はじめに

2025 年 5 月 28 日(水)に行われた Google Cloud 主催の「Data & AI Summit’25 Spring」に参加してきました!
そのイベント内の「生成 AI が拓くデータ活用の新境地:Google Cloud の「データ エージェント」とは?」のセッションのレポートとなります。

セッション概要

タイトル:生成 AI が拓くデータ活用の新境地:Google Cloud の「データ エージェント」とは?

登壇者:Google Cloud 山田 雄 氏

公式より

2025 年 4 月に開催された Google Cloud Next ’25 Las Vegas で、大きな注目を集めた新発表「データ エージェント」。このデータ エージェントは、生成 AI を活用することで、専門家でなくてもデータと自然言語で対話し、必要なインサイトやビジネス価値を引き出すことを可能にし、データワーカーの業務を変革します。本セッションでは、「データ エージェントとは何か?」そのコンセプト、技術的な特徴について最新動向をお伝えします。

 

セッション内容

データ活用の「今」と「未来」

データから価値を生み出すプロセスは、どんなに便利なツールが登場しても変わることのない普遍的なテーマですが、いくつかの大きな壁があります。

  • 手作業では時間がかかる
  • イノベーションが起きづらい
  • サイロとマルチモーダル

専門家でないとデータの価値を引き出しにくく、データの民主化が進まないという課題があります。

こうした課題に対して、Google Cloud は「自律的な data-toAI platform.」を掲げています。

自律的とは2つの側面があります。

  1. 人が自律的にデータを活用できる: 専門家でなくても、AIエージェントのサポートによって誰もが自らデータを分析し、インサイトを得られる状態。
  2. プラットフォーム自体の自律性: プラットフォーム自身が、メタデータを自動で収集・整理したり、エラーを検知したりと、自律的に動作することで、データ管理の負担を大幅に軽減。

つまり、「データを使う人」と「データを管理する基盤」の両方が自律性を持つことで、データ活用を行う構想になっています。

Google Cloud の「データエージェント」とは?

AIエージェントは、特定の目的を達成するために自律的に行動するシステムであり、「モデル(脳)」「ツール(手)」「オーケストレーション(調整役)」といった要素で構成されています。

Google Cloud は、4つのデータエージェントの提供を予定しています。

Data Engineering Agent

面倒なデータパイプラインの構築を自動化する役割があります。
BigQuery Data Preparation、Gemini in BigQuery 、BigQuery Pipelineが主なサービスになります。

Data Governance Agent

データガバナンスタスクを自動化する役割があります。
Automated metadata curation、自動的データ異常探知が主なサービスになります。

Data Science Agent

データサイエンスタスクを自動化する役割があります。
「このデータを使って、Sparkで売上予測モデルを作って」のように指示するだけで、AIがPythonコードのテンプレートを生成してくれます。
ゼロからコードを書く必要がなくなり、データサイエンティストはモデルの精度向上やチューニングといった、より高度な作業に時間を使えるようになります。

Conversational Analytics Agent

データ分析タスクを自動化する役割があります。
Conversational Analytics API、BigQuery Knowledge Engineが主なサービスになります。

自前のエージェント

社内ツールから独自 Agent を使い MCP を経由し BigQuery のデータ操作も可能です。
Google が提供している Agent Development Kit (ADK) でエージェントを構築し、MCP サーバーとして MCP Toolbox for Databases を活用することで簡単に構築することが可能となります。

「データ エージェント」がもたらすビジネス変革シナリオ

これまでは、営業担当者やマーケターがデータ分析をしたい場合、データエンジニアに依頼し、SQLを書いてもらい、結果を待つというプロセスが一般的でした。
これらのエージェントの登場により、各担当者が自らの言葉で直接エージェントに問いかけ、必要な答えを即座に得られるようになります。
「意思決定の高速化」「生産性の向上」「新たな価値の創出」というデータが価値に変わるまでの時間が短縮され、組織全体のデータリテラシーが向上していくことが期待されます。

データ駆動型組織へ新たな一歩

データエージェントは既存のデータ基盤を置き換えるものではないです。
これまで構築してきたデータ収集・蓄積・活用の仕組みはそのままに、そのプロセス間の「隙間」をエージェントが埋め、全体のスピードを加速させていくイメージです。
Google Cloud は、データエージェントという新しい概念を通じて、専門家の壁を取り払い、あらゆる人が自律的にデータを活用できる世界の実現を推進しています。
このエージェントによる変革はまだ始まったばかりで、データエージェントでビジネス課題を解決し、データ活用の未来を共に創る機会であると言っていました。

感想

エージェントの登場により AI は「ツール」ではなく、自律的に思考し行動する「エージェント」として人間と共に共創してくる存在だと再認識しました。
自然言語で指示をすることで、SQL や Python コードの作成実行し、分析結果も提示してくれて、これまで技術的なスキルによって分断されていた人の間を繋ぐ役割を担ってくれます。
これにより、データ活用の課題を解決してくれる可能性を感じました。
さらに、プラットフォーム自体の自律性によりデータの信頼性が自動的に担保されることで、より分析業務などに集中することは可能になるはずです。
このセッションでデータエージェントの登場により、これからの時代に求められるスキルとして AI との対話を通じて新たな価値を生み出していく能力の重要性を感じました。