こんにちは、アイレット後藤です。

さて、みなさん。朝、PC を開いて最初にやることって何ですか?

私の場合、これまでは毎朝30分以上かけて、メールチェック、Slack 確認、カレンダー確認、Notion のタスク整理、Backlog の課題確認・・・と、あちこちのツールを行き来していました。

これ、今の自分の役割が広がり複雑化してきているためコントロールしづらく、正直、非常に大変でした。

でも今は違います。「おはよう」の一言で、すべてが3分で完了します。

今回は、Claude Code と MCP サーバーを活用した、新しいタスク管理の仕組みをご紹介します。実際に使ってみて、非常に効果的でしたので共有させていただきます。

なぜ生成 AI によるタスク管理が必要だったのか

情報が散らばりすぎ問題

現代の、特に IT に関わる現場で働く人が抱える大きな課題のひとつは「情報の分散」だと思います。

私の場合はこんな状況です:

  • メール:個人宛と チーム宛(広報、パートナーアライアンス)の複数アカウント
  • Slack:複数チャンネルに散在するメンション、DM、重要メッセージ
  • カレンダー:Google Calendar に散在する会議、締切、リマインダー
  • タスク管理:Notion と Backlog に分かれた個人とチーム、そしてプロジェクトのタスク

これらを毎朝手動で確認して優先度を整理するのは、作業負荷が高すぎます。さらに、人間である以上、見落としや判断ミスも避けられません。

これは自動化するしかないと感じました。

既存ツールじゃダメだった理由

既存のタスク管理ツールやカレンダーアプリも試してみました。Remember the Milk、Wunderlist、Todoist、Trello、Google Tasks など様々なものを使いました。

しかし、どれも「単一のプラットフォーム内での管理」に留まっていて、複数のシステムを横断した統合的な管理はできませんでした。

生成 AI の登場により発想を転換し、AI の「情報統合力」と「優先度判断力」を活用してタスク管理を行うことにしました。

システム全体像:5つの情報源を1つのログに

開発したシステムの全体像は、実はシンプルです:

主要コンポーネント

  1. Claude Code:Anthropic 社の公式 CLI ツール。最新の Claude Opus 4.1 モデルを活用します
  2. MCP サーバー:各種 API と Claude Code を接続するブリッジです
  3. 情報源 API:Gmail、Google Calendar、Notion、Backlog、Slack
  4. Obsidian:最終的なデイリーログの出力先(ローカル環境で完結)

技術的な仕組み:MCP サーバーと CLAUDE.md の魔法

MCP(Model Context Protocol)サーバーってなに?

MCP は Anthropic が開発したプロトコルで、生成 AI と外部サービスを連携させるための標準化された仕組みです。MCP サーバーは、このプロトコルに準拠したサーバープログラムで、Claude Code から各種 API へのアクセスを仲介します。

今回の用途に応じて、以下の MCP サーバーを選定・設定しました:

活用している MCP サーバー

Gmail MCP サーバー
メールの検索、読み取り、送信、ラベル管理など Gmail の主要機能にアクセス。OAuth 認証を利用してセキュアに接続します。

Google Calendar MCP サーバー
カレンダーイベントの取得、作成、更新が可能。複数カレンダーの統合ビューや空き時間検索にも対応しています。

Notion MCP サーバー
Notion データベースやページへの API アクセスを提供。タスク管理やドキュメント作成の自動化に活用できます。

Backlog MCP サーバー
プロジェクト管理ツール Backlog の課題やプルリクエスト、Wiki などにアクセス。日本の開発現場でよく使われるツールとの連携を実現します。

Slack MCP サーバー
チャンネル一覧、メッセージの検索・投稿、スレッド操作など Slack の主要機能を網羅。リアルタイムのコミュニケーション情報を統合できます。

これらのサーバーは ~/.claude.json などに設定を記述することで(または claude mcp add コマンド)、Claude Code から利用可能になります。各サーバーには適切な認証情報(APIキー、OAuthトークンなど)の設定が必要です。

