  • 文字数や見出し構成のチェック

など、事前に iret テクニカルアンバサダーの皆さんや iret.media 編集部にて策定したガイドラインに従ってもらいました。

【関連ページ】
iret テクニカルアンバサダーについて


また、SEO 対策に向けて『HTML タグ(見出しタグなど)が適切に使用されているか』といったマーケティング観点もプロンプトに組み込み、レビューを実施しています。

プロンプトの一部


— 今回の設計におけるポイントを教えてください。


全体を通して、プロンプトエンジニアリングのベストプラクティスの実現に向けて工夫しました。ベストプラクティス、つまり『どのような文言で指示すると生成 AI がうまく対応してくれるのか』はモデルごとに異なるので、今回は Anthropic 社から公開されている Claude の公式ガイドラインに沿った構成となるように意識しました。
 
また、AWS の「What’s New Summary Notifier」では、テキストを生成 AI に与えた上で記事を要約していましたが、今回のレビュー機能では記事の HTML 全体を生成 AI に渡すことで、HTML タグの用法のチェックができるようにしています。
 
他にも、AWS CDK を使用して複雑な構成を効率的に構築したり、生成 AI レビューの結果がすぐ確認できるように Slack に投稿するまでの時間も短く調整したりしています。


レビュー結果の例

「生成 AI で業務改善」はどこまで実現できるのか?
生成 AI 活用プロジェクトの未来像

— 実際に導入してみて、どんな効果や変化がありましたか?


第一に“安心材料”となっています。
 
事前に記事を確認しても、100%内容に問題がないとは言い切れません。実際、記事の公開後にも念の為チェックしても、思わぬところで第三者から指摘を受けたこともありました。だからこそ、レビューツールを導入する前までは公開後に Slack 通知が来ることが本当に怖かったんですよね…。
 
非エンジニアの視点だと OK でもエンジニアの視点では NG、その逆のパターンもありますし、そこで拾いきれなかったミスを生成 AI がカバーしてくれるのはありがたいです。
 
また、今回のプロジェクトは iret.media 編集部、そしてマーケティンググループとしても 生成 AI を活用し始めるきっかけとなりました。もちろん生成 AI が完璧というわけではないのですが、生成 AI レビューによって、公開後の誤字脱字などの修正漏れがかなり減り、品質向上にもつながっていますね。


— 今後の展望を教えてください。


まずは第一弾として記事公開後のレビュー機能を作りましたが、ゆくゆくは投稿前にも機能を実装できればと思っています。
 
また、現状テキストだけがレビューの対象となっていますが、画像も認識できるようにして、『スクリーンショットにパスワードが写っていないか』なども確認できるようにしたいですね。


新規で記事が投稿された際に生成 AI が感想を生成し、自動で SNS に投稿してもらうなど、『Web サイトの更新をきっかけに生成 AI が〇〇をする』といったバリエーションを増やしていくのも面白そうですね。


また、レビュー結果が特定の Slack チャンネルに投稿されるだけでなく、執筆者本人にピンポイントで届けば、各々の意識向上・記事の品質向上につながっていくはずです。

全社を挙げて「iret.media」を盛り上げよう!という活動がされていますし、執筆者にとっても読者にとっても効果的な取り組みを続けていきたいですね。


今回のプロジェクト以外にも、アイレットでは新卒採用ページへの生成 AI チャットボット導入や、クラウド導入・活用の総合支援サービス「cloudpack」のサポートデスク業務における生成 AI 導入など、業務改善に向けて生成 AI が日々活用されています。

業務改善・効率化にお悩みのお客様、生成 AI の導入や活用に関して課題を抱えているお客様は、ぜひアイレットまでご相談ください!

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