はじめに

この記事では生成AIを活用したAWS SDKアップデート影響分析パイプラインをご紹介します。

GitHub ActionsとAmazon Bedrockを組み合わせることで、AWS SDKの仕様変更を自動で検知・分析。
さらに、将来的にはAI開発エージェント「Devin」による自律的なコード修正までを見据えた、次世代の開発スタイルへの第一歩となる取り組みです。

課題

このシステムで解決したかったのはAWS SDKアップデートの追従にまつわる主に4つの課題でした。

  1. 後手になりがちな対応からの脱却: 今まではAWSの仕様変更によるシステムの影響が利用者からの問い合わせで発覚していた。
  2. 影響範囲の特定漏れ防止: 膨大なChangelogの中から、自分たちのコードに影響する「破壊的変更」や「新機能」を人力で見つけ出すには限界があり、見落としのリスクがあった。
  3. 見えない調査コストの削減: 開発者が手作業で変更履歴を追い、コードへの影響を目視確認する時間は無視できないコストになっていた。
  4. 対応の遅れがもたらす機会損失: 影響調査に時間がかかることで他の作業に影響が出てしまう状況を改善したかった。

パイプラインが実現する開発フロー

今回構築したパイプラインは単にレポートを生成するだけではなく「AIがAIに指示を出して、自律的にコードを修正する」という開発フローを目指しています。

このフローは大きく分けて2つのフェーズで構成されます。

  1. 影響分析フェーズ (by Bedrock): まず、今回構築したパイプラインがGitHub Actionsを起点にAWS SDKの変更を検知し、Amazon Bedrock上のLLMを使って影響分析レポートを生成します。
    (※今回の記事では、主にこのフェーズの技術詳細を深掘りします)
  2. 自律修正フェーズ (by Gemini & Devin): 次に、生成されたレポートと影響を受けたソースコードを専用のプロンプト(Gem)と共に別のAI(Gemini)に渡します。GeminiはAI開発エージェント(Devin)が実行可能な具体的な修正計画の指示書を立案します。最終的に、指示書をDevinに渡し「コード修正、Pull Request」の作成までを自律的に行わせます。

パイプラインを支えるアーキテクチャ

ここからは、「影響分析フェーズ」の具体的なアーキテクチャについて解説します。

GitHub Actionsによるオーケストレーション

パイプライン全体の制御塔です。
週次定期実行や手動実行をトリガーに後続の分析処理を呼び出します。

Step 1: LLMのためのインプットデータ準備

正確な分析を行うため、まずは基となるデータを収集します。

  1. 変更情報の抽出: SDKのGitリポジトリから指定バージョン間のChangelogとAPI仕様ファイルの技術的な差分(diff)を抽出します。
  2. 影響範囲の特定: 抽出された変更箇所に基づき、リポジトリ内で影響を受ける可能性のあるソースコードを特定・読み込みます。

Step 2: LLMによる2段階分析プロセス

ノイズを減らし精度を高めるため、分析を2段階に分けています。

  1. 技術的差分の要約:
    • APIの差分データから「実際の変更点」のみをフィルタリングします。
    • そのデータをLLMに渡し、技術的に重要なポイントを要約させます。
  2. 影響分析レポートの作成:
    • Step 2-1で作られた「要約版差分」、Changelog、そして「影響を受ける実装コード」をLLMに入力します。
    • これらを統合し、最終的な「影響分析レポート」を出力させます。

まとめ

今回構築したパイプラインにより、AWS SDKの仕様変更を検知し、詳細な影響分析レポートを作成するところまでを完全自動化しました。

冒頭で触れた「Devinによる自律修正」を実現する上で、最も重要なのがこの「正確な分析レポート」です。
曖昧なタスクではAIエージェントも迷走してしまいますが、Bedrockによって技術的な差分と修正方針が明確化されたことで、Devinは迷うことなくコード修正を実行できるようになりました。

最後に

この記事が皆さんの開発プロセスを自動化・効率化する上での何かのヒントになれば幸いです。

次回は今回生成したレポートを実際にGeminiとAIエージェント「Devin」に渡し、どのようにコード修正を完遂させるのか、その「自律修正フェーズ」を解説する予定です。