CLAUDE.md によるカスタマイズの効果

MCP サーバーへの接続設定が整ったら、実際に指揮するのがプロジェクトディレクトリに置いた CLAUDE.md です。

ここで「どんな入力を受けたら」「どの情報源から」「どの順番で」データを集めるか、そして最終的なログの構造までを細かく規定して試してみたところ、これが非常に効果的でした。

重要なのは、すべての処理が手元の会社 PC で実行されるため、認証情報や機密データが外部に送信されることなく、セキュアな状態でタスク管理の自動化を実現できる点です。

なお、企業環境内では、Claude Code を直接使用するのではなく、Google Cloud の Vertex AI 経由で Anthropic のモデルを利用する方法もあります。私も同僚が執筆した記事のアプローチを採用し、会社の Google Cloud アカウント環境下で Claude Opus 4.1 モデルを利用しています。これにより、データガバナンスと利用コストの管理を組織レベルでの統制が可能になります。

情報収集のワークフローを設定してみた

  1. 日付確認 – 最初に必ず date コマンドを実行し、正確な年月日を取得
  2. Slackタスク同期:kaz-watching: リアクション付きメッセージを Notion タスクに自動同期(重複チェック付き)
  3. メール調査 – 個人アカウントについては前日分を、PR/パートナー共有アカウントは「2営業日以上返信がないもの」を抽出
  4. Slackメンション監視 – 過去1週間の自分宛メンションを収集し、自分が未返信のものを洗い出す
  5. カレンダー整理 – Google Calendar の当日予定を全件取得し、時系列で並べ替え
  6. Notionタスク集約 – Tasks データベースから期限切れ/本日期限/進行中のタスクを分類
  7. Backlogタスク確認 – 自分の未完了課題とウォッチ中の課題を取得し、ステータス別に整理

優先度付けのアルゴリズムを実装してみました

各タスクの優先度付けも自動化しています。以下のようなロジックで分類してみました:

🔴 午前中の必須対応

  • 期限切れで優先度「高」のタスク
  • 本日午前中に締切のタスク
  • 重要な会議の準備
  • 緊急の返信が必要なメール

🟡 午後の対応事項

  • 本日期限だが午後でも間に合うタスク
  • 返信が必要なメール(緊急度は中程度)
  • 進行中プロジェクトの定常タスク

🟢 時間があれば対応

  • 期限に余裕があるタスク
  • 情報収集や確認系のタスク
  • 将来の準備作業

この分類により、朝一番で「今日は何から手をつけるべきか」が明確になり、迷いなく業務を開始できるようになりました。

実際の使い方:「おはよう」から始まる朝のルーティン

Step 1:コマンド実行

ターミナルを開いて、以下を入力するだけです:

$ claude
> おはよう

Step 2:自動情報収集(約2分)

Claude が自動的に以下を実行してくれます:

🔍 本日の日付を確認中...
👀 Slackタスク同期中...
  - :kaz-watching: 付きメッセージ: 5 件
  - Notionタスクへ同期: 3 件新規、2 件重複
📧 メール確認中...
  - 個人宛メール: 15 件確認
  - PR/パートナー宛: 8 件確認(未返信チェック)
💬 Slackメンション確認中...
  - 過去1週間のメンション: 25 件
  - 未対応メンション: 12 件
📅 カレンダー確認中...
  - 本日の予定: 5 件
✅ Notionタスク確認中...
  - 期限切れ: 3 件
  - 本日期限: 2 件
  - 進行中: 4 件
📋 Backlogタスク確認中...
  - 未対応: 4 件
  - 処理中: 2 件
  - ウォッチ中: 3 件

Step 3:デイリーログ生成(約1分)

収集した情報を基に、以下のような構造化されたログが生成されます:

# 2025年09月22日(月曜日)

## 📅 本日の予定
- **10:00-11:00** 経営会議 📹
  - Zoom URL: https://zoom.us/...
  - 参加者: 役員メンバー
- **14:00-15:30** AWS技術セミナー 📊
  - 場所: 会議室A
  - 資料準備必要

