はじめに
こんにちは。DX開発事業部の鹿嶋です。ねこ、吸ってますか?
今回は Google Cloud の提供するサービスの一つ、Vertex AI Search for Commerce(※以降 VAIS:C)を利用して、簡単なセマンティック検索を試してみようと思います。
Vertex AI Search for Commerce(VAIS:C)とは?
自社のデジタル プロパティで Google 品質の検索、ブラウジング、レコメンデーション、会話型コマースを提供することで、コンバージョンを増やし、検索の放棄を減らすことができます。
- e コマース向けに最適化された Google 品質の機能を使用してデジタル コマースサイトやアプリケーションを強化
- ユーザーが広範な検索語句を絞り込むようにガイドする双方向の会話
- 高度にパーソナライズされたおすすめ情報を大規模に提供
- 検索により、視覚的およびセマンティックに類似した商品をランク付けしたリストが提示される
- ユーザーに合わせたショッピング体験を提供して、コンバージョンと注文額を改善
※公式ページより
セマンティック検索とは?
従来の検索方法として主流だったのは、入力されたキーワードと文書内の文字列を完全一致、または部分一致で検索する「全文検索」でした。
これは特にキーワードの意図を汲まず、単純に文字が一致している/含まれているという観点で結果を返すという手法で、処理速度が高速で、検索結果が予測しやすいというメリットがあります。
また、実装が比較的簡単でコストも抑えられ、特定の商品名や型番などの正確な情報を探す際には確実に結果を得られます。
一方で「セマンティック検索」は、AIが文章や単語の意味を理解し、文脈や意図に基づいて関連性の高い結果を返す検索手法です。
ユーザーの検索意図を理解できるため、例えば「暖かい服」と検索すれば冬物衣類が表示されるなど、より自然で直感的な検索体験を提供できます。
類義語や関連概念も理解するため、検索の取りこぼしが少なく、ユーザーが適切なキーワードを知らなくても目的の商品にたどり着けるため、結果として顧客満足度とコンバージョン率の向上が期待できます。
現代のEコマースでは、正確性が求められる場面では全文検索を、ユーザビリティを重視する場面ではセマンティック検索を使い分ける、またはハイブリッド型の検索システムが効果的とされているようです。
実際に試してみた
今回はダミーの商品サイトを構築し、そのサイト上で VAIS:C に取り込んだカタログ情報をもとにセマンティック検索を試す、というシナリオで進めます。
以下の準備については割愛させていただきますので、何卒ご了承ください。
- 新規 Google Cloud プロジェクトの作成
- 商品データの作成と Cloud Storage へのアップロード
- ダミーサイトと疎通用の Cloud Functions の作成
1. Vertex AI Search for Commerce に商品データをインポートする
作成したプロジェクトの検索バーから、「Vertex AI Search for Commerce」と入力すると、「商取引向け検索」とレコメンドされるので、そちらに遷移します。
初めて利用する場合、以下のような画面に遷移しますので、APIの有効化や使用条件の同意などを行なって、利用を開始してください。
ダッシュボードから「データ」に遷移し、「カタログ」のインポートを行います。
データのインポートにあたり、今回は以下の設定でインポートを行います。
- インポートタイプ: 商品カタログ
- データのソース: Google Cloud Storage
- インポートブランチ: Branch 0
- データのスキーマ: 小売り商品カタログのスキーマ
必要情報を反映したら、「インポート」をクリックしてデータをインポートします。
インポートが正常に完了すると、以下のようにデータの内容が表示されます。
2. コンソールから検索を試す!
サイドメニューの「評価」を選択し、画面遷移後に「検索」を選択します。
ここで検索クエリを実際に投げて、返される結果を確認することができます。試しにいくつかクエリを投げてみましょう。
まずは「キャットフード」というクエリを投げてみます。
タイトルやカテゴリから「キャットフード」に該当するものを結果として返しています。
ではここから、「キャットフード 機能性」という形でクエリを投げてみます。
きちんと該当の商品だけに絞り込まれることが確認できました。
このように、商品名にとどまらず複数のキーワードを組み合わせることで、より精度の高い検索結果を得ることができます。
例えば「猫のおやつ」よりも「猫 おやつ またたび」と入力することで、ユーザーの「より具体的な要求」を理解し、ユーザーの購買体験の向上にも繋げることができます。
3. ダミーサイトで検索を試す!
さて、せっかくなのでダミーサイトでも同様に検索をして実際にその挙動を確認してみましょう。
今回ダミーサイトは Google Sites で作成し、Cloud Function で VAIS:C との橋渡しを行なっています。
まずは、あえて平仮名で「しゃんぷー」と検索してみましょう。
きちんと「しゃんぷー」と「シャンプー」が同じものと識別して結果を返してくれていますね。
次は「多段式のキャットタワー」を検索するために、「キャットタワー 多段」と検索してみましょう。
こちらもきちんと「多段式」のキャットタワーを結果として返してくれました。
最後に「フードマット」を検索したいのですが、名前を忘れたていで、「食器 マット」と検索してみます。
こちらもきちんとクエリの意味を理解して適切な商品が返ってきていることが確認できました!
おわりに
今回の検証において、実際に手を動かして検索を試してみたことで、VAIS:C が裏側でどんな風に動いているのか少しずつ理解することができました。
単一キーワードのシンプルな検索から、複数のキーワードを組み合わせた絞り込みといった一連のステップを通して、VAIS:C がユーザーの要求をどう読み取って、情報を返してくれるのかを実感できたと思います。
今回はシンプルなデータの登録にフォーカスしましたが、まだまだ触れられていない機能はたくさんありますので、引き続き検証を続けていきたいと思います!