はじめに

こんにちは、DX開発事業部の岩塚です。
この記事は、東京ビッグサイトで開催された Google Cloud Next Tokyo 2025 のセッションレポートです。

セッション情報

スピーカー

Google Cloud

  • デベロッパー アドボケイト マネージャ デイヴ エリオット 様
  • Cloud AI デベロッパー アドボケイト 佐藤 一憲 様

概要

Agent Development Kit (ADK) は Google が開発したオープンソースの AI エージェント開発キットです。マルチエージェント構成の生成 AI アプリケーションを容易に開発可能なほか、リアルタイム音声や動画によるユーザー対話も可能です。このセッションでは、メルカリ様提供の数 100 万件の実データを使い、ADK と Gemini Live API、Vertex AI Vector Search で構築された検索エージェント デモを紹介し、その開発手法を解説します。

セッション前半では、エージェント開発に必要なツールキット、プロトコル、プラットフォームとして以下の4つのGoogleのエージェント開発スタックが紹介されていました。

  1. Agent Development Kit (ADK)
  2. Model Context Protocol (MCP)
  3. Agent Engine
  4. Agent2Agent (A2A)

後半では、典型的な RAG(ベクトル検索) の課題と VertexAI Vector Search を用いた場合の利点についてデモを含めて説明がありました。

本レポートでは、より実践的な内容である後半についてフォーカスして紹介します。

典型的な RAG の課題

典型的なRAG(ベクトル検索)を用いた検索では意味的に近しいものしか検索できないので、以下のような課題がありました。

  1. テキストから画像の検索が困難
  2. 商品ID等の意味を持たない入力による検索ができない
  3. 「空が青い理由は?」等の質問に対して適切な回答ができない

これらの課題に対する解決策としてそれぞれ下記の方法があります。

  1. 画像等を含めてエンベディングを行い、マルチモーダル検索を可能にする
  2. ベクトル検索とキーワード検索を組み合わせたハイブリッド検索にし、ID等の検索も可能にする
  3. 質問と回答のエンベディングが近くなるように、Two-Towerモデルを利用する

 

VertexAI Vector Search を用いたデモ

VertexAI Vector Search では、上記の3つの検索機能を簡単に実現することができます。
セッション内では、メルカリの商品データを用いた検索デモがありました。
下記の検索画面における「Use dense embeddings」にチェックを入れるとセマンティック検索、「Use sparse embeddings」にチェックを入れるとキーワード検索ができます。
そのため、両方にチェックを入れることでハイブリッド検索が可能です。

デモ内では、「cups with dancing people」をハイブリッド検索した結果が紹介されており、見事にテキストから検索ワードに合致した商品を見つけることができていました。

また、「Shopper’s Concierge」というコンシェルジュのようなエージェントの紹介もありました。

こちらのデモでは、自分の子どもへの誕生日プレゼントとして何が良いかについて登壇者がAIに質問し、「子どもはどんなものが好きか」等をAIが登壇者にリアルタイムで質問しながら商品紹介している様子が紹介されていました。

 

最後に

Vertex AI Vector Search を利用することで簡単に検索精度や検索体験の質を向上させられることが分かりました。
また、エージェントと組み合わせることで抽象的な要望からでも具体的な提案をしてもらったり、対話形式でユーザーの好みを深掘りしたりと、ユーザー体験を改善できることが伝わってきました。

検索システムを開発する場合にはぜひ取り入れてみたいですね。