## 📧 重要メール対応
### 🔴 個人宛メール(要返信)
- [ ] [AWS Summit 2025 登壇依頼について](https://mail.google.com/mail/u/0/#inbox/18c123456789) - 山田太郎様
- [ ] [パートナー契約更新の件](https://mail.google.com/mail/u/0/#inbox/18c234567890) - 鈴木花子様

### 🟡 個人宛メール(要確認)
- [ ] [LinkedIn: 新しいコネクション申請](https://mail.google.com/mail/u/0/#inbox/18c345678901) - LinkedIn

### 🔵 PR/パートナー宛(2営業日以上未返信)
- [ ] [イベント協賛のお願い](https://mail.google.com/mail/u/0/#inbox/18c456789012) - イベント主催者 - 9/19受信

## 💬 Slack未対応メンション
### 🔴 要返信(過去1週間)
- [ ] #general | 田中太郎 | 9/20(金) 09:15 | 「プロジェクトの進捗について確認...」 | [リンク](https://workspace.slack.com/archives/CXXXXXXXXX/p1234567890123456)

### 👀 要対応(:kaz-watching:リアクション付き)
- [ ] #strategy | 自分 | 9/19(木) 10:30 | 「来週の戦略会議の資料準備」 | [リンク](https://workspace.slack.com/archives/CYYYYYYYYYY/p2345678901234567)
- [ ] #dev-team | 佐藤次郎 | 9/21(土) 14:00 | 「コードレビューお願いします」 | [リンク](https://workspace.slack.com/archives/CZZZZZZZZZ/p3456789012345678)

## ✅ Notionタスク
### 🔥 期限切れタスク(要対応)
- [ ] [Q4レポート作成](https://notion.so/Q4-123456789) - 優先度: ↑
- [ ] [ブログ記事レビュー](https://notion.so/blog-234567890) - 優先度: →

### 📌 本日期限
- [ ] [セミナー資料完成](https://notion.so/seminar-345678901) - 14:00まで

### 🔄 進行中
- [ ] [パートナー契約書のレビュー](https://notion.so/partner-456789012) - 優先度: ↑
- [ ] [新サービス企画書](https://notion.so/service-567890123) - 優先度: →

## 📋 Backlogタスク(未完了)
### 🟠 未対応
- [ ] [AWS-123] コスト最適化提案書作成 - 優先度: 高
- [ ] [SEC-456] セキュリティ監査対応 - 優先度: 中

### 🔵 処理中
- [ ] [DOC-789] 技術ドキュメント更新 - 優先度: 低

### 👁️ ウォッチ中
- [ ] [PRJ-101] 新規プロジェクトキックオフ - 担当: 加藤三郎
- [ ] [BUG-202] 本番障害対応 - 担当: 高橋四郎

## 💡 本日のアクションアイテム
### 🔴 午前中の必須対応
- [ ] Q4レポートの完成と送付
- [ ] AWS Summit登壇依頼への返信
- [ ] 経営会議の準備

### 🟡 午後の対応事項
- [ ] セミナー資料の最終確認
- [ ] パートナー契約更新の確認メール送信
- [ ] Slack未対応メンションへの返信

### 🟢 時間があれば対応
- [ ] LinkedInコネクション申請の確認
- [ ] ブログ記事のレビュー
- [ ] 技術ドキュメント更新(Backlog)

### 🟠 Backlogタスク対応
- [ ] AWSコスト最適化提案書のドラフト作成
- [ ] セキュリティ監査資料の確認

## 📝 メモ
- 14時のセミナーは録画予定あり
- Q4レポートは明日の役員会で共有予定
- パートナー契約の法務確認は今週中に必要
- 来週の出張準備を忘れずに

Step 4:Obsidian で自動オープン

ログ生成後、自動的に Obsidian が起動し、該当日のノートが開きます。

なぜ Obsidian を選んだのか

数あるノートアプリの中から Obsidian を選んだ理由:

  1. 完全ローカル保存:すべてのデータが手元の PC に保存され、機密情報が外部サーバーに送信されることがない
  2. Markdown 形式:将来的な移行や他ツールとの連携が容易
  3. 強力な検索機能:過去のタスクログを瞬時に検索可能
  4. グラフビュー:タスクやプロジェクトの関連性を視覚的に把握
  5. プラグイン拡張性:必要に応じて機能を追加できる柔軟性

