はじめに

エンタープライズクラウド事業部の磯部です。
Oracle AI World 2025に現地参加しています。

今回は10/15に行われた「Accelerate Digital Transformation in Financial Services with Oracle AI」セッションについて、ご紹介します。

概要

本セッションでは、AmTrust Financial ServicesのDonald氏、北米の金融業界のデジタルリーダーであるWebster BankのKamal氏、そしてTCSのSidhartha氏が登壇し、AIがどのようにデジタル変革を加速させ、業務を改善しているか、そしてAI導入を成功に導くための戦略について議論されました。

公式サイトから引用

Customers now expect perpetual transformation from partners to harness the AI revolution and unlock new opportunities. Oracle AI Agent Studio in Oracle Fusion Cloud Applications enables automation, innovation, and higher ROI. This panel showcases how TCS helped deploy real-world AI use cases in Oracle Fusion Cloud ERP, driving productivity, efficiency, and user experience.

(DeepL翻訳)

顧客は今や、AI革命を活用し新たな機会を創出するために、パートナーから継続的な変革を期待しています。Oracle Fusion Cloud ApplicationsのOracle AI Agent Studioは、自動化、イノベーション、そして高いROIを実現します。本パネルでは、TCSがOracle Fusion Cloud ERPにおいて実世界のAIユースケースの導入を支援し、生産性、効率性、ユーザーエクスペリエンスを向上させた事例を紹介します。

変革を加速する「埋め込み型AI」戦略

Oracleが推進するのは、AIを既存の製品内にシームレスに統合し、「全く別個のアーキテクチャ」を作成する必要がないアプローチです。

  • シームレスな導入:Webster社は、AIが製品に埋め込まれているため、テクノロジー視点で導入が容易であり、ビジネスチームからユースケースの提案が増えていると述べています。
  • AIファースト:TCS社は、戦略としてAIをあらゆる側面に「埋め込む」ことを掲げ、業務のあらゆる側面でAIをまず考える「AIファーストモデル」を推進しています。

顧客事例に見る具体的成果

AmTrust Financial社の事例(財務業務の効率化)

  •  財務クローズの迅速化アルゴリズムが学習・予測するAIを再分類機能に活用し、共有サービス部門の大幅な時間短縮に貢献しています。
  • 可視性の向上 Redwood(Oracle Cloud Applicationsの新しいユーザーエクスペリエンス)の機能を利用し、未転記の仕訳勘定や元帳を1つの画面で即座に確認できるようになり、月次決算プロセスの煩雑なカスタムレポート実行が不要になりました。
  • 将来の展望複雑な仕訳承認ワークフローにおいて、AIエージェントを活用することで、承認プロセスの迅速化を検討しています。

Webster社の事例(ITサービスと従業員体験の向上)

  • 生産性向上ITサービスプロセス(ServiceNow)においてAIを最大限に活用し、70%の生産性向上を実現しました。これにより、人による介入は実質的にゼロとなっています。
  • 柔軟な承認AIの力を利用し、オフィス内外のどこからでもメールを通じて承認を行うことが可能になりました。

成功の鍵:「人」を中心としたガバナンス

技術的な成功以上に、AIの導入と定着には組織戦略が重要です。

  • 「幸福度」をKPIにWebster社では、KPIを効率性だけでなく同僚の「幸福度」に焦点を当てています。同僚が定型業務に費やす時間を削減することで、「より幸せな同僚は、常に幸せなサービスを提供できる」という考えが根底にあります。
  • 共同ガバナンスCEOを含むビジネスリーダーとテクノロジー部門が統合されたガバナンス構造を持ち、意思決定は技術的・ビジネス的複雑性、そして採用と受容の観点から共同で評価されます。
  • 試行の容易性: AmTrust Financial社のDonald氏は、AI機能は既存のOracle製品に組み込まれているため、概念実証(PoC)の労力は少なく、「試すことを恐れないでほしい」と推奨しています。

まとめ

金融サービスのデジタル変革は、Oracleの「埋め込み型AI」によって、アーキテクチャを複雑化させることなく実現されています。

単なる技術導入ではなく、「人(同僚の幸福度)」を最優先する戦略的アプローチと、強力な共同ガバナンスによって支えられていることが、本セッションの最も重要な箇所だと感じました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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