特に、日次のタスクログが蓄積されることで、過去の対応履歴や決定事項を素早く参照できるナレッジベースとしても機能します。これにより、「あの件、いつ対応したっけ?」という場面でも瞬時に情報を引き出せるようになりました。

導入効果:数字で見る改善

時間削減効果

項目 導入前 導入後 削減率
朝のタスク整理 30分 3分 90%

実際に使ってみて、この時間削減効果は期待以上でした。

定性的な効果

  1. 認知負荷の軽減:複数システムを行き来する必要がなくなりました
  2. 意思決定の迅速化:優先度が明確になり、即座に行動に移せます
  3. タスク漏れの防止:2営業日以上未返信のメールが自動で浮上します
  4. 記録の一元化:Obsidian にすべての活動記録が蓄積されます

朝の精神的なストレスが大幅に軽減されたのが特に良かったと感じています。

ツール選択の自由度がない環境での価値

担当範囲が広がり、複数のプロジェクトに関わるようになると、様々なツールを使わざるを得ない状況になります。例えば

  • 顧客指定のプロジェクト管理ツール(Backlog、Jira、Redmine など)
  • 顧客や部門ごとに異なるコミュニケーションツール(Slack、Teams、Discord など)
  • パートナー企業との共有ツール(Box、Dropbox、SharePoint など)
  • 社内の既存システム(勤怠、経費精算、承認ワークフローなど)

これらのツールを統一することは現実的に困難です。しかし、今回のシステムなら「各ツールから必要な情報だけを抽出し、自分用のフォーマットで整理する」ことができます。

つまり、ツールは変えられなくても、情報の受け取り方は変えられるのです。これにより、どんなに複雑な環境でも、自分のペースで効率的にタスクを進められるようになりました。

抜け漏れの不安から解放される価値

タスクやメール、カレンダーの招待など、日々大量の情報が飛び交う中で、「何か見落としていないか」という不安は誰もが抱えています。

この不安が生む悪循環:

  • 朝一番に全ツールを手動でチェック(30分以上)
  • 日中も何度も各ツールを巡回確認
  • 重要なメールやメンションを見逃していないか常に心配
  • 結果として、確認作業に膨大な時間を費やしてしまう

しかし、このシステムを導入してから、「必要な情報は毎朝自動的に集約される」という安心感が生まれました。

  • メール:2営業日以上未返信のものは自動的に浮上
  • Slack:未対応メンションや重要マークは確実にリストアップ
  • カレンダー:今日の予定は時系列で整理済み
  • タスク:期限切れや本日期限のものは赤字で警告

この「情報収集の自動化による心理的安全性」こそが、最大の価値かもしれません。抜け漏れの心配から解放され、本来やるべき仕事に集中できる。これは単なる時間短縮以上の効果をもたらしています。

今後の展開:AI ネイティブな働き方へ

今後試してみたいアイデア

実際に運用してみて、こんなことも面白そうだなと感じています:

  1. 予測的タスク生成:過去のパターンから明日のタスクを予測できたら便利かも
  2. 自動返信ドラフト:重要メールへの返信文案を自動生成してくれたら時短になりそう
  3. 会議メモ統合:会議の音声記録から自動でアクションアイテムを抽出できたら助かる
  4. 週次・月次レポート:デイリーログから自動で上位レポートが作れたら楽になるかな

まずは現在のシステムをしっかり運用して、本当に必要な機能が見えてきたら試してみようと思います。

おわりに

このシステムを使ってみて感じたのは、「AI に任せられることは任せ、人間は判断と創造に集中する」ということの大切さです。

タスク整理という定型業務を AI に委ねることで、私たちはより価値の高い仕事に時間を使えるようになります。朝の30分という貴重な時間を、情報収集ではなく、実際の行動や思考に充てられるようになりました。

生成 AI は、コーディングや文章作成だけのツールではありません。私たちの働き方そのものを変革する可能性を秘めています。

皆さんもぜひお試